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国連安全保障理事会改革と国連軍編成時における対応等に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 神津たけし
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

一九四五年、二度の世界大戦の戦禍を踏まえ、「国際の平和と安全を維持すること」等を目的として国際連合(以下「国連」という。)が設立された。しかし、国連の設立から間もなく八十年を迎えようとしている今日においても、世界は武力紛争の芽を断つことができずにいる。国連は、設立の主要目的の一つである国際の平和及び安全の維持の主要な責任を安全保障理事会(以下「安保理」という。)に負わせ、五つの常任理事国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)に対しては、安保理での表決に際していわゆる「拒否権」を行使することを認めているが、今なお続くウクライナにおける戦禍への対応を見るとおり、常任理事国自身が紛争当事者である場合や、常任理事国同士の利害が交錯しているなどの場合には、安保理は有効な対応策をとることが極めて困難となっている。

武力紛争が一向に止まず、世界の各地で凄惨な状況が発生している現状を踏まえ、私は、国連を国際の平和と安全を維持する主要な国際機関として再生させることが喫緊の課題であり、安保理の在り方を含む国連改革を早急に進めるべきであると考える。こうした観点から、以下、質問する。

質問1

安保理における投票権の在り方について

1 国連憲章では、「安全保障理事会の各理事国は、一個の投票権を有する」ことが規定され(第二十七条1)、手続事項以外の「すべての事項に関する安全保障理事会の決定は、常任理事国の同意投票を含む九理事国の賛成投票によつて行われる」(同条3)こととされている。その一方で、「但し、第六章及び第五十二条3に基く決定については、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない」と規定している(第二十七条3ただし書)。

 ア これらの規定があるにもかかわらず、安保理が国連憲章第六章及び第五十二条3に基づく決定を行うに際し、当該決定において紛争当事国となっている安保理理事国が投票を行った例はあるのか。政府が承知している限りにおいて、その例をお示し願いたい。

 イ 我が国は安保理非常任理事国として、国連憲章第二十七条3ただし書に基づいて、紛争当事国は投票を棄権すべきである旨の指摘を行ったことはあるのか。その例をお示し願いたい。

2 安保理が手続面を除く事項について決定するためには、全ての常任理事国が反対しないことが必要であるが(国連憲章第二十七条3)、ロシアによるウクライナ侵略に際し、紛争当事国であるロシアは安保理による当該侵略に関連した決議案の採択に反対した。これにより、「令和五年版外交青書」でも述べられているとおり、「常任理事国が紛争当事国である場合、安保理が取り得る行動が極めて限られることが改めて明らかとなった」(同書二十三ページ)。このことから、安保理の全理事国は、自国が当事国となっている紛争に関する安保理の決定に際しては、その際の投票を全て棄権しなければならないように国連憲章を改正すべきではないかと考えるが、政府の見解をお示し願いたい。

回答(質問1 の1のアについて)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)が国際連合憲章(昭和三十一年条約第二十六号。以下「国連憲章」という。)第六章及び第五十二条3に基づく決定を行うに際し、安保理の理事国が紛争当事国であるにもかかわらず投票を行ったとして、安保理において国連憲章第二十七条3ただし書に反すると認定された事例は、政府として承知していない。

回答(質問1 の1のイについて)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、我が国としては、安保理の非常任理事国であった期間を含め、国際連合等において国連憲章は誠実に遵守されるべきである旨述べてきているところである。

回答(質問1 の2について)

 御指摘の「自国が当事国となっている紛争」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国連憲章を改正するためには、国際連合総会の構成国の三分の二の多数によって採択される等の必要があるところ、御指摘のような内容の改正を行うことについては、国際連合において議論されるべきものであると考えている。

質問2

国連による集団安全保障措置への対応について

1 ある武力紛争が発生したことを受けて、安保理が国連憲章第四十二条に基づき、当該紛争の解決のために国連加盟国が武力を行使することを容認する決議を採択し、紛争の解決手段として当該決議を根拠に武力の行使を含む行動をとることも権限の中に含む多国籍軍が編成された場合において、我が国の自衛隊が当該多国籍軍の中で活動することは憲法上可能なのか。可能であれば、活動するための条件とともに答弁願いたい。

2 国連憲章第四十三条では、「国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要請に基き且つ一又は二以上の特別協定に従つて、国際の平和及び安全の維持に必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。」(同条1)と規定され、その特別協定は、「兵力の数及び種類、その出動準備程度及び一般的配置並びに提供されるべき便益及び援助の性質を規定する」(同条2)こととされている。これまで、同条に基づく国連軍(以下「正規の国連軍」という。)が実際に編成されたことはないが、国連憲章において正規の国連軍に関する規定が効力を有している以上、将来において編成される可能性はあると考えられる。その際における我が国としての対応について、拙速に検討・決定するのではなく、あらかじめ十分に検討し、国民に対して明確にしておく必要があるとの観点から、以下の各点について答弁願いたい。

 ア 政府は、我が国が正規の国連軍として国連の下に提供する兵力は、自衛隊の部隊から提供することを考えているのか。それとも自衛隊とは別の組織を設置した上で提供することを考えているのか。

 イ アで「自衛隊とは別の組織を設置した上での提供を考えている」とした場合において、その要員はどのように充足するつもりなのか。また、要員の身分は国家公務員とするのか否か。

 ウ 国連憲章の規定上、我が国の国民が我が国政府の下にある組織に所属することなく、正規の国連軍の要員として勤務することは想定されているか。想定されているのであれば、武力を行使する可能性も考えられる正規の国連軍にそのような形で我が国国民が勤務することについて、憲法上の問題は生じないのか。

回答(質問2 の1について)

 御指摘のいわゆる「多国籍軍」には、様々な類型のものが考えられ、個々の事例によりその目的・任務が異なるので、お尋ねの「我が国の自衛隊が当該多国籍軍の中で活動することは憲法上可能」か否かや「活動するための条件」について一概にお答えすることは困難である。

回答(質問2 の2について)

 国連憲章第四十二条及び第四十三条の規定に基づく国連軍については、将来、その編成が現実の問題となる場合に、その性格や同条に規定する特別協定の具体的内容等が明確になった段階において、具体的な判断をすべきものであると考えている。

質問3

国連改革への取組について

1 我が国は、安保理常任理事国入りを目指し、二〇〇四年からいわゆるG4(日本、ドイツ、インド、ブラジル)で連携して活動してきた。活動開始から本年で二十年になる。

 ア 政府はいつまでに我が国の常任理事国入りを目指すつもりなのか、お示し願いたい。

 イ 常任理事国入りに向けて、政府はどのような戦略を持っているのか、説明願いたい。

2 岸田総理大臣は、二〇二二年九月に行われた国連総会一般討論演説において国連改革について言及し、「本当に必要なのは議論のための議論ではなく、改革に向けた行動です。常任理事国の中にも、改革に向けた意欲を見せる国々があります。交渉無くして改革なし。様々な立場は、交渉なくして妥協も収斂もない。安全保障理事会の改革に向けて、文言ベースの交渉を開始する時です。」と述べている。

 ア その後、「文言ベースの交渉」は進めているのか。現状について説明願いたい。

 イ 岸田総理大臣が述べた「文言ベースの交渉」には、具体的にどのような内容について改めることを含んでいるのか、説明願いたい。

回答(質問3 について)

 政府としては、インド、ドイツ、ブラジル等と共に、安保理の構成が現在の国際社会の現実を反映するよう、その常任理事国及び非常任理事国の定数の増加を目指し、安保理の改革を先導するなど、従来から御指摘の「我が国の常任理事国入り」に向けた外交努力を重ねてきており、令和六年九月に国際連合において開催される予定の未来サミットや令和七年の国際連合の創設八十周年を見据え、御指摘の「文言ベースの交渉」を含めた「我が国の常任理事国入り」に向けた検討を行ってきているところであるが、これ以上の詳細については、事柄の性質上、お答えすることは差し控えたい。