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アクアポニックス等に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 緑川貴士
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

国連食糧農業機関(FAO)によると、令和四年の水産物生産で養殖漁業が初めて天然漁業の割合を上回った。海洋環境の変化に対応した、魚種・漁法の複数化の取組の強化を図り、世界の食糧需要における養殖漁業の重要性も増している。アクアポニックスは、水産養殖の「Aquaculture」と、水耕栽培の「Hydroponics」からなる造語で、魚と植物を同じシステムで育てる新しい農漁業としても注目されている。

質問1

地球温暖化の影響でサンマやサケ等、主要魚種の不漁が相次ぐ中、漁業経営の安定化には、資源量の変動に応じて複数の漁法や魚種を柔軟に組み合わせる必要がある。北日本においては、南からの北上する暖水系の魚種の漁獲数が顕著に増えており、当該魚種、漁法の複数化が追い付いていない地域がある。取組の加速化への政府の支援を求める。

回答(質問1 について)

 「水産基本計画」(令和四年三月二十五日閣議決定)において、「漁獲対象種・漁法の複数化、複数経営体の連携による協業化や共同経営化、兼業などによる事業の多角化等の複合的な漁業への転換など操業形態の見直しを段階的に推進する」としており、令和五年度補正予算等において措置された「漁業構造改革総合対策事業」及び「不漁に対応した操業体制緊急構築実証事業」により、これを支援しているところである。

質問2

FAOによれば、令和四年の養殖漁業の生産高は九千四百四十万トンで、水産動物生産全体の過半を占め、食用水産物に限れば、養殖水産物の割合は五十七パーセントにものぼっている。我が国における漁業経営の安定化には、海業等も含めて民間事業者等とも協力しながら、漁業の将来を考えていくことは重要であり、養殖業との兼業の新たな形として、アクアポニックスによる漁業の活性化の可能性について政府の見解を求める。

回答(質問2 について)

 御指摘の「アクアポニックスによる漁業の活性化」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、農林水産省が令和二年七月十四日に策定した「養殖業成長産業化総合戦略」においては、「アクアポニックスは、魚の排出物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収、浄化された水が再び魚の水槽へと戻すといった生産性と環境への配慮が両立できる生産システムであり、今後の研究の広がりが期待されている。」としているところである。

質問3

アクアポニックスでは、土づくりや草むしり等、体を酷使する作業が少ないため、高齢者の雇用の促進につながると考える。

さらに障害者福祉においては、埼玉県ではニシキゴイとニンニクを育てている福祉作業所もあるなど、障害者の所得向上にも資する取組が進められている。アクアポニックスを通じた農漁業と福祉との連携を進める重要性について政府の見解を伺う。

回答(質問3 について)

 御指摘の「アクアポニックスを通じた農漁業と福祉との連携」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「農福連携等推進ビジョン(二〇二四改訂版)」(令和六年六月五日農福連携等推進会議決定)において、「農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取組」である「農福連携」は、「農業のみならず林業や水産業に広げ」て推進していくことが重要であるとし、こうした取組が「地域共生社会の実現に資する取組である」としているところであり、御指摘の「アクアポニックス」を用いたかどうかにかかわらず、「農漁業と福祉との連携」を推進することは重要であると考えている。