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公立図書館の振興に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 早稲田ゆき
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

図書館法は、その第一条で「図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。」とされている。図書館の三要素は「人」「資料」「施設」とされるが、その最も重要な要は、選書やレファレンス(読書相談)にあたる「人」であると考えるが、近年、地方財政の状況悪化により、公立図書館の正規職員比率が低くなり、非正規雇用、指定管理者制度による委託化が進んできているので、地方自治の原則を踏まえつつも、国民の教育と文化の発展のためにナショナルミニマムを国が定めるべき観点から、以下質問する。

質問1

図書館法第十三条第二項において「館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、図書館奉仕の機能の達成に努めなければならない。」とされているところ、館長に司書資格は不可欠なのではないか。館長の司書資格を必須とするよう図書館法の改正が強く望まれるところ、その方向性のもとで、まずは図書館の設置及び運営上の望ましい基準(以下、「望ましい基準」という。)の「第二 公立図書館」の「一 市町村立図書館」の「4 職員」の「(一)職員の配置等」の1を「市町村教育委員会は、市町村立図書館の館長として、その職責にかんがみ、図書館サービスその他の図書館の運営及び行政に必要な知識・経験とともに、司書となる資格を有する者を任命するよう努めなければならない。」と改定すべきであり、そのために公開の有識者会議を立ち上げるべきではないか。

回答(質問1 について)

 図書館の設置及び運営上の望ましい基準(平成二十四年文部科学省告示第百七十二号。以下「望ましい基準」という。)においては、「市町村教育委員会は、市町村立図書館の館長として、その職責にかんがみ、図書館サービスその他の図書館の運営及び行政に必要な知識・経験とともに、司書となる資格を有する者を任命することが望ましい。」等と定められているところであり、公立図書館の館長の任命については、設置者である地方公共団体において、この規定や地域の実情等を踏まえて適切に判断されるべきものと考えており、望ましい基準について御指摘のような改正を行うことを前提とした「公開の有識者会議」を立ち上げることは考えていない。

質問2

現行の「望ましい基準」に基づいて、全国の自治体及び教育委員会に対し、公立図書館において専門的なサービスを実施するために必要な数の、司書資格を有する司書及び司書捕を確保するための積極的な採用及び処遇改善に努めなければならないことを、改めて周知徹底すべきではないか。また問一で述べた公開の有識者会議の立ち上げ自体が、その周知になると考えるが、いかがか。また館長職、司書職ほか図書館に従事する職員の、司書資格を有する割合の現状についてどのように考えるか。政府としての見解をあきらかにされたい。

回答(質問2 について)

 前段のお尋ねについては、望ましい基準においては、「市町村立図書館が専門的なサービスを実施するために必要な数の司書及び司書補を確保するよう、その積極的な採用及び処遇改善に努める」等と定められているところであり、文部科学省としては、望ましい基準の内容について、地方公共団体に対する各種会議等の機会を通じて周知を図ることとしており、今後とも、周知に努めてまいりたい。

 中段のお尋ねについては、一についてでお答えしたとおり、「公開の有識者会議」を立ち上げることは考えていない。

 後段のお尋ねについては、同省が令和五年に公表した令和三年度の社会教育統計によれば、公立図書館の専任の館長のうち司書の資格を有する者の割合は約三十八パーセントであり、館長以外の職員のうち司書の資格を有する者の割合は把握していないが、いずれにせよ、公立図書館の職員の任命については、設置者である地方公共団体において、望ましい基準の規定や地域の実情等を踏まえて適切に判断されるべきものと考えており、お尋ねについてお答えすることは差し控えたい。

質問3

現行の「望ましい基準」では、「第二 公立図書館」の「一 市町村立図書館」の「2 図書館資料」の(一)2において、「・・・また、郷土資料及び地方行政資料の電子化に努めるものとする」となっているが、平成二十四年に比べて世の中のICT化が格段に進んでいるにもかかわらず、予算規模の少ない自治体設置図書館ではなかなか地域資料や歴史文化資料のデジタル化とその提供が進んでいないのが実情である。

公立図書館が所蔵する貴重な地域資料や歴史文化財資料等が劣化したり紛失したりすることのないように、国立国会図書館による公立図書館への制度面及び技術面での支援がこれまで以上に手厚く実施されるよう、公立図書館にある地域資料や歴史文化資料のデジタル化とその公開について、国立国会図書館と連携しながら促進されるべきことを「望ましい基準」に明確に書き込む改定を行うべきではないか。

回答(質問3 について)

 望ましい基準においては、「郷土資料及び地方行政資料の電子化に努めるものとする」及び「図書館は・・・国立国会図書館・・・等との連携にも努めるものとする」と定められているところであり、御指摘の「地域資料や歴史文化資料のデジタル化とその公開」については、公立図書館において必要に応じて国立国会図書館との連携が図られているものと承知しており、お尋ねのように「国立国会図書館と連携しながら促進されるべきことを「望ましい基準」に明確に書き込む改定を行うべき」とは考えていない。

質問4

「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)の施行を踏まえた「望ましい基準」の改定にあたっては、障害者サービスも実際にそのサービスを行うのは現場の「人」であり、資料を整えるのも「人」であり、また、貴重な郷土資料や地域資料のデジタル化についても、読書バリアフリー法に対応したサービスが求められることになること、さらに図書館は、リーダーである館長のもと、専門職である司書職員がチームになって運営されるとき、最も効率的・効果的な成果をあげられることから、すでに問一及び問三で述べた内容の改定を含めるべきと考えるがいかがか。

また、改定とともに、「望ましい基準」における「障害者に対するサービス」について、国から十分な財政措置を行うべきではないか。

回答(質問4 について)

 前段のお尋ねについては、一について及び三についてでお答えしたとおり、お尋ねの「問一及び問三で述べた内容の改定」を行うことは考えていないが、「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(令和五年三月二十八日閣議決定)では、「図書館の健全な発展に資することを目的として、平成二十四年に策定された「望ましい基準」について、国は、関係者の意見を聴き、読書バリアフリー法やICTの急速な発展等を踏まえた見直しを検討する。」としており、文部科学省としては、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第四十九号)の施行等を踏まえ、望ましい基準の必要な見直しについて検討してまいりたい。

 後段のお尋ねについては、お尋ねの「国から十分な財政措置を行う」の意味するところが必ずしも明らかではないが、公立図書館に対しては、点字図書等を含め、図書や視聴覚資料の購入費等に係る地方財政措置が講じられているほか、同省においては、障害者による図書館の利用の促進のためのモデル事業等を実施しているところであり、引き続きこれらの取組を進めてまいりたい。

質問5

地方公務員の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員に関する調査結果(総務省)における令和二年四月一日現在の会計年度任用職員の職種別一覧表によると、会計年度任用職員全職種に占める人数割合では、保育所保育士が九・三%、図書館職員は二・九%であった。しかし、田中洋子編著の「エッセンシャルワーカー」(旬報社)によれば、令和二年に行った社会福祉施設等調査で、公営(公立)保育所における非常勤保育士は三万七千二百三十四人、二十八・四%であり、日本図書館協会の「日本の図書館 統計と名簿 二〇二三」によれば、図書館の職員の七十八%は非正規職員である。また、図書館友の会全国連絡会が実施した調査結果によると、調査した自治体の非正規率は平均三十二%であるが、それが図書館になると平均六十七%にまで上がることがわかっており、その多くが女性である。

統計や調査年度も異なるので、単純比較はできないものの、公立図書館の非正規職員の割合は、雇用者全体(三十六・九%)、あるいは自治体職員(三十・三%)の中でも際立って多く、会計年度任用職員の比率は約四十%と推定され、いわゆる資格職の保育士と比べても、図書館職員の非正規率は異常に高いといえる。

このように、直営の公立図書館の職員の多くが、非正規雇用の会計年度任用職員である実態が適切であるかどうかについて、政府の見解をあきらかにされたい。

回答(質問5 について)

 個々の職にどのような職員を任用するかについては、各地方公共団体において、対象となる職の職務の内容や責任などに応じて、任期の定めのない常勤職員や臨時・非常勤職員などの中から適切に選択されるべきものと考えており、お尋ねについてお答えすることは差し控えたい。

質問6

社会教育施設のうち、コンサートホールやスポーツ施設、美術館など、集客が期待でき、指定管理者が収受した施設の利用料金を指定管理者自身の収入とし、受託者の自主的な経営努力を促すことができる施設と異なり、図書館法に基づく図書館の運営には、無償原則が適用されることから、利潤追求を基本とする民間のノウハウが発揮しにくい特質を持っている。実際に令和三年度社会教育統計によると、公立図書館における指定管理者制度導入の割合は二割程度と、社会教育施設のうち公民館に次いで相対的に低い。また公立図書館への指定管理者制度の導入にあたっては住民による反対の声が上がるなど、社会教育施設の中でも指定管理者制度の導入がなじまないと評価できるのではないか。このことについて分析し、結果を周知するべきではないか。政府としての見解をあきらかにされたい。

回答(質問6 について)

 指定管理者制度については、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときに活用できる制度であり、個々の施設に対し、指定管理者制度を導入するかしないかを含め、幅広く地方公共団体の自主性に委ねる制度となっているところ、公立図書館における指定管理者制度の導入についても、設置者である地方公共団体において適切に判断されるべきものと考えており、お尋ねのように一概に「指定管理者制度の導入がなじまないと評価できる」とは考えておらず、「社会教育施設の中でも指定管理者制度の導入がなじまないと評価できる」「ことについて分析」することは考えていない。