フラット35の不正融資問題に関する質問主意書
令和五年十一月二十八日「衆議院議員原口一博君提出フラット35の不正融資問題に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質二一二第四八号)において、「お尋ねについては、御指摘の「アルヒフラット35被害弁護団及び被害者同盟」の関係者から独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という。)に対して訴訟が提起されているところ、御指摘の「調査」の実施の有無を含めてお答えすることは、現在係属中の訴訟に対して、不測の影響を与えるおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。」との答弁があった。
しかし、フラット35の不正融資問題(以下「本件」という。)に関して係属中の訴訟があることをもって、立法府に対し事実関係や政府の見解さえ示せないとする理由にはならない。
上毛新聞(令和五年九月二十一日)によれば、令和元年九月に医薬品販売会社が株式会社ビッグモーターに対して中古車販売代金の返還を求める民事訴訟を起こしており、令和五年九月に判決が言い渡されたとされている。しかし、提訴から判決までの期間内である令和五年七月二十八日の国土交通大臣会見で、斉藤大臣は、同訴訟の当事者であるビッグモーターへの立入検査の状況等について報告している。
また、産経新聞(令和五年六月五日)によれば、令和四年四月に北海道知床半島沖で発生した遊覧船の事故(以下「知床遊覧船事故」という。)について、令和五年二月に有限会社知床遊覧船の従業員の遺族から同社に対し、安全配慮義務違反による損害賠償を求める民事訴訟が起こされており、同年六月の時点では、「今後、第一回口頭弁論の期日が決まる見通し」とされていることから、少なくとも同時点では係属中の案件であると考えられる。しかし、その期間内である令和五年四月十二日の衆議院国土交通委員会での中川郁子委員への質問に対し、政府は同事故に関する見解や事実関係について述べている。
さらに、知床遊覧船事故を巡る国家賠償請求訴訟について、令和五年十二月一日の国土交通大臣会見では、詳細についてのコメントは差し控えつつも、事実関係については明らかにしている。
これらの事例においても、「現在係属中の訴訟に対して、不測の影響を与えるおそれ」は想定でき、本件について同様の理由をもって答弁を差し控えることは、過去の対応から見て、一貫性に欠けると言わざるを得ない。
加えて、平成二十年四月四日「衆議院議員平野博文君提出閣僚等の答弁・説明義務及び「あたご」事故の調査等に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一六九第二二七号)(以下「あたご答弁」という。)において、政府は「国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十四条に基づく質問に対し、政府としては、誠実に答弁すべきものと考えている」と答弁している。また、護衛艦「あたご」に係る事故の情報について、「防衛省は、捜査の支障になるとして国会からの説明要求を拒む一方、捜査完了を待たず省の独自調査結果を公表したが、これまで説明しなかった情報を捜査に支障がないと判断して公開した理由は何か」との旨の質問に対し、「乗組員への聴取等の調査を行い、防衛省として、その内容の確認、整理等を行った上で、捜査に支障等が生じないと判断したものについて公表した」と答弁している。
以上を踏まえ、質問主意書の答弁等に対する政府の見解を求めるとともに、前回の質問主意書で明確な答弁が無かった本件に係る事実関係及び政府の見解について再質問する。
質問1
係属中や捜査中であることを理由に、政府が答弁や説明を拒むケースが一般に見受けられるが、質問主意書の答弁や情報公開に対する政府の見解について、次のとおり質問する。
1 あたご答弁における「国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十四条に基づく質問に対し、政府としては、誠実に答弁すべきものと考えている」とする認識に現在も相違ないか。
2 あたご答弁における「乗組員への聴取等の調査を行い、防衛省として、その内容の確認、整理等を行った上で、捜査に支障等が生じないと判断したものについて公表した」との答弁について、本件に関しても、係属中の案件に支障が生じないと判断したものについては情報開示を行っているか。
回答(質問1 の1について)
お尋ねのとおりである。
回答(質問1 の2について)
お尋ねの「情報開示」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「フラット35の不正融資問題」に関する情報については、本件を所管する国土交通省及び金融庁として、公表していない。
質問2
本件について、政府は、令和元年以降、次に掲げる調査について既に行っているのか。既に調査を行っているとすれば、調査結果の公表等は行われているのか。これまでに行っていないならば、その理由は何か。また、これまでにどのような指導等を行っているか。なお、機構の調査については、政府として把握されているところを回答されたい。前回と同様の答弁を行う場合には、株式会社ビックモーター、知床遊覧船事故、護衛艦「あたご」事故に係る発言や答弁と本件の答弁で対応が異なっている理由を回答されたい。
1 国土交通省から機構への調査
2 国土交通省からアルヒへの調査
3 機構からアルヒへの調査
4 金融庁から機構への調査
5 金融庁からアルヒへの調査
回答(質問2 及び質問3 について)
お尋ねについては、先の答弁書(令和五年十一月二十八日内閣衆質二一二第四八号。以下「前回答弁書」という。)一及び二の前段についてでお答えしたとおりである。
また、お尋ねの「対応が異なっている理由」については、御指摘の「令和五年七月二十八日の国土交通大臣会見」における国土交通大臣の発言については、株式会社ビッグモーターに対して道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)に基づく立入検査を実施した旨を説明したものであるが、御指摘の「中古車販売代金の返還を求める民事訴訟」において政府は当事者ではなく、当該発言が当該訴訟に与える影響を考慮する必要がないと判断したものである。
また、御指摘の「令和五年四月十二日の衆議院国土交通委員会」における政府参考人の答弁については、国土交通省が所管する特別の法律により設立される民間法人である日本小型船舶検査機構の体制強化について説明したものであって、御指摘の「損害賠償を求める民事訴訟」とは関係がない内容であり、また、当該訴訟において政府は当事者ではないことから、当該発言が当該訴訟に与える影響を考慮する必要がないと判断したものである。
また、御指摘の「令和五年十二月一日の国土交通大臣会見」における同大臣の発言については、御指摘の「国家賠償請求訴訟」における国の主張を繰り返したものであり、既に当該訴訟の中で明らかになっていた内容を発言したものであることから、当該発言が当該訴訟に与える影響を考慮する必要がないと判断したものである。
また、御指摘の「あたご答弁」における「公表」については、海上自衛隊の艦船事故調査委員会が平成二十年三月六日から二十日までの間に乗組員への聴取等の調査を行い、防衛省として、その内容の確認、整理等を行った上で、捜査に支障等が生じないと判断される範囲内で行われたものである。
以上のとおり、御指摘の発言及び答弁については、いずれも個別の事情に応じて判断して行ったものであり、前回答弁書の内容についても、御指摘の「フラット35の不正融資問題」における個別の事情に応じて判断したところである。
質問3
政府は、融資を受けた本人のみが一括返済を求められることについてどのような見解を持っているか。なお、前回と同様の答弁を行う場合には、株式会社ビックモーター、知床遊覧船事故、護衛艦「あたご」事故に係る発言や答弁と本件の答弁で対応が異なっている理由を回答されたい。
回答(質問2 及び質問3 について)
お尋ねについては、先の答弁書(令和五年十一月二十八日内閣衆質二一二第四八号。以下「前回答弁書」という。)一及び二の前段についてでお答えしたとおりである。
また、お尋ねの「対応が異なっている理由」については、御指摘の「令和五年七月二十八日の国土交通大臣会見」における国土交通大臣の発言については、株式会社ビッグモーターに対して道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)に基づく立入検査を実施した旨を説明したものであるが、御指摘の「中古車販売代金の返還を求める民事訴訟」において政府は当事者ではなく、当該発言が当該訴訟に与える影響を考慮する必要がないと判断したものである。
また、御指摘の「令和五年四月十二日の衆議院国土交通委員会」における政府参考人の答弁については、国土交通省が所管する特別の法律により設立される民間法人である日本小型船舶検査機構の体制強化について説明したものであって、御指摘の「損害賠償を求める民事訴訟」とは関係がない内容であり、また、当該訴訟において政府は当事者ではないことから、当該発言が当該訴訟に与える影響を考慮する必要がないと判断したものである。
また、御指摘の「令和五年十二月一日の国土交通大臣会見」における同大臣の発言については、御指摘の「国家賠償請求訴訟」における国の主張を繰り返したものであり、既に当該訴訟の中で明らかになっていた内容を発言したものであることから、当該発言が当該訴訟に与える影響を考慮する必要がないと判断したものである。
また、御指摘の「あたご答弁」における「公表」については、海上自衛隊の艦船事故調査委員会が平成二十年三月六日から二十日までの間に乗組員への聴取等の調査を行い、防衛省として、その内容の確認、整理等を行った上で、捜査に支障等が生じないと判断される範囲内で行われたものである。
以上のとおり、御指摘の発言及び答弁については、いずれも個別の事情に応じて判断して行ったものであり、前回答弁書の内容についても、御指摘の「フラット35の不正融資問題」における個別の事情に応じて判断したところである。