高麗航空との金融取引に関する質問主意書
北朝鮮の高麗航空は、国営の航空会社であり、いわゆるコロナ禍の前は、北朝鮮の外貨獲得に大きく貢献していた。獲得された外貨は、大量破壊兵器開発計画に優先的に使用されたと推定される。
高麗航空について、国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号に基づいて設置された専門家パネルは、過去に公表した複数の報告書において、スカッド・ミサイルの部品の密輸に関与したことや、朝鮮人民軍と極めて密接な関係にあることを記している。アメリカ合衆国(米国)は、林芳正外務大臣(当時)が令和四年十一月十一日の衆議院外務委員会で答弁したとおり、高麗航空を制裁対象に指定している。また、米国は令和四年十一月八日、高麗航空丹東事務所代表のリ・ソクが電子部品の密輸に関与したとして、同人を制裁対象に指定した。大韓民国は昨年二月二十日、同様の理由で同人を制裁対象に指定した。本来であれば、我が国は、高麗航空を経済制裁措置の対象に指定していなければならない。
我が国においては、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)の傘下企業が、高麗航空の代理店業務を行ってきており、いわゆるコロナ禍の前は、日本国民を含む訪朝者のために高麗航空の航空券を手配するなどして、北朝鮮の外貨獲得に貢献してきた。
金融活動作業部会(FATF)は、過去に発表した数多くの声明において、北朝鮮のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の体制に重大な欠陥があるとし、加盟国に対して、効果的な対抗措置を適用すること等を求めてきた。
これらを踏まえ、以下質問する。
質問1
我が国の金融機関等は、高麗航空と、送金又は決済に関わる取引を行うことは許されるか。マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の観点から、政府の見解如何。
回答(質問1 について)
お尋ねの「許されるか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策については、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第四条第一項の規定による顧客等の本人特定事項等についての取引時確認等、同法第八条第一項の規定による疑わしい取引の届出等を金融機関等に義務付けているほか、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)その他の法令により、金融機関等が犯罪収益等(同法第十条第一項に規定する「犯罪収益等」をいう。以下同じ。)を隠匿した場合、情を知って、犯罪収益等を収受した場合等には刑事罰の対象となるものとされている。また、銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)等において、金融機関等は、その営む業務の内容に応じ、健全かつ適切な業務が運営されるための十分な体制の整備が求められている。
その上で、お尋ねについては、個別の事案がこれらの法令に違反するか否かについて、個別具体的な事実関係に即して判断する必要があるため、一概にお答えすることは困難である。
質問2
警視庁公安部は、昨年十二月、朝鮮総連傘下の貿易会社が海外に不正な送金を行った疑いがあるとして、複数箇所を家宅捜索した。金融機関を利用して我が国から海外に送金しようとする依頼者が、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策を回避する目的で、送金目的について事実と異なる説明をすることは、一般的に法令に違反するか。政府の見解如何。
回答(質問2 について)
一般論として、お尋ねの「金融機関を利用して我が国から海外に送金しようとする依頼者が、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策を回避する目的で、送金目的について事実と異なる説明をすること」は、犯罪による収益の移転防止に関する法律その他の法令に違反するおそれがあるが、個別の事案がこれらの法令に違反するか否かについては、個別具体的な事実関係に即して判断する必要がある。
質問3
国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号第十八項は、加盟国に対し、北朝鮮の核関連、弾道ミサイル関連又はその他の大量破壊兵器関連の計画又は活動に貢献し得る金融サービスの提供等を、防止するよう要請した。我が国は、本決議を、誠実に遵守することを必要とするか。政府の見解如何。
回答(質問3 について)
政府として、国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号に定める義務を誠実に履行する必要があると考えている。