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レアアースの開発に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 井坂信彦
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

東京大学などの調査により、東京都小笠原諸島の南鳥島周辺海底に、世界需要の数百年分のレアアースが存在すると判明した。レアアースは希土類の総称で、パソコンやスマートフォン、省エネ家電、電気自動車などのハイテク機器の製造に欠かせない。しかし現在、我が国ではそのほとんどを輸入に頼っており、その希少性から少量であっても積極的なリサイクルを進めているところである。

我が国ではこのレアアース資源に対し、海洋鉱物資源開発に向けた資源量評価・生産技術等調査事業や、大水深採鉱技術の開発に向けた技術的実証などに予算をつけて開発に取り組んでいる。また東京大学では、南鳥島レアアース泥を開発して日本の未来を拓くプロジェクトを立ち上げ、国産レアアース資源の開発に向けて寄付を募っている。

一方で専門家からは、成果が出るまで数十年かかる、採算コストが高く実現性は少ないといった意見もある。また、我が国はレアアースの約六割を中国から輸入しており、過去には実質的に輸出規制と思われる輸出の停滞も発生した。こうしたレアアースの産出国に対して、我が国にもレアアース資源があるということをアピールし、交渉材料にするだけなのではないかという懸念を持たれている。

政府は、今年度中にも試掘を始める予定であると報道されている。予算をかけて調査・開発に取り組む国策事業であり、実現すれば我が国が資源輸出国となる可能性がある重要なプロジェクトである。レアアース産出国に対するアピールだけでなく、実際に操業して生産できる体制を整えることが必要なことから、以下、政府の見解を伺う。

質問1

既に政府として予算がついて試掘などの調査が始まるが、東京大学が独自に資金集めをしているのはなぜか。政府が直接東京大学に予算を提供して調査を依頼するか、政府と連携した開発を進めるべきと考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問1 について)

 政府としては、第三期戦略的イノベーション創造プログラムの「海洋安全保障プラットフォームの構築」(以下「プロジェクト」という。)において、南鳥島海域のレアアースに着目した国産資源の開発を進めており、プロジェクトの実施に当たっては、研究開発のテーマについて情報提供を広く依頼し、その結果を整理してフィージビリティ・スタディを実施した上で研究内容を検討しているほか、プロジェクトの代表者を公募により選定するとともに、国立研究開発法人海洋研究開発機構を中心とした推進体制を構築したところである。東京大学については、こうした過程において直接の提案や関与がなかったため現在の推進体制には入っておらず、外部資金を獲得して独自の取組を進めているものと認識しているが、プロジェクト内で開催されている外部有識者による会議には同大学の関係者も参加しており、意見交換を実施してきたところであり、今後も必要な連携を図っていく。

質問2

現在は実証や調査を進めている段階であるが、操業するとなると、南鳥島沖までの人員の移動や生活空間の確保、機材や産出物の運搬、拠点の整備など、現地だけにとどまらない開発が必要になると思われる。操業開始はいつ頃を見込んでいるか、またそれに向けた拠点整備等の計画はできているか。

回答(質問2 について)

 まずはプロジェクトの最終年度である令和九年度までに、南鳥島海域において一定規模のレアアースが含まれる堆積物の採鉱、分離及び精製の技術実証を行う計画としており、その詳細については、現在、関係省庁や関係地方公共団体と調整を行っているため、お尋ねの「操業開始」の時期については現時点でお答えすることは困難であり、また、お尋ねの「拠点整備等の計画」については現時点ではない。

質問3

平成二十五年に東京大学などの研究チームが高濃度レアアースの存在を突き止めてから、十年以上が経過した。ここ数年は政府としても予算を組んで調査しているが、これらの調査結果から、どれくらいの埋蔵量が想定されていて、どのような成果を見込んでいるのか。

回答(質問3 について)

 お尋ねの埋蔵量及び成果については、経済安全保障上の理由から、お答えを差し控える。

質問4

操業開始から生産が進んでいき、採算が合うのはいつ頃を見込んでいるか。収支について見通しを計算しているか伺う。

回答(質問4 について)

 お尋ねについては、プロジェクトにおいて実施しているレアアースの生産に係る一連の技術実証を経て検討する必要があるため、お尋ねの「採算が合うのはいつ頃を見込んでいるか」については現時点でお答えすることは困難であり、また、「収支について」の「見通し」については現時点でお示しすることは困難である。

質問5

本州から約千八百キロメートル離れた海域で、水深約六千メートルの海底から泥を採掘するという作業を行うことになる。調査には水中ドローンの活用なども考えられている。安全性の確保が最優先となるが、作業や操業の危険性の認識と安全対策について、政府の見解を伺う。

回答(質問5 について)

 お尋ねについては、非常に深い海中での作業となるため、安全性を最優先で確保する観点から海中での作業は全て無人化された装置により行うこととしており、具体的には、周辺海域の調査には自律型無人探査機(以下「AUV」という。)を、船上と海底をつなぐパイプによる採鉱には遠隔操作型無人潜水機を、環境モニタリングには国内で開発された観測装置である「江戸っ子1号」をそれぞれ使って作業することを想定している。

質問6

日本のEEZ(排他的経済水域)内であるため、この埋蔵レアアースについては、我が国が開発・保存する権利を持つ。しかし、本州から約千八百キロメートルも離れているため、常時人員を配置する状況にない。外国の船舶によって資源を奪われる危険性についてどう考えているか。またその対策について、政府の見解を伺う。

回答(質問6 について)

 海洋鉱物資源の開発に当たっては周辺環境の監視が必須であり、決められた地点で観測を行う「江戸っ子1号」や、状況に応じ周囲を航行しながら観測を行うAUVも活用しながら周辺環境を監視することを想定している。これらの装置は、ビデオカメラによる撮影のほか、各種音響装置による観測も行う仕様であるため、仮に監視している海域において不審な船舶等が調査を始めた場合には察知できるようになっている。