米軍普天間飛行場の「運用停止」に関する質問主意書
令和五年十二月一日に提出した「米軍普天間飛行場の「運用停止」に関する質問主意書」では、二〇一四年二月に開催された普天間飛行場負担軽減推進会議が起点であることを政府として示していることを踏まえ、この約束が二〇一九年二月の期限から四年以上経過した今なお実現していない状況において、普天間飛行場の「運用停止」の定義を確認する観点から質問を行った。
令和五年十二月十二日に受領した「衆議院議員屋良朝博君提出米軍普天間飛行場の「運用停止」に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質二一二第七八号)(以下「先の答弁書」という。)では、同飛行場の危険性を一刻も早く除去する必要性があるとの認識を示したものの、各事項の具体的な内容については「様々な点を総合的に勘案した結果」などとして丁寧な説明を避けている。これは、岸田内閣総理大臣就任後初の所信表明演説(令和三年十月八日)において、岸田総理自らが述べられた「丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築きながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組」みますとは全く異なる、県民の気持ちを無視したものであると言わざるを得ない。
ついては、先の答弁書を踏まえ、改めて、普天間飛行場の「運用停止」に関し、以下の事項について答えられたい。
質問1
先の答弁書「二の3について」に関し、以下の問いに答えられたい。
1 「沖縄県外を移設先とする様々な案を含め検討」したとあるが、「様々な案」とはどのようなものか。各案について?候補地、?検討時期、?「在沖縄海兵隊を含む在日米軍全体のプレゼンスを低下させる」と判断した根拠・理由、?「司令部、陸上部隊、航空部隊及び後方支援部隊を統合した組織構造を有し、優れた機動性及び即応性を備える米海兵隊の特性及び機能を損なうことができないこと」と判断した根拠・理由をそれぞれ示されたい。また、それぞれの判断の主体を明らかにされたい。
2 「米国本土、ハワイ等と比較して、東アジアの各地域に近い位置にある」という利点については、沖縄だけに限らず、日本全国が当てはまるものと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 「我が国の周辺諸国との間に一定の距離を置いている等の沖縄」の「周辺諸国」とはどの国を指すのか。また、「一定の距離」の具体的な距離を示されたい。
4 「同飛行場の危険性を一刻も早く除去する必要性がある」の「一刻も早く」とは、埋立て・移設が完了するとしている十二年後のことを指しているのか。政府の見解を明らかにされたい。
5 「様々な点を総合的に勘案した結果、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に代替施設を建設する現在の計画が、同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策との結論に至ったものである」とあるが、「現在の計画」が回避できるのは「同飛行場の継続的な使用」であって、普天間飛行場の完全返還に結びつかないことを意味しているのか。政府の見解を示されたい。
6 岸田総理は、第二百十三回国会における施政方針演説(令和六年一月三十日)において「普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます」と表明した。ここでいう「全面返還」とはどのような状態を意味するのか。あわせて辺野古への移設をもって普天間飛行場の完全返還が実現するのか、それぞれ政府の見解を明らかにされたい。
回答(質問1 の1について)
政府部内の検討過程における詳細についてお答えすることは差し控えたい。
回答(質問1 の2について)
普天間飛行場の移設については、御指摘の「利点」だけではなく、我が国の周辺諸国との間に一定の距離を置いている等の沖縄の地理的優位性があること、司令部、陸上部隊、航空部隊及び後方支援部隊を統合した組織構造を有し、優れた機動性及び即応性を備える米海兵隊の特性及び機能を損なうことができないこと、同飛行場の危険性を一刻も早く除去する必要性があること等、様々な点を総合的に勘案した結果、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に代替施設を建設する現在の計画が、同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策との結論に至ったものである。
回答(質問1 の3について)
お尋ねの「周辺諸国」については、我が国の安全保障に対する影響を及ぼし得る紛争の潜在的な発生地域を念頭に置いたものであるが、その具体的な国名及びお尋ねの「具体的な距離」をお答えすることは、無用の誤解を生ずるおそれがあるので、差し控えたい。
回答(質問1 の4について)
お尋ねの趣旨及び「埋立て・移設が完了するとしている十二年後」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、普天間飛行場の一日も早い移設・返還の実現に向け、引き続き、普天間飛行場代替施設建設事業を適切に進めていく考えである。
回答(質問1 の5について)
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に代替施設を建設する現在の計画が、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であると考えており、同飛行場の一日も早い移設・返還の実現に向け、引き続き、普天間飛行場代替施設建設事業を適切に進めていく考えであり、同事業が終了しその後の米海兵隊の移転等が完了した後も同飛行場が返還されないという状況は全く想定していない。
回答(質問1 の6について)
前段のお尋ねについては、普天間飛行場が全部返還されることを意味している。後段のお尋ねについては、一の5についてで述べたとおりである。
質問2
先の答弁書「二の4、6及び7について」に関し、以下の問いに答えられたい。
1 「「(ウ)の機能」を沖縄県外に移設することについては、司令部、陸上部隊、航空部隊及び後方支援部隊を統合した組織構造を有し、優れた機動性及び即応性を備える米海兵隊の特性及び機能を損なうものであり、困難であるものと認識している」とあるが、政府がそのように判断した根拠・理由を示されたい。また、米軍も同様に認識しているのか、政府として把握しているところを明らかにされたい。
2 海兵隊の「統合した組織構造」すなわち司令部、陸上部隊、航空部隊及び後方支援部隊ごと一括で、沖縄県外に移転すると海兵隊の特性及び機能は損なわれるのか、政府の見解を示されたい。また、米軍も同様に認識しているのか、政府として把握しているところを明らかにされたい。
回答(質問2 について)
沖縄は、米国本土、ハワイ等と比較して、東アジアの各地域に近い位置にあると同時に、我が国の周辺諸国との間に一定の距離を置いている等の利点を有している。こうした地理上の利点を有する沖縄に、司令部、陸上部隊、航空部隊及び後方支援部隊を統合した組織構造を有し、優れた機動性及び即応性により、幅広い任務に対応可能な米海兵隊が駐留することにより、種々の事態への迅速な対応が可能となっており、沖縄に駐留する米海兵隊(以下「在沖縄海兵隊」という。)は、抑止力の重要な要素の一つとして機能していると認識している。したがって、例えば、これらの司令部、陸上部隊、航空部隊及び後方支援部隊のうち、航空部隊のみを他の部隊と切り離して移転することは、米海兵隊が有する優れた機動性及び即応性という特性及び機能を損なうこととなると考えている。また、上述の在沖縄海兵隊の意義を踏まえれば、御指摘のように「司令部、陸上部隊、航空部隊及び後方支援部隊ごと一括で、沖縄県外に移転」した場合、抑止力としての在沖縄海兵隊の特性及び機能が損なわれるものと認識している。その上で、「米軍も同様に認識しているのか」とのお尋ねについてお答えすることは、相手国との関係もあり差し控えたいが、政府としては、普天間飛行場の移設については、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に代替施設を建設する現在の計画が、同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であると考えており、この点について、累次にわたり日米間で確認している。