防衛省の秘密保全体制に関する質問主意書
英国の新聞報道によれば、英国海軍は昨年、海軍艦艇内で中国人の民間人が洗濯職人として勤務する約八十年間続いてきた慣習を、秘密保全のために廃止した。家族が香港に居住する勤続三十九年の中国人職人が解雇されたほか、三人の中国人職人が空母への乗艦を禁止された。理由は、中華人民共和国(中国)当局が中国国内にいる職人の家族に危害を加えると脅迫して英国海軍の秘密情報を漏洩させる事態が危惧されたためである。慣習廃止の後、英国海軍の広報官は、「すべての民間人請負業者は、セキュリティ・クリアランス制度に基づく適切なアクセス権を保持していると保証する。」と述べた。
近年、中国による不法な情報収集活動の激化に伴い、我が国が属するいわゆる自由主義圏において、同盟国及び同志国に対する責任として、秘密保全の重要性が増している。そこで、防衛省の秘密保全体制についてお尋ねする。
質問1
防衛省は、庁舎の清掃役務、防衛駐在官候補者等に対する語学教育、防衛省職員英語通訳研修プログラム、インターネット回線の敷設及び回線の利用、空調設備等整備役務、給排水設備等整備役務、中水処理設備補修役務、消防設備補修役務、業務無線機整備役務、能力構築支援事業に係る支援役務、内部部局職員英語オンライン研修プログラム、蒸気設備補修役務、内装補修役務、電源設備整備役務、LANケーブル敷設等役務、計装設備整備役務、各国持回りの国際会議の運営に係る役務、生化学分析装置の点検役務、放送設備整備役務、ウクライナ負傷兵の自衛隊病院への受け入れに係る運営業務、執務室レイアウト変更に係るケーブル等の敷設、撤去等役務、能力構築支援事業に関する翻訳役務、総合職官庁訪問に係る会場設営に関する業務等の一般競争入札を実施しているが、実施にあたり、不法な情報収集活動又は暴力的破壊活動を行う者が落札しないよう、いかなる措置を講じているか。
回答(質問1 及び質問2 について)
御指摘の「不法な情報収集活動又は暴力的破壊活動を行う者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、防衛省においては、秘密保全の徹底は我が国防衛を全うする観点から必要不可欠との認識の下、一般競争入札においては、役務等契約条項に契約の相手方である事業者及びその使用人に秘密保全に係る義務を課す条項があることを受け、その手続において当該条項があることの同意を得た上で、落札した事業者と契約を締結するといった秘密保全のために必要な措置を講じているところである。
質問2
防衛省は、前項で列挙した役務等を落札した者が、契約業務の履行に当たる使用人として、不法な情報収集活動又は暴力的破壊活動を行う者を雇用又は委託することがないよう、いかなる措置を講じているか。
回答(質問1 及び質問2 について)
御指摘の「不法な情報収集活動又は暴力的破壊活動を行う者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、防衛省においては、秘密保全の徹底は我が国防衛を全うする観点から必要不可欠との認識の下、一般競争入札においては、役務等契約条項に契約の相手方である事業者及びその使用人に秘密保全に係る義務を課す条項があることを受け、その手続において当該条項があることの同意を得た上で、落札した事業者と契約を締結するといった秘密保全のために必要な措置を講じているところである。
質問3
昭和四十二年に警視庁が検挙したいわゆる外務省スパイ事件では、在日本朝鮮人総聯合会傘下組織の幹部である北朝鮮工作員が、外務省東欧課の事務官に現金を渡して、焼却予定の秘密文書を入手していた。本事件は、日本で秘密となっている東欧諸国に関する資料及び情報分析のデータが、北朝鮮等の共産圏諸国でそのままの形で公になる事件が複数回起きたことから、警視庁が捜査して摘発したものである。官公庁の庁舎においては、秘密保全につき、特に細心の注意を払わなければならないと考えるが、政府の見解如何。
回答(質問3 について)
政府としては、外国情報機関により我が国に対する情報収集活動が行われているとの認識に立ち、引き続き、御指摘の「官公庁の庁舎」における秘密保全を含め、カウンターインテリジェンスに関する施策に取り組んでいく考えである。