サプライチェーンにおけるウイグル人強制労働問題に関する質問主意書
英紙フィナンシャル・タイムズは、本年二月、欧州自動車グループの自動車数千台が、「中国西部」で製造された電子部品を使用していたとして、アメリカ合衆国(米国)のウイグル強制労働防止法に基づき、米国の港で輸入を差止められたと報じた。問題の電子部品は、間接的な納入業者が製造したものだったが、同自動車グループは、報道によるブランド価値の低下を含め、大きな損害を被った。
本職が副会長を務める人権外交を超党派で考える議員連盟は、本年二月二十二日の総会で、我が国企業を含む自動車業界大手が、中華人民共和国(中国)新疆ウイグル自治区で強制労働によって生産されたアルミニウムを使用した可能性を指摘されたことについて、深刻な懸念を持って議論した。
米国税関・国境取締局の発表によれば、ウイグル強制労働防止法が施行された令和四年六月から本年四月まで、同法に基づく輸入差止等の件数は約八千件(三十三億米ドル相当)で、そのうち約三千件は輸入不許可となっている。
中国当局によるウイグル人への人権侵害は、米国政府等からジェノサイド及び人道に対する罪に相当すると指摘されており、極めて深刻である。我が国企業のサプライチェーンにウイグル人強制労働が入り込むことは、当該企業にとって致命的であるばかりか、国際社会で我が国の人権への姿勢に疑問を抱かれる事態をも生じさせる。そこで質問する。
質問1
政府は、「サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の促進に関する日米タスクフォース」による日米政府間の情報共有を促進するなど、各国政府と情報共有を緊密化することで、ウイグル人強制労働に関与する現地企業の情報を収集し、これを我が国企業に積極的に提供すべきと考えるが、見解如何。
回答(質問1 について)
政府としては、御指摘の「サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の促進に関する日米タスクフォース」において、日米両国の取組等について情報交換を行っているほか、御指摘の「ウイグル強制労働防止法」に基づいて米国が公表する輸入禁止の対象事業者の一覧表等を含め、我が国企業に、ビジネスと人権に係る国際動向に関する情報提供を行っている。政府としては、引き続きこうした取組を行っていく。
質問2
サプライチェーンにおける人権尊重への取組は、企業によって真剣さが大きく異なる。そこで、ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議が令和四年九月に発表した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」の中の、「海外法制の概要」で紹介されているような、いわゆる人権デュー・ディリジェンス法を制定する必要があると考えるが、政府の見解如何。
回答(質問2 について)
政府としては、日本で事業活動を行う企業による国内外のサプライチェーン等における人権尊重の取組を促進するため、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(令和四年九月ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議決定)を策定し、周知に努めるなどしているところであり、法制の整備を含め、更なる対応については、国内外の議論の動向を踏まえつつ検討していく考えである。