分かりやすい衆議院・参議院

二〇二四(令和六)年度介護報酬改定のベースアップ目標に関する質問主意書

会派 れいわ新選組
議案提出者 大石あきこ
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

二〇二四(令和六)年度介護報酬改定案では、訪問介護、定期巡回サービス、夜間対応型訪問介護では基本報酬を引き下げるとされている。

介護職員の人手不足が深刻化する中、ヘルパーの求人倍率は十五倍を超え、他のサービスに比して深刻な状況に陥り、人材流出も広がっている。その中でのまさかの基本報酬減に、介護現場から怒りの声が集まっている。

政府は、「訪問介護については、処遇改善加算について、今回の改定で高い加算率としており、賃金体系等の整備、一定の月額賃金配分等により、まずは十四・五%から、経験技能のある職員等の配置による最大二十四・五%まで、取得できるように設定している」とし、さらに、「介護現場で働く方々にとって、令和六年度に二・五%、令和七年度に二・〇%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げを行う。」と説明している(二〇二四年一月二十二日第二百三十九回社会保障審議会介護給付費分科会資料)。

処遇改善加算の改定案は、具体的には、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた四段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化するというものである。加算率はサービスごとの介護職員の常勤換算職員数に基づき設定するとしており、例えば、訪問介護サービスでは現行の三つの加算の最上位の合計「二十二・四%」が、新加算(?)では「二十四・五%」へと二・一%ポイント引き上げられる。

この加算率の引き上げにより、令和六年度に二・五%、令和七年度に二・〇%ものベースアップ(介護労働者の基本賃金の一律引上げ)ができる理由が不明である。

岸田首相は、令和六年一月三十日の施政方針演説で、「医療や福祉分野の幅広い現場で働く方々に対して、物価高に負けない「賃上げ」を確実に実現してまいります」と発言しており、今回の報酬改定で「ベースアップへと確実につながる」という合理的な説明が求められる。

そこで、次のとおり質問する。

質問1

訪問介護の基本報酬は、身体介護中心の所要時間三十分以上一時間未満の場合で現行の三九六単位から三八七単位に引き下げられるなど二・三%程度のマイナス改定となっている。そのため、現行の三つの加算の最上位の合計「二十二・四%」を取得する事業所が、新加算(?)の「二十四・五%」へ二・一%ポイント引き上げられたとしても、改定後の基本報酬に処遇改善加算を加えた全体として、四八五単位から四八二単位に下がり三単位のマイナスになる。

現行  三九六単位+(現行加算二十二・四%:三九六単位×二十二・四%加算=八八・七〇四(四捨五入)=八九単位)=四八五単位

改定後 三八七単位+(改定後加算二十四・五%:三八七単位×二十四・五%加算=九四・八一五(四捨五入)=九五単位)=四八二単位

政府は、訪問介護サービスは今回改定の処遇改善加算でも高い加算率を設定しており、介護報酬全体でみればプラス改定になると説明しているが、「介護報酬全体でみればプラス改定になる」ことの計算根拠を示されたい。

回答(質問1 について)

 御指摘の「政府は、訪問介護サービスは今回改定の処遇改善加算でも高い加算率を設定しており、介護報酬全体でみればプラス改定になると説明」の意味するところが必ずしも明らかではないが、訪問介護の介護報酬については、令和六年二月六日の衆議院予算委員会において、武見厚生労働大臣が「今般の介護報酬改定におきまして、介護現場で働く方々の処遇改善を着実に進める観点から、訪問介護につきまして、基本報酬の見直しを行いつつ、処遇改善加算については、他の介護サービスと比べて高い加算率を設定することとしております。また、特定事業所加算や認知症に関する加算を充実することなどにより、訪問介護は改定全体としてプラス改定としたところ」と述べているとおりである。

質問2

今回改定の加算率引上げにより、「令和六年度に二・五%のベースアップへと確実につながる」と、なぜ言えるのか。

政府は令和六年二月〜五月の賃金引上げ分(介護職員処遇改善支援補助金)について、収入を二%程度(月額平均六千円相当)引上げるための措置と説明してきた。訪問介護では一・二%の交付率で、このうち三分の二以上をベースアップ(「基本給」又は「決まって毎月支払われる手当」)にあてることが要件とされている。

今回改定により、加算率が引上げられることで、収入が令和六年二月〜五月の二%程度の賃金引き上げに加え、さらに上乗せして計二・五%引上げるという意味か。計算根拠を示されたい。

回答(質問2 について)

 御指摘の「さらに上乗せして計二・五%引上げる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、令和六年二月五日の衆議院予算委員会において、武見厚生労働大臣が「令和六年度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービスなど報酬の同時改定に向けまして、これらの分野における賃上げを後押しすべく、賃上げに必要な改定率として、・・・介護ではプラス一・五九パーセント・・・を確保しております。これを踏まえて、・・・介護事業所等におきましては、過去の賃上げ実績をベースとしつつ、今般の報酬改定による加算措置などの活用や賃上げ促進税制を組み合わせることにより、令和六年度にプラス二・五パーセント、令和七年度にプラス二・〇パーセントのベースアップの実現を図っていただきたいと考えております」と述べているとおりである。

質問3

一方、新加算(?)の二分の一(七・二%)以上を月額賃金で配分することが要件とあるが、この「月額賃金」の配分が、「二・五%のベースアップ」になるという意味か。

そうであれば、これまでの介護職員処遇改善加算分の全額を一時金で支払っていた配分方法を月額賃金に変更し、その額が変わらない場合も、その額は「二・五%のベースアップ」に含まれるという認識で相違ないか。その場合、今回の加算率引上げにより「令和六年度に二・五%のベースアップへと確実につながる」とはどうしてなのか。計算根拠を示されたい。

回答(質問3 について)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「この「月額賃金」の配分」のみで「「二・五%のベースアップ」になるという意味」ではなく、令和六年度の介護職員の二・五パーセントのベースアップについては、二についてで述べたとおり、「過去の賃上げ実績をベースとしつつ、今般の報酬改定による加算措置などの活用や賃上げ促進税制を組み合わせることにより」実現を図ってまいりたいと考えている。

質問4

処遇改善加算の加算率は令和六年度に引き上がるものの、令和七年度は令和六年度から変更がないものと理解している。にもかかわらず、令和七年度の「二・〇%のベースアップへと確実につながる」と、どうして言えるのか。計算根拠を示されたい。

回答(質問4 について)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、令和七年度の介護職員の二・〇パーセントのベースアップについては、二についてでお答えしたとおりである。

質問5

総務省の公表した消費者物価指数では、生鮮食品を除く総合指数は前年比は三・一%の上昇(全国 二〇二三年(令和五年)平均(二〇二四年一月十九日公表))とあるが、令和六年度の「二・五%のベースアップ」目標が、物価高に負けない「賃上げ」と言えるのはなぜか。

回答(質問5 について)

 お尋ねについては、政府として、「令和六年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(令和六年一月二十六日閣議決定)において、物価上昇率について、「令和六年度の・・・消費者物価(総合)は二・五パーセント程度の上昇率になると見込まれる」としているところであり、その上で、令和六年二月六日の衆議院予算委員会において、岸田内閣総理大臣が「今般の介護、障害福祉、医療分野の報酬改定では、政府経済見通しで、令和六年度の全産業平均の一人当たりの雇用報酬の伸びが二・五パーセントと物価上昇率と同水準で見込まれる中、こうした見込みと整合的にベースアップを求めているところであります。令和七年度分を前倒しして賃上げいただくことも可能な上、ベースアップ分以外の賃金の伸びもあり得ますが、まずは、物価高に負けない賃上げとして、令和六年度、二・五パーセントのベースアップ、これを実現してまいります」と述べているとおりである。