分かりやすい衆議院・参議院

治療用装具に関する質問主意書

会派 日本共産党
議案提出者 宮本徹
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

二〇一八年二月九日発出の厚生労働省保健局医療課長通知「保医発〇二〇九第一号」(以下、「二〇一八年二月九日の通知」と呼ぶ)で、「保険医の診察や義肢装具士への指示を経ずに患者への採型・採寸、装着又は販売等がされた治療用装具について、保険者が療養費を支給することは適当でないこと」との記述がなされた以降、いくつかの保険者が、それまでの方針を変えて、義肢装具士資格を持たない整形靴業者の治療用装具(靴型装具等)について、療養費の支給を認めず、装具による治療が必要な方や障害のある方への人権侵害が生じている。私は、二〇二〇年に二度にわたり、衆議院厚生労働委員会で問題を指摘したが、是正されていない。さらに、二〇二三年三月十七日には、厚生労働省保健局医療課長通知「治療用装具に係る療養費の支給の留意事項等について」及び同医療課事務連絡「治療用装具に係る療養費の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」(以下、「二〇二三年三月十七日の事務連絡」)が発出され、医師の指示により被保険者が当該の医療機関から直接購入した「既製品の治療用装具」であっても、義肢装具士が関与していない場合は「療養費の支給対象にならない」との説明を行っている。

以下、質問する。

質問1

二〇二〇年四月十四日の衆院厚生労働委員会において、政府参考人は、「二〇一八年二月九日の通知」の記述について、「御指摘の通知は、保険医から義肢装具士への指示を経ずに提供された治療用装具について療養費を支給することは適当でない旨を示したものでございますけれども、これは従来からの義肢装具士法上の解釈を明確化したということでございまして、取扱いについて変更したということではございません」と述べている。この「従来から」とは具体的にいつからなのか、明らかにされたい。また、「従来からの義肢装具士法上の解釈」が記載されている行政文書名(保存されている最も古いもの)とその内容を明らかにされたい。

回答(質問1 について)

 前段のお尋ねについては、義肢装具士法(昭和六十二年法律第六十一号)の施行の日(以下「施行日」という。)である昭和六十三年四月一日からである。

 また、後段のお尋ねについては、「義肢装具士法の施行について」(昭和六十三年四月一日付け健政発第一九九号厚生省健康政策局長通知)の「第五 義肢装具士の業務について」の記載のとおりである。

質問2

一九八八年四月一日発出の厚生省健康政策局長通知「義肢装具士法の施行について」(健政発第一九九号)に「義肢装具の採型適合等のうち、従来医師又は看護婦等のみができることとされていた医行為の範疇にわたるものについても、義肢装具士が診療の補助として行うことができるものとされたこと」と記述し、その「別記様式」で「私は、義肢装具士法附則第三条の趣旨が、これまで医療の現場において実際に適法に義肢装具の採型(採寸を含む。)、製作及び適合の業務を行ってきた者に、法施行後も継続して業務を行うことができるようにするために設けられた特例措置であることを理解し」と記述している。一九八七年に義肢装具士法が制定される以前も、治療を要する患者に対して、医師の指示のもと、装具製作者が「採型・採寸」を行い治療用装具が作製され、療養費が支給されてきた事実を認めるか。

回答(質問2 について)

 お尋ねについては、義肢装具士法の施行日前に、御指摘の「装具制作者」が医師の指示の下、同法第二条第三項の規定により義肢装具士が業として行うことができるとされている、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合(以下「義肢装具の製作適合等」という。)のうち、医行為(医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為をいう。以下同じ。)に該当しない行為を行った場合については、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第八十七条等の規定により、療養費の支給が行われてきたものと承知している。

質問3

一九八八年四月一日発出の「義肢装具士法の施行について」(健政発第一九九号)のうち、問二で引用した部分を踏まえれば、義肢装具士とは、「義肢装具の採型適合等のうち、従来医師又は看護婦等のみが」行っていた業務を行うことができる資格であり、義肢装具士法制定前に義肢装具製作者が「適法に義肢装具の採型(採寸を含む。)、製作及び適合の業務を行って」提供していた「治療用装具」に該当するものの提供業務については、義肢装具士法施行に伴って、資格の有無に関しては何ら影響を受けないのではないか。

回答(質問3 について)

 御指摘の「資格の有無に関しては何ら影響を受けない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、義肢装具の製作適合等のうち、医行為に該当する行為については、義肢装具士法の施行日前は、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)及び保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)の規定により、医師であれば医業として、看護師、准看護師、保健師及び助産師(以下「看護師等」という。)であれば診療の補助として行うことができることとされていたが、義肢装具士法の施行日以後は、義肢装具士についても診療の補助として行うことができることとなっており、一方で、医行為に該当しない行為については、同法の施行にかかわらず、従来より、医師、看護師等又は義肢装具士でない者であっても行うことが可能である。

質問4

二〇二〇年五月十三日の衆院厚生労働委員会において、厚生労働大臣は「医行為に該当するかについては、最終的には個別具体的な判断になりますけれども、一般的には、治療を要する患者の患部への義肢装具の採型、適合については、適切に行わなければ患者の患部に危害を及ぼすおそれがあると考えられるため、医行為に該当するというふうに考えているということであります。医行為に該当しない場合ももちろんあります」と答弁している。「治療を要する患者の患部への義肢装具の採型、適合」について、担当医が採型、適合による侵襲性がないと「個別具体的に判断」すれば「医行為に該当しない場合」にあたることとなるとしか考えられないが、それで良いか。

回答(質問4 について)

 ある行為が医行為に該当するか否かについては、御指摘の「侵襲性」の有無のみならず、その行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要があるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。

質問5

義肢装具士法は、治療を要する患者に対しての「義肢装具の製作適合等」の業務を義肢装具士に限るという、業務独占の法律であるか否かを明らかにされたい。

回答(質問5 について)

 お尋ねの「業務独占の法律」の意味するところが必ずしも明らかではないが、義肢装具の製作適合等のうち、医行為に該当する行為については、医師法、保健師助産師看護師法及び義肢装具士法の規定により、医師であれば医業として、看護師等又は義肢装具士であれば診療の補助として行うことができ、一方で、医行為に該当しない行為については、医師、看護師等又は義肢装具士でない者であっても行うことが可能である。

質問6

健康保険法で、療養費の支給・不支給要件として、「義肢装具士が患者への採型・採寸、装着又は販売等を行った治療用装具」であるか否か、に言及した規定等はあるのか。あるならば示されたい。

回答(質問6 から質問8 までについて)

 お尋ねについては、療養費の支給に当たって、支給対象となる行為の質の確保や支給の適正化を図るため、保険者が当該行為等の内容を確認し、必要と認めた場合に限り支給するといった、健康保険法第八十七条等の趣旨を踏まえ、義肢装具の製作適合等に当たって、医師が患者の状況を踏まえ、必要な行為を義肢装具士に対して指示し、その指示に基づき義肢装具士は、当該医師と連携しながら、御指摘の「既製品装具」の身体への適合等も含め、義肢装具の製作適合等を行うことで、その質を確保すること等とし、その一連の行為を保険者において確認し、必要と認めた場合に限り療養費を支給することとしたものであり、「保険医の判断よりも、義肢装具士の判断を上位に置くもの」との御指摘は当たらない。

質問7

「二〇二三年三月十七日の事務連絡」において、「保険医から義肢装具士への指示を経ずに患者が保険医療機関等で購入した既製品装具は、治療用装具療養費の支給対象とはならない」との記述がある。保険医が治療上必要であると認めているにもかかわらず、既製品装具の購入について、義肢装具士の関与がなければ、療養費の支給対象にならないとするのは、まったく理解できない。いったい、どの法律のどの条項を根拠としているのか、示されたい。

法的根拠を示せない場合は、保険医が治療上必要であると認めているにもかかわらず、既製品装具の購入について、義肢装具士の関与がなければ、療養費の支給対象にならないとするのは、どのような理由に基づくものなのか、示されたい。

回答(質問6 から質問8 までについて)

 お尋ねについては、療養費の支給に当たって、支給対象となる行為の質の確保や支給の適正化を図るため、保険者が当該行為等の内容を確認し、必要と認めた場合に限り支給するといった、健康保険法第八十七条等の趣旨を踏まえ、義肢装具の製作適合等に当たって、医師が患者の状況を踏まえ、必要な行為を義肢装具士に対して指示し、その指示に基づき義肢装具士は、当該医師と連携しながら、御指摘の「既製品装具」の身体への適合等も含め、義肢装具の製作適合等を行うことで、その質を確保すること等とし、その一連の行為を保険者において確認し、必要と認めた場合に限り療養費を支給することとしたものであり、「保険医の判断よりも、義肢装具士の判断を上位に置くもの」との御指摘は当たらない。

質問8

「二〇二三年三月十七日の事務連絡」において、「保険医から義肢装具士への指示を経ずに患者が保険医療機関等で購入した既製品装具は、治療用装具療養費の支給対象とはならない」との記述がある。保険医が治療上必要であると認めているにもかかわらず、既製品装具の購入について、義肢装具士の関与がなければ、療養費の支給対象にならないとするのは、保険医の患者に対する治療内容に関して、保険医の判断よりも、義肢装具士の判断を上位に置くものとなるのではないか。

回答(質問6 から質問8 までについて)

 お尋ねについては、療養費の支給に当たって、支給対象となる行為の質の確保や支給の適正化を図るため、保険者が当該行為等の内容を確認し、必要と認めた場合に限り支給するといった、健康保険法第八十七条等の趣旨を踏まえ、義肢装具の製作適合等に当たって、医師が患者の状況を踏まえ、必要な行為を義肢装具士に対して指示し、その指示に基づき義肢装具士は、当該医師と連携しながら、御指摘の「既製品装具」の身体への適合等も含め、義肢装具の製作適合等を行うことで、その質を確保すること等とし、その一連の行為を保険者において確認し、必要と認めた場合に限り療養費を支給することとしたものであり、「保険医の判断よりも、義肢装具士の判断を上位に置くもの」との御指摘は当たらない。