登記・供託オンライン申請システムの障害に関する質問主意書
登記・供託オンライン申請システム(以下、本件システムという)は、不動産登記申請、商業・法人登記申請、各種登記事項証明書発行等を行うことができ、国民の重要な財産である不動産の権利関係や会社設立等の経済活動の公示機能を取り扱うことから、大変重要なインフラである。
一方で、これまでも本件システムでは度々障害が生じており、その脆弱さが非常に懸念されてきた。
令和六年三月二十五日及び二十九日にも障害が生じた。二十九日の障害では、本件システムからオンラインで申請情報等を送信してもシステムに到達せず、受付できない状態となったため、本件システムの受付時間を通常より延長したが、それでも「同日二十時四十三分以降に送信された申請が、当該システムに二十一時までに到達せず、四月一日付けの受付扱い」となるという不具合が生じた。障害の影響により、本件システムのホームページではお知らせ情報の更新ができない状態となり、最終的には右ホームページの閲覧自体ができなくなった。年度末に発生したこの障害をめぐっては、司法書士等多くの実務家が、そのクライアントに実害が生じないよう大変な努力を払われたという。
令和五年十二月十一日にも障害が生じ、登記事項証明書等の発行ができなくなり、復旧まで三時間以上かかった。
令和二年一月六日にも障害が生じ、約八時間にわたって申請データの処理が先に進まず「受付完了」に遷移しなかった。この日は年明け最初の開庁日ということもあり、多くの会社設立登記が申請されたが、上記のトラブルの結果、登記申請者が遠方の法務局に実際に申請書類を持参する等予期せぬ対応を強いられた。
なお、本件システムのホームページには「登記・供託オンライン申請システムにおいて、申請等をすることができない障害が発生した場合であって、速やかにその復旧をすることが困難であると見込まれるときは、登記・供託オンライン申請システムの業務代行システムによる運用を行う」との記載があるが、過去、これら障害が発生した日に業務代行システムによる運用は発動されなかったようである。
直近でも、六月十四日に一部不動産登記の申請ができないという障害が本件システムにおいて再度発生しており、インターネットで検索すると検索候補に「法務局 システム障害 今日」が出てくるなど、人々の不信、不安が垣間見える。
今後IT化を政府が進める上で、不動産という高価な物の権利関係を公示し、また、会社設立等の経済活動を迅速かつ円滑に促進するために必要不可欠なシステムがこのように脆弱であることは取引の安全に差し障り、人々を不安にさせ、実際に権利関係の紛争を招きかねず、申請利用者すなわち権利関係者である国民に損害を生じさせかねない。システム障害によってそのような損害が生じた場合、責任の所在も不明である。
政府は、本件システム障害を現場の問題と過少に捉えるのではなく、度重なる障害により国民の権利が度々脅かされているとの認識を抱いて、不具合のない安定した登記・供託オンライン申請システムの構築にしっかり注力すべきである。また、仮にシステム障害が生じたとしても、速やかに代替する手段を提供すべきである。
そこで以下質問する。
質問1
本件システムにおける昨年度の一時間当たりあるいは一日当たりの申請件数の最高件数は何件か。
回答(質問1 について)
登記・供託オンライン申請システム(以下「本システム」という。)において、令和五年度における一時間当たりの最多の申請件数は、二万六千六百七十件である。
質問2
令和六年三月二十九日の障害発生時、申請件数は何件か。また、それは例年の年度末よりも多かったか。
回答(質問2 及び質問3 について)
お尋ねの障害発生時の申請件数や「来年度のピーク時の予測申請件数」を明らかにすることは、本システムのサービス提供を妨げる攻撃に悪用されるなど円滑なシステム運用に支障を及ぼすおそれがあるため、お答えすることは差し控えたい。
質問3
これまでも過去にシステム障害が生じていることから、来年度の申請件数ピーク時に備えて対策は進めているものと思うが、来年度のピーク時の予測申請件数を伺う。
回答(質問2 及び質問3 について)
お尋ねの障害発生時の申請件数や「来年度のピーク時の予測申請件数」を明らかにすることは、本システムのサービス提供を妨げる攻撃に悪用されるなど円滑なシステム運用に支障を及ぼすおそれがあるため、お答えすることは差し控えたい。
質問4
本件システムのトップページに掲載された令和六年四月一日付のお知らせには「年度末で多くの方がオンライン登記申請を予定されている中で、このような障害を発生させてしまったことにつきまして、改めて深くお詫び申し上げます。今後、このような事象が発生しないよう、引き続き必要な対策を行ってまいります。」とある。
ここにいう「必要な対策」とは具体的にどのようなものか。その対策の進捗状況、今後の進展についても伺う。また、対策検討の議論には実務家も交えることが必要と考えるが、そのような予定はあるか。
回答(質問4 について)
お尋ねの「必要な対策」として、本システムの負荷が高くなった場合には、法務局及び地方法務局における本システムの操作を抑止する措置を講ずることとしているほか、本システムの運用に用いる機器の増強等の改修を行うこととしており、その準備に着手したところである。
また、対策の検討に当たっては、日本司法書士会連合会及び日本土地家屋調査士会連合会と必要な意見交換を行うこと等を通じ、本システムの代表的な利用者の意見を踏まえることについても検討してまいりたい。
質問5
これまでの障害において「業務代行システム」を発動させていないとすればそれはなぜか。また、「業務代行システム」の整備状況、法務局窓口対応基準やマニュアルの準備状況について、現状を伺う。
回答(質問5 について)
本システムに障害が発生した場合に本システムに代わるものとして利用する「業務代行システム」は既に整備済みであるところ、これまでに同システムを利用しなかったのは、発生したシステム障害の内容や状況等に応じて総合的に判断した結果である。
また、お尋ねの「法務局窓口対応基準」の具体的に意味するところが明らかではないため、その準備状況についてのお尋ねにお答えすることは困難であるが、同システムの利用に関するマニュアルについては既に作成し、各法務局及び地方法務局に備え付けられている。
質問6
本件システムの障害発生を完全に防ぐことが難しいのであれば、安定的に申請を行えるよう、「業務代行システム」にとどまらず、代替手段の確保が必要と考える。すでに確保はされているか。代替手段が確保されているのであれば、今年三月の障害発生時に代替手段を提供しなかったのはなぜか。
回答(質問6 及び質問7 について)
お尋ねの「代替手段の確保」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、本システムに障害が発生した場合に本システムに代わるものとして利用することが予定されているシステムとしては、現時点では「業務代行システム」で十分であると考えている。
質問7
前質問に関し、確保されていない場合、今後確保するのか。政府の見解や検討状況を伺う。
回答(質問6 及び質問7 について)
お尋ねの「代替手段の確保」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、本システムに障害が発生した場合に本システムに代わるものとして利用することが予定されているシステムとしては、現時点では「業務代行システム」で十分であると考えている。