羽田空港航空機衝突事故に関する質問主意書
本年一月二日に、羽田空港のC滑走路上において、日本航空と海上保安庁の航空機が衝突炎上し、海上保安庁の乗員五名が死亡する大変痛ましい大事故が発生した。現在、運輸安全委員会において事故の原因究明の調査を進めていると承知しているが、事故の発生要因としては、海上保安庁の機長が、航空管制官のC滑走路への進入許可がないまま滑走路に侵入した可能性があること、航空管制官がレーダー画面上で滑走路誤進入を注意喚起するシステムにおいて、海上保安庁の航空機が滑走路に侵入したことを知らせる注意喚起の表示に気づかなかった可能性があることなど、様々な複合要因が重なって大事故が発生した可能性があるとされている。航空機の滑走路誤進入は過去にも発生しており、平成十九年では、九月から十一月の間に、伊丹空港、関西国際空港、中部国際空港で相次いで発生した。そのような状況により、国土交通省は、滑走路誤進入の発生を防止するため、平成十九年十二月に「滑走路誤進入防止対策検討会議」を設置し、平成二十年三月に、航空管制官とパイロットのコミュニケーションの齟齬の防止、視覚的な支援システムの整備等など、具体的な対策の取りまとめを行ったが、それにもかかわらず、今回の大事故が発生したことは極めて遺憾である。国土交通省は、本年一月十九日に、滑走路上における航空機等の衝突防止のためのさらなる安全・安心対策を検討するため、「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」の初会合を開催したが、公共交通機関としての航空の信頼回復を図ることは大きな使命であり、今回のような大事故を発生させないためにも、早期に安全・安心な対策に取り組んでいく必要がある。
このような状況を踏まえ、以下質問する。
質問1
羽田空港を管理する責任機関はどこなのか示されたい。
回答(質問1 について)
お尋ねの「責任機関」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、空港法(昭和三十一年法律第八十号)第四条第一項において、東京国際空港(以下「羽田空港」という。)については、国土交通大臣が設置し、及び管理すると規定されている。
質問2
航空機同士の衝突を未然に防ぐ方法として、航空機への自動位置情報伝送・監視装置(ADS−B)の搭載が考えられる。この装置を搭載することによって、近くにいる航空機同士が自機の位置情報を送信して、お互いの位置を操縦席のディスプレイに表示できることになるため、パイロットの周辺監視が容易になり、より一層の安全性の向上に繋がることが期待される。ついては、事故を起こした海上保安庁の航空機に、この装置が搭載されていたのか伺いたい。また、欧米では搭載が義務化されているが、今回と同様な大事故を発生させないためにも、我が国において搭載を義務化するべきと考える。今後の搭載の義務化について伺いたい。
回答(質問2 について)
前段のお尋ねについては、御指摘の「事故を起こした海上保安庁の航空機」には、自機の位置情報等を自動的に発信する機能を有する装置であるいわゆる「ADS−B」(以下「ADS−B」という。)及びADS−Bにより発信される位置情報等を受け取る装置(以下「受信装置」という。)は装備されていなかった。
後段のお尋ねについては、ADS−Bについては、我が国において十分な監視レーダーを配備することにより、航空管制官が航空機の位置等を把握できるため、航空機に装備を義務付けていないが、お尋ねの「搭載の義務化」をするか否かについては、今後検討する必要があると考えている。また、受信装置については、御指摘の「今回と同様な大事故を発生させない」ことについての有効性が確認されていないことから、お尋ねの「搭載の義務化」については、現時点では検討していない。なお、欧米においては、航空管制官が航空機の位置等を把握することを目的として、既存の監視レーダーを補完するために航空機にADS−Bの装備を義務付けているが、受信装置については、航空機への装備は義務付けていないものと承知している。
質問3
羽田空港において、航空機の滑走路への誤進入を防止するために、航空機が滑走路に誤進入した際にパイロットにその状況を知らせるための警告灯、又はそれに準ずるものは設置されているのか、設置されている場合、事故当時、機能していたのか、政府の把握されているところを明らかにされたい。また、機能していなかった場合、今回と同様な大事故を発生させないためにも、設置し、機能している状態にすることを義務化するべきと考える。今後の義務化について伺いたい。
回答(質問3 について)
御指摘の「それに準ずるもの」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「設置されているのか」については、例えば、羽田空港のC滑走路に接続する誘導路には、航空機が誤って当該滑走路に進入することを防ぐため、地上を走行中の航空機に一時停止の要否及び一時停止すべき位置を示す停止線灯を設置しており、当該停止線灯は、低視程時に運用することとしている。お尋ねの「機能していたのか」については、御指摘の「事故当時」は、当該停止線灯は工事中のため機能を停止していたが、仮に工事中でなかったとしても、御指摘の「事故当時」は、視程が五キロメートル以上であり、当該停止線灯を運用する気象状況にはなかった。お尋ねの「今後の義務化」については、羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会において、停止線灯の運用の見直しも含め、検討を進めていくこととしている。