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米国による広島、長崎への原爆投下及び拡大核抑止等に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 原口一博
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

「衆議院議員原口一博君提出米国による広島、長崎への原爆投下及び「非核の傘」に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質二一二第二八号。以下、「答弁書」という。)を踏まえ、米国による広島、長崎への原爆投下及び拡大核抑止について、次のとおり質問する。

質問1

米国による広島、長崎への原爆投下について

1 昭和二十年の広島・長崎への原爆投下が国際法違反であるかという質問に対し、昭和三十九年五月二十一日の参議院内閣委員会において、大平外務大臣(当時)は「実定国際条約で原爆の使用投下ということを規制する実定国際条約というものはないということでございますから、だから、明らかに国際条約、国際法違反であるという論断はできない。」と答弁している。

 ア 現在においても政府は「明らかに国際条約、国際法違反であるという論断はできない」という考え方を維持しているか。

 イ 昭和三十八年十二月七日東京地裁判決(以下、「東京原爆裁判」という。)においては、「単に新兵器であるというだけで適法なものとすることはできず、やはり実定国際法上の検討にさらされる必要のあることは当然である。」として、「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」(明治四十五年一月十三日条約第四号。以下、「ハーグ陸戦条約」という。)等の当時の実定国際条約を検討している。「実定国際条約で原爆の使用投下ということを規制する実定国際条約というものはない」ために、広島、長崎への原爆投下が「明らかに国際条約、国際法違反であるという論断はできない」のであれば、無差別性、残虐性を有する従来にない新兵器が発明及び使用され、数多の非戦闘員である一般市民の犠牲者を生んだ場合についても、具体的な兵器を規制する実定条約が存在しなければ、政府は、実定条約がないために「明らかに国際条約、国際法違反であるという論断はできない」との見解を有するのか。

 ウ 第二次世界大戦にハーグ陸戦条約が適用されるかについては、司法の判断が分かれている。

  東京原爆裁判では、「地上都市に対する爆撃については、それが陸上であるということから、陸戦に関する法規が類推適用されるという議論も、十分に成立し得ると考える。」としており、「広島、長崎両市に対する原子爆弾による爆撃は、無防守都市に対する無差別爆撃として、当時の国際法からみて、違法な戦闘行為であると解するのが相当である。」とするなど、「広島長崎両市に対する原子爆弾の投下行為は、国際法に違反するもの」であるとしている。

  一方、平成二十一年十二月十四日東京地方裁判所判決では、ハーグ陸戦条約について「イタリアを初めとするいくつかの交戦国が加入していなかった」ことから、「第二次世界大戦について、ハーグ陸戦条約の適用はないといわざるを得ない。」としている。

  政府は、米国による広島、長崎への原爆投下について、当時、ハーグ陸戦条約が適用されていたと考えているのか。

 エ 米国による広島、長崎への原爆投下は、無差別爆撃により市民を殺傷するなど、広島、長崎への原爆投下当時においてもハーグ陸戦条約などの国際法に違反していたのではないか。政府の見解如何。

2 放射線防護の国際的な基準については、国際放射線防護委員会(ICRP)が、科学的知見の進歩等を反映して防護体系を改訂して勧告を公表している。我が国における放射性物質の規制基準も、ICRPの勧告をもとに定められている。

 ICRP勧告について、答弁書「一の2の(三)について」では、「ABCCの調査のみならず、広島や長崎の被爆者の疫学調査を始めとする様々な科学的知見」との記述があるが、原爆傷害調査委員会(ABCC)の調査以外には具体的にどのような調査がどのような組織の関与の下で行われたと政府は承知しているのか。

回答(質問1 の1のア及びエについて)

 お尋ねについては、先の答弁書(令和五年十一月二十日内閣衆質二一二第二八号)一の1の(一)についてでお答えしたとおりである。

回答(質問1 の1のイについて)

 お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい。

回答(質問1 の1のウについて)

 お尋ねの「米国による広島、長崎への原爆投下について、当時、ハーグ陸戦条約が適用」の意味するところが必ずしも明らかではないが、陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(明治四十五年条約第四号)は、第二条において、「第一條ニ掲ケタル規則及本條約ノ規定ハ交戰國カ悉ク本條約ノ當事者ナルトキニ限締約國間ニノミ之ヲ適用ス」と規定している。

回答(質問1 の2について)

 お尋ねの「調査」については、例えば、二千年の原子放射線の影響に関する国連科学委員会における「放射線の線源と影響」に関する調査や、二千六年の米国科学アカデミーにおける「低レベル電離放射線の健康リスク」に関する調査などがあるものと承知している。

質問2

拡大核抑止等について

1 政府は「衆議院議員今井雅人君提出核兵器禁止条約への日本の参加に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質二〇四第一号)において、「「締結国会議にオブザーバーとして参加すること」については、慎重に見極める必要があると考えている。」と答弁している。

 ア 現在においても政府は「慎重に見極める必要がある」という考え方を維持しているか。

 イ 「衆議院議員今井雅人君提出核兵器禁止条約への日本の参加に関する質問に対する答弁書」において、「我が国として安全保障に万全を期するためには、核を含む米国の抑止力に依存することが必要である。」と答弁している。政府は、我が国の安全保障には米国の核は必要不可欠であると考えているのか。

 ウ 核兵器禁止条約の第二回締約国会議には、米国の同盟国であるオーストラリアや、NATO加盟国のドイツ、ノルウェーなど米国の抑止力の下にある国々がオブザーバーとして参加している。これらの国々がオブザーバーとして参加しているにもかかわらず、我が国が核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加していないのはなぜか。

2 答弁書「二の2について」において、「核兵器廃絶決議に係る各国間の調整等の取組」や「「軍縮・不拡散イニシアティブ」における協議等の取組等」を行ってきているとしている。これらの取組は、他国にも類似の取組が見られる。政府は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け国際社会の取組をリードしていくために、他国と異なる特段の取組を行っているのか。

3 令和五年四月二十四日の衆議院決算行政監視委員会第一分科会で林外務大臣(当時)は、「核兵器国を含む全ての関係国の同意等適切な条件がそろっている地域において非核地帯が設置」と答弁している。政府として、南極も含めると世界に七つの非核兵器地帯(以下、「非核地帯」という。)が存在することを認識し、非核地帯に北東アジアが含まれていないことを認識しているか。また、現在の七つの非核地帯に北東アジアが含まれていないと認識しているのであれば、唯一の戦争被爆国である我が国が位置する北東アジアにこそ非核地帯を設置することが必要であり、そのための取組を行うべきと考えるが、政府の見解如何。

回答(質問2 の1のア及びウについて)

 御指摘の「締約国会議にオブザーバーとして参加」に関しては、令和五年十月二十六日の参議院本会議において、岸田内閣総理大臣が「核兵器禁止条約第二回締約国会合へのオブザーバー参加・・・についてお尋ねがありました。(中略)御指摘の核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加しておらず、いまだその出口に至る道筋は立っていない、これが現状です。」と答弁しているとおりである。

回答(質問2 の1のイについて)

 お尋ねについては、令和五年五月二十四日の衆議院予算委員会において、岸田内閣総理大臣が「我が国を取り巻く厳しい安全保障環境や、現実に核兵器が存在している、このことを踏まえれば、我が国の現在の安全保障にとって、核抑止力を含む米国の拡大抑止、これは不可欠であると認識をしています。」と答弁しているとおりである。

回答(質問2 の2について)

 御指摘の「他国にも類似の取組が見られる」及び「他国と異なる特段の取組」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

回答(質問2 の3について)

 お尋ねの「七つの非核兵器地帯(以下、「非核地帯」という。)」の意味するところが必ずしも明らかではないが、北東アジアにおいては、非核地帯は設置されていないものと認識している。

 核兵器国を含む全ての関係国の同意等適切な条件がそろっている地域において非核地帯が設置されることは、一般的に、核不拡散等の目的に資すると考える。しかしながら、令和四年十一月二十九日の衆議院予算委員会において、岸田内閣総理大臣が「非核兵器地帯構想については、やはり何といっても核兵器をめぐる信頼関係が基盤とならなければなりません。」と述べているところ、北東アジアにおいては、非核地帯実現のための現実的環境はいまだ整っていないと考えており、我が国としては、北東アジアの安全保障環境改善のため、まずは北朝鮮の核問題の解決の実現に向け努力する考えである。