クマ対策に関する質問主意書
全国のクマによる人身被害は令和五年度、二百十九件と過去最多となり、市街地や人家周辺においての被害が目立ち、令和六年の出没件数(一月から四月)も令和五年の同期間を上回るペースで増えている。
質問1
「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」第三十八条で禁止されている「住居集合地域等」における、麻酔銃を含む猟銃の使用について、人命にかかわる差し迫った状況であると警察官が判断してハンターに命令を出した場合に限り、「警察官職務執行法」に基づいてハンターは発砲することができるとしている。しかし、当該命令は緊急避難としての対応であり、たとえば、発令をためらったり、時間を要したりする場合が考えられ、当該警察官の、野生動物や猟銃に対する見識と判断等が人身被害発生の有無を多分に左右するリスクが生じている。
また「住居集合地域等」であるが、現場の状況から安全に使用できると容易に判断されうる場合でも、猟銃が使用できずに事態の収束に時間がかかり、地域住民等が危険にさらされたケースがある。ハンター自身も命の危険にさらされており、ハンターの判断で使用できる範囲を拡大の必要性の一方、市街地等での捕獲に伴う事故等における責任の所在と指揮系統、役割分担等、体制整備の必要性について政府見解を求める。
回答(質問1 及び質問2 について)
令和六年五月二十三日に環境省が開催した「鳥獣保護管理法第三十八条に関する検討会」において取りまとめられた「鳥獣保護管理法第三十八条の改正に関する対応方針(案)」(以下「対応方針案」という。)において、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)の改正に当たって、「役割分担と指揮系統」、「市街地出没に対応可能な人材の育成と配置の支援」、「事故が起きてしまった場合の責任の所在」等の在り方について方向性が示されているところ、対応方針案に係る今後の議論の結果を踏まえ、政府として、御指摘の「従来はクマの出没がほとんどなく、当該連携に不慣れな自治体への支援」も含め、必要な措置を講じていく考えである。
質問2
一に関し、クマの出没が多い地域は猟友会と警察が連携を取りながら対応に当たるが、従来はクマの出没がほとんどなく、当該連携に不慣れな自治体への支援について、政府対応を求め、認識を問う。
回答(質問1 及び質問2 について)
令和六年五月二十三日に環境省が開催した「鳥獣保護管理法第三十八条に関する検討会」において取りまとめられた「鳥獣保護管理法第三十八条の改正に関する対応方針(案)」(以下「対応方針案」という。)において、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)の改正に当たって、「役割分担と指揮系統」、「市街地出没に対応可能な人材の育成と配置の支援」、「事故が起きてしまった場合の責任の所在」等の在り方について方向性が示されているところ、対応方針案に係る今後の議論の結果を踏まえ、政府として、御指摘の「従来はクマの出没がほとんどなく、当該連携に不慣れな自治体への支援」も含め、必要な措置を講じていく考えである。
質問3
銃刀法で規制が強化される猟銃の一種「ハーフライフル銃」について、獣類の被害防止への影響をふまえ、政府は特例を設けて対応するとしている。大型獣の捕獲を将来的に担う若手ハンターの育成が急務であり、高い技術を持った安全かつ優れた捕獲技術の習得等のためにも重要と考えるが、当該特例は通達で示される。国会の審議を要することなく行政で特例の改廃が可能であり、その結果によっては、人材育成を含めた鳥獣被害対策に支障が生じうる懸念がある。国会審議を通じ、法律の条文に盛り込むべきではないか。政府見解を求める。
回答(質問3 について)
御指摘の「ハーフライフル銃」について、銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十八号)による改正後の銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)第五条の二第四項に定める許可の基準の特例により許可を受けることができる者として、同項第一号ロにおいて掲げられている「事業に対する被害を防止するためライフル銃による獣類の捕獲等を必要とする者」の運用については、警察としては、「銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(令和六年四月十九日衆議院内閣委員会)の八において、「事業被害防止のため獣類の捕獲を必要とする者に対するハーフライフル銃の所持許可に係る特例措置については、期限を設けず、鳥獣の保護及び管理、事業被害への対応等について長期的かつ継続的に取り組む必要性に鑑み、有識者及び関係者の意見を聴きつつ、定期的な見直しを行うこと」とされていること等を踏まえ、獣類による被害の防止対策にも配慮しつつ、適切に行っていくこととしており、現時点において、お尋ねのように「法律の条文に盛り込む」必要があるとは考えていない。
質問4
クマが出没した際に出動するハンターに支払われる報酬額等は市町村ごとに大きく異なるほか、たとえば、クマを捕獲・駆除だけでなく、その後の運搬処理や解体、焼却処分等にかかる報酬を、全て一括で「日当」として支給する所と各業務に対し別々の報酬としている所もある。自治体の中には「日当額が低すぎる」と猟友会側が反発して、当該自治体からの出動要請を拒否した事例があり、当該自治体では猟友会が対応しない代わりに、警察や当該自治体職員、無報酬で協力しているハンターに出動を依頼して対応したという事例も聞くが、スムーズに警戒体制に移行できない間に地域住民等が危険にさらされるリスクや、無報酬のハンターの対応に問題が生じた際の法的責任等、報酬の自治体間格差から生じている諸課題に対する政府見解と対応を求める。
回答(質問4 について)
御指摘の「スムーズに警戒体制に移行できない間に地域住民等が危険にさらされるリスクや、無報酬のハンターの対応に問題が生じた際の法的責任等、報酬の自治体間格差から生じている諸課題」の意味するところが必ずしも明らかではないが、クマ類の出没対応に係る報酬等については、クマ類の生息状況や出没状況等の実情を考慮した上で地方公共団体において判断されるべきものと考えており、政府としては、地方公共団体に対して、農作物等への被害を防止するための捕獲等に係る鳥獣被害防止総合対策交付金による財政的支援を行うとともに、地方公共団体の担当者を主な対象者として想定した「クマ類の出没対応マニュアル−改定版−」(令和三年三月環境省自然環境局改定)を作成して技術的支援を行っているところであり、引き続き、地域の実情に応じて、必要な支援を行ってまいりたい。