緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業に関する質問主意書
緊急避妊薬のOTC化、薬局販売については、骨太の方針二〇二一にも掲げられ、緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業も二年目に入ったが、本年六月五日の衆議院厚生労働委員会における武見大臣の答弁においても、「令和六年度も事業を確実に継続をして、こうした論点というものの検討をより確実に続けていくべき」とされ、OTC化に向けた道筋は一向に示されなかった。このままでは、骨太の方針はかけ声倒れとの評価が世間に定着するだけである。そこで以下質問する。
質問1
私が先般資料要求してあきらかになった、調査事業初年度の結果としての十六歳から十七歳五件、十八歳から十九歳百九十六件という十代の回答者数をどのように評価するのか。英仏独では緊急避妊薬は若者に無料、今般カナダでも無料化が進む。性暴力の有無を問わず、若い世代の緊急避妊薬へのアクセスを改善することが、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の観点から必要なのではないか。政府としての見解をあきらかにされたい。
回答(質問1 の前段について)
お尋ねについて、御指摘の「調査事業」においては、十八歳及び十九歳の「回答者数」に限定した評価は実施されていないが、十六歳及び十七歳の「回答者数」が少ないことについては、当該事業においては御指摘の「緊急避妊薬」を十六歳及び十七歳の者に販売するに当たり、保護者の同伴や、薬剤師による年齢の確認を要しているところ、当該同伴がなかったり、当該確認ができなかったこと等により販売に至らなかったことが主な原因と考えている。
回答(質問1 の後段について)
お尋ねについて、御指摘の「若い世代」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、その範囲が、御指摘の「調査事業」が対象としている十六歳以上の世代と解すれば、御指摘のように「緊急避妊薬へのアクセスを改善する」ことは、「SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の観点から」も必要であると考えている。
質問2
本年六月十日に民間団体が主催し、厚労省の担当課長以下も出席した院内集会において発表されたアンケート調査によれば、試験販売での購入を試みた十代から五十代の六十八人のうち、じつに八十五%の五十八人が買えなかったと回答した。そしてその理由として、対応している薬局が限られていて近くにないことや、購入までの手順の多さがあげられた。一方、薬局で購入できた十人は、全員が四十八時間以内に飲むことができたとの回答であり、またアンケートに答えた九十四%が「対象薬局が増えてほしい」と回答している。この結果について、政府としての見解をあきらかにされたい。
回答(質問2 について)
御指摘の調査については、民間団体が独自に行った調査であり、政府として見解を述べることは差し控えたい。
質問3
試験販売のwebサイトについて、インターネット上の検索で見つけるのが難しい上に、なんとかwebサイトにたどり着いても、当初よりは若干改善されたものの、依然としてその文面や構成が、不測の事態に直面して混乱しているはずの当事者にとって非常にわかりにくい。二年目となる今年度、当事者の立場に立った更なるwebサイトの改善が必要と考えるがいかがか。少なくともgoogle検索で「緊急避妊薬」と「薬局」のクロス検索をすれば上位に表示されるようにするべきではないか。また六月十日の集会でも主催者から提案されたように、試験販売を実施していない薬局においても、ポスターを貼るなどの周知徹底策を講じるべきではないか。政府としての見解をあきらかにされたい。
回答(質問3 について)
御指摘の「webサイト」については、厚生労働省が公益社団法人日本薬剤師会(以下「日本薬剤師会」という。)に委託して実施している令和五年度の「緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業」(以下「令和五年度調査事業」という。)及び令和六年度の「緊急避妊薬の適正販売に係る環境整備のための調査事業」(以下「令和六年度調査事業」という。)の一環として、これまでも必要に応じ改善を行ってきたところではあるが、引き続き、日本薬剤師会とも連携の上、御指摘の「検索」に係る検討も含め、不断の改善を図ってまいりたい。また、御指摘のように「試験販売を実施していない薬局においても、ポスターを貼るなどの周知徹底策を講じる」ことについては、「試験販売を実施していない薬局」において「緊急避妊薬」が購入可能であるとの誤解を招き、御指摘の「調査事業」が適切に実施できなくなるおそれがあることから、慎重な検討が必要と考えている。
質問4
十代など潜在的ニーズの把握に向けて、販売しなかった、また販売できなかった事例についても、薬局にアンケートでの回答を求めるべきではないか。政府としての見解をあきらかにされたい。
回答(質問4 について)
令和五年度調査事業においては、御指摘のような「販売しなかった、また販売できなかった事例」のうち十六歳及び十七歳に係るものについて薬局からの回答を通じて把握しており、その主な原因については、一の前段についてで述べたとおりである。令和六年度調査事業においても、引き続き、販売に至らなかった事例について適切に調査してまいりたい。
質問5
調査事業二年目の薬局数は六月二十日から三百四十六に増えるとの報道があるが、全国六万余ある薬局数からいえば、微々たる増加に過ぎず、とてもアクセスが向上したとは言えない。二年度目の期間中、さらに薬局数を増やすことを検討すべきではないか。その際、休日・夜間対応を参加条件から外すべきではないか。政府としての見解をあきらかにされたい。
回答(質問5 について)
御指摘の「二年度目の期間中、さらに薬局数を増やすこと」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、令和六年度調査事業においては、令和五年度調査事業から参加薬局数を増やして実施することを検討中である。また、「休日・夜間対応を参加条件から外すべきではないか」とのお尋ねについては、これらの事業に参加する薬局自らが「休日・夜間」に販売しない場合であっても、「休日・夜間」にも電話対応し、参加薬局における購入を案内できる体制を構築すること等をもって参加条件を満たすこととする等、柔軟な対応を行っており、御指摘のように「休日・夜間対応を参加条件から外すべき」とは考えていない。
質問6
協力薬局選定のプロセスにおいて、事業協力を得られる産婦人科医の内諾を得ることがそもそも事業エリア選定の条件となっており、産婦人科医が決まってから薬局選定を行うと現場からは聞いているが、これは事実か。
また、産婦人科医がなかなか決まらない課題があると聞いており、その点について医師会、産婦人科医会からの産婦人科医への周知および協力依頼が必要と考えるが、これについてどのように行っているか。政府として承知していることをあきらかにされたい。
回答(質問6 について)
前段のお尋ねについては、御指摘のような「産婦人科医が決まってから薬局選定を行う」事例は具体的には承知していないが、令和五年度調査事業及び令和六年度調査事業においては、「近隣の産婦人科医、ワンストップ支援センターとの連携体制を構築可能」であることを参加する薬局の要件としているため、参加薬局は地域における産婦人科医との連携が必要である。
後段のお尋ねについて、御指摘のような「産婦人科医がなかなか決まらない」という事例は具体的には承知していないが、当該連携体制の構築については、令和五年度調査事業を実施する日本薬剤師会が公益社団法人日本医師会及び公益社団法人日本産婦人科医会に対して、協力依頼を行っていると承知している。
質問7
緊急避妊薬のオンライン処方に係る調剤研修はどのエリアでもほぼ満席だが、いずれも会場での開催であり開催頻度も限られていると聞いている。研修を受けた薬剤師が対応するという条件を研究事業で定めている以上、研修をオンライン化し、いつでも学べるよう、e−ラーニング化することが必要ではないか。このことについて、政府として日本薬剤師会に要請するべきではないか。
回答(質問7 について)
御指摘の「緊急避妊薬のオンライン処方に係る調剤研修」については、「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を踏まえた緊急避妊に係る診療の提供体制整備に関する薬剤師の研修について(依頼)」(令和二年一月十七日付け薬生総発〇一一七第七号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知)において、日本薬剤師会及び都道府県薬剤師会が実施することとし、実施する都道府県の薬剤師の希望者が参加できるよう最大限配慮するよう依頼しているところ、当該研修の方法については、一義的には、日本薬剤師会及び都道府県薬剤師会において、当該研修が効果的に実施されるよう検討されるものであり、また、オンライン等の方法により実施している事例もあると承知しているため、現時点では、御指摘のように「日本薬剤師会に要請するべき」とは考えていない。
質問8
本年八月には来年度の概算要求が行われることになるが、その際仮に令和七年度も調査事業の予算を計上したとしても、来年五月頃にはまとまるはずの二年目の調査結果次第では、令和七年度中にも調査事業を切り上げ、OTC化が実現することもありうると理解してよいか。
回答(質問8 について)
令和七年度以降の御指摘の「調査事業」の実施については、令和七年度予算の概算要求に向けて検討中であり、お尋ねについて、現時点で予断を持ってお答えすることは困難である。なお、御指摘の「OTC化」については、今後、令和五年度調査事業及び令和六年度調査事業の結果を踏まえて検討することになるが、いずれにせよ、御指摘の「緊急避妊薬」を必要とする方が入手し、適切に使用することが可能となるよう必要な対応を検討してまいりたい。