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米軍基地騒音被害に対する損害賠償等についての日米間の費用分担に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 屋良朝博
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

米軍基地に起因する騒音被害への損害賠償や廃棄物処理の費用など、日本政府が本来負担すべき根拠がない費用を日本政府が負担している事例が度々報じられている。このような事例に関し、我が国の納税者に対する説明責任を果たす観点から、以下、質問する。

質問1

米軍基地騒音被害に対する損害賠償

1 嘉手納や普天間、横田、厚木などの米軍飛行場の周辺住民が提起した「爆音訴訟」の結果、国が支払いを命じられた損害賠償(遅延損害金及び訴訟費用を含む)として、日本政府が令和五年度までに負担した金額を訴訟案件ごとに可能な限り示されたい。

2 日米地位協定第十八条5によれば、公務執行中の米軍構成員等による作為、不作為等の結果生じた損害賠償に関しては、米国のみが責任を有する場合には米国政府が七十五パーセントを、日本及び米国が責任を有する場合には日米両政府が均等に分担すべき旨規定されている。

 1の費用に関し、同規定を踏まえた日米の分担の在り方についての日本政府の考え方、また、日本政府が同規定に基づき米国政府に請求した額及び米国政府が負担した額を可能な限り示されたい。

3 「衆議院議員照屋寛徳君提出米軍の航空機騒音に係る訴訟における損害賠償金等に関する質問に対する答弁書」(平成二十一年十二月一日受領答弁第九二号)においては、米軍機による騒音に係る訴訟に関する損害賠償金等の費用分担について、「本件分担の在り方についての我が国政府の立場とアメリカ合衆国政府の立場が異なっていることから、妥結を見ていない」ために、米国政府との費用分担がなされていないことが明らかにされている。

 この「立場が異なっていることから」との当時の答弁について、日米それぞれの立場とは何かを明らかにされたい。

4 3の日米双方の立場に立った当時の日米の主張の内容をそれぞれ示されたい。

5 本件に関するその後の米国政府との交渉の経緯及び現状について明らかにするとともに、我が国が考える「妥結」とはどのようなものか示されたい。

回答(質問1 の1について)

 国を被告として提起され、確定した在日米軍の飛行場における航空機による騒音に係る訴訟について、?御指摘の「訴訟案件」及び?国が支払った損害賠償金(遅延損害金を含む。以下同じ。)の総額を飛行場ごとにお示しすると、次のとおりである。なお、訴訟費用については、統計をとっていないため、お答えすることは困難である。

 (一)嘉手納飛行場

  ?昭和五十七年二月二十六日、昭和五十八年二月二十六日及び昭和六十一年九月三十日に提起された「嘉手納基地騒音差止等請求事件」 ?十五億四千八十五万八千四百五十七円

  ?平成十二年三月二十七日に提起された「嘉手納基地爆音差止等請求事件」 ?七十二億七千六百二十五万六千九百八十九円

  ?平成二十三年四月二十八日に提起された「嘉手納基地爆音差止等請求事件」 ?三百四十二億二千四百十三万九千四百六十六円

  ?平成二十三年八月二十二日に提起された「損害賠償請求事件」 ?十二万九千四百七十二円

 (二)普天間飛行場

  ?平成十四年十月二十九日及び平成十五年四月十四日に提起された「普天間米軍基地爆音差止等請求事件」 ?四億六千五百五十一万四千二百四十一円

  ?平成二十四年三月三十日及び同年十二月十三日に提起された「普天間基地爆音差止等請求事件」 ?二十七億四百三十八万三千八百六十五円

  ?平成二十四年七月三十一日、同年十月一日、平成二十五年三月十八日及び同年十一月二十日に提起された「損害賠償請求事件」 ?十一億七千六百六十六万五千三百六十七円

 (三)横田飛行場

  ?昭和五十一年四月二十八日及び昭和五十二年十一月十七日に提起された「横田基地夜間飛行差止等請求事件」 ?一億六千二百三十万千百九十一円

  ?昭和五十七年七月二十一日に提起された「横田基地夜間飛行差止等請求事件」 ?七億二千四百十二万六千五百十六円

  ?平成六年十二月十二日及び平成十二年八月二十四日に提起された「横田基地夜間飛行差止等請求事件」 ?二億七千六百七十六万四千八十二円

  ?平成八年四月十日、平成九年二月十四日及び平成十年四月二十日に提起された「横田基地夜間飛行差止等請求事件」 ?三十九億八千三百五十九万千七百五十三円

  ?平成二十四年十二月十二日及び平成二十六年八月七日に提起された「損害賠償等請求事件」 ?一億三千九百三十九万六千七十七円

  ?平成二十五年三月二十六日及び同年七月三十一日に提起された「横田基地飛行差止等請求事件」 ?九億三千九百三十七万四千百六十一円

 (四)厚木海軍飛行場

  ?昭和五十一年九月八日に提起された「航空機発着差止等請求事件」 ?一億六千九百三十七万四千五百九円

  ?昭和五十九年十月二十二日に提起された「航空機離着陸差止等請求事件」 ?一億八千七百五十三万四百四十八円

  ?平成九年十二月八日、平成十年二月二十三日及び同年四月二十七日に提起された「航空機離着陸損害賠償請求事件」 ?五十一億七千八百四十八万九千九百二十二円

  ?平成十九年十二月十七日及び平成二十年四月二十一日に提起された「損害賠償等請求事件」 ?百二億千五百三十六万八千八十八円

  ?平成三十年七月十三日に提起された「損害賠償請求事件」 ?三十六万七百二円

 (五)岩国飛行場

  ?平成二十一年三月二十三日及び同年十月三十日に提起された「飛行差止等請求事件」並びに平成二十四年十一月二十八日に提起された「オスプレイ飛行等差止請求事件」 ?十億三千十万三千四百五十六円

回答(質問1 の2から5までについて)

 お尋ねの「我が国が考える「妥結」」の意味するところが必ずしも明らかではないが、在日米軍の飛行場における航空機による騒音に係る訴訟に関する損害賠償金についての日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)に基づく分担の在り方(以下「本件分担の在り方」という。)については、日本政府は米国政府に対して損害賠償金の分担を要請するとの立場で協議を重ねてきたが、本件分担の在り方についての日本政府の立場と米国政府の立場が異なっていることから、現時点において妥結を見ておらず、現時点において同国政府から何らかの支払がされたとの事実はない。同国政府との具体的な協議の詳細については、これを公にすると同国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から答弁を差し控えたい。

質問2

米軍基地内の有害廃棄物処理費用

1 運用中の在日米軍基地から出た有害廃棄物の処理やその費用負担の在り方については、日米地位協定や在日米軍駐留経費負担に係る特別協定にも明文の規定がない。一般論として、こうした廃棄物の処理及び費用負担は日米どちらが担うべきであるのか、日本政府の見解を明らかにされたい。

2 「衆議院議員堤かなめ君提出在日米軍基地のPCB廃棄物に関する質問に対する答弁書」(令和六年二月六日受領答弁第三号)では、在日米軍基地内のPCBの処理について、米国務省が平成十四年に全量を米国内で処理する方針を示したにもかかわらず、実際には日本側が日本国内の処理施設で処理し、その費用についても平成十五年度から令和四年度までに総額約四億四千七百万円を負担してきたことが明らかにされている。これらの処理費用を日本政府が負担することにした理由を示されたい。

3 防衛省は令和三年九月、普天間飛行場内に残されている有機フッ素化合物(PFAS)を含む未処理の排水を引き取り、日本政府の費用負担で処理する方針を明らかにした。これに関し、日本政府が自らの費用負担で処理する旨の判断を行った理由と、排水処理のために負担した金額を明らかにされたい。

4 在日米軍司令部は令和五年六月、日本国内の主要な米軍基地において有機フッ素化合物の一種であるPFOSやPFOAを含まない泡消火剤への交換が完了した旨を発表したが、これにより不要となった交換前の泡消火剤の量と現在の保管状況について政府の把握するところを示されたい。また、その処理の主体及び費用負担の在り方について示されたい。

5 在日米軍施設・区域でのアスベストの撤去作業を日本政府の費用負担で行った案件があれば、その案件及び支出額を明らかにされたい。また、それらの案件について、米国政府が費用の一部を負担しているのであればその負担割合と根拠について政府の把握するところを示されたい。米国政府の負担がないのならその理由についても示されたい。

6 その他、在日米軍基地にある廃棄物の処理費用を日本政府が負担した案件があれば、その理由と支出額を明らかにされたい。

回答(質問2 の1について)

 御指摘の「運用中の在日米軍基地から出た有害廃棄物」の具体的な内容が明らかではないため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、在日米軍から施設及び区域が返還された場合の原状回復措置に係るものについては、日米地位協定第四条1において、「合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当たつて、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない」と規定されており、また、提供施設整備、米軍再編等に係るものについては、日米地位協定第二十四条1において、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される」と規定され、同条2において、「日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権・・・をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される」と規定されている。

回答(質問2 の2について)

 お尋ねについては、在日米軍から施設及び区域が返還された場合の原状回復措置に係るものについては日米地位協定第四条1の規定に基づき、提供施設整備及び米軍再編に係るものについては日米間の協議の結果日米地位協定第二十四条2の規定に基づき、日本政府が負担したところである。

回答(質問2 の3について)

 お尋ねについては、日米間の協議の結果、日米地位協定第二十四条2の規定に基づき日本政府が処分を行ったものであり、この処分のために要した費用は、約九千四百万円である。

回答(質問2 の4について)

 お尋ねの「不要となった交換前の泡消火剤の量」については把握していないが、米国政府が在日米軍施設において保有する泡消火薬剤については、同国政府において適切に保管の上、同国政府の負担により処理されているものと認識している。

回答(質問2 の5について)

 日米地位協定第四条1及び第二十四条2の規定に基づいて日本政府が実施する在日米軍施設の解体工事等において、当該施設に石綿の使用が確認された場合は、日本政府の費用負担により当該石綿を除去しているところであるが、お尋ねの「案件及び支出額」については、統計をとっていないため、お答えすることは困難である。

回答(質問2 の6について)

 日米地位協定第四条1及び第二十四条2の規定に基づいて日本政府が実施する在日米軍施設における事業において、当該事業の実施に伴い廃棄物が排出された場合は、日本政府の費用負担により当該廃棄物を処理しているところであるが、お尋ねの「案件」及び「支出額」については、統計をとっていないため、お答えすることは困難である。