JASM及びTSMCの環境対策に関する質問主意書
経済産業省は、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律に基づき策定された特定半導体生産施設整備等計画において、二〇二二年六月十七日にJapan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(以下、JASM)及び台湾積体電路製造(以下、TSMC)に対し、最大四千七百六十億円の助成を決定し(認定番号:二〇二二半経第〇〇一号−一)、さらに二〇二四年二月二十四日には両社に対し、最大七千三百二十億円の助成を決定した(認定番号:二〇二三半経第〇〇三号−一)。
他方、半導体製造には大量の水と電気に加えて、様々な化学物質を使用することが指摘されている。この点、二〇二一年十月二十日付の財訊によると、TSMCの台湾における水の消費量は一日に二十万トンを超え、一年間で中規模のダムの全貯水量に匹敵する量を消費していると試算されている。また、二〇二三年七月九日付の自由財経は、TSMCの二〇二二年の電力消費量は、二百十・八億キロワット/時であり、台湾の全消費電力量の七・五%を占めていると報じている。さらに、二〇二二年五月十一日付の新新聞によると、半導体メーカーの多くは商業上の秘密を理由に、製造過程でどのような化合物を使用しているのかを公表しておらず、韓国の半導体メーカーでは外部に公表することを拒否している化学物質は、実際に使用している品目の二十九%から三十三%に上ると報じており、半導体工場から、未知の化学物質含め様々な有害物質が排出され、自然環境や人体に悪影響を及ぼすことが懸念される。
国民の税金を使って巨額の助成を行うからには、水不足や電力不足、さらには土壌汚染や水質汚染等の環境問題を引き起こさないよう、万全の対策をもって事業を進める必要があると考え、以下質問する。
質問1
二〇二二半経第〇〇一号−一及び二〇二三半経第〇〇三号−一によると、「TSMCは、国際的に評価されている環境対策の認証を保有」とあるが、TSMCが保有している国際的に評価されている環境対策の認証とは具体的に何を指すのか、政府の把握するところを答えられたい。
また、実際に熊本に工場を建設するのは、TSMCではなく、JASMであると認識しているが、JASMは環境対策の認証を保有していないのか。保有している場合には、どのような認証を保有しているのか、政府の把握するところを答えられたい。
回答(質問1 について)
お尋ねの「TSMCが保有している国際的に評価されている環境対策の認証」については、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limitedが取得しているISO一四〇〇一(平成八年に国際標準化機構が制定した環境マネジメントシステムに関する国際規格をいう。以下同じ。)を指しているものと認識している。
また、「JASMは環境対策の認証を保有していないのか」とのお尋ねについては、Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(以下「JASM」という。)は、令和六年五月末時点では、ISO一四〇〇一を取得していないものの、現在、取得に向けた取組を進めているものと認識している。
質問2
二〇二二半経第〇〇一号−一及び二〇二三半経第〇〇三号−一によると、「水・電気の供給状況が厳しい台湾で培ったノウハウを活かし、日本でも、法令遵守の基準以上にしっかりと取り組んでいく」とあるが、前述のようにTSMCは、台湾において大量の水・電気を消費する一方、例えば、二〇二一年の農業用灌漑水の枯渇や二〇二二年三月三日の大規模停電では、優先的に水・電力の供給を受けており、TSMC自体はほとんど影響を受けなかったとされる。TSMCの半導体製造が台湾の水・電気の需給をひっ迫させ、台湾市民に深刻な影響を与えながら、膨大な量の水と電力を消費し続けたとも考えられる。そこで、「台湾で培ったノウハウ」とは具体的に何を指すのか、TSMCは半導体の製造過程において、競合他社と比べて水・電気の消費量が少ないのか、政府の見解を答えられたい。
また、「日本でも、法令遵守の基準以上にしっかりと取り組んでいく」とあるが、遵守すべき法令とは何か。そして、同社のいう同基準以上の取組とは、具体的に何を指すのか、政府の把握するところを答えられたい。
回答(質問2 について)
お尋ねの「台湾で培ったノウハウ」については、半導体の製造装置から排出された水を半導体の工場内で循環させ、繰り返し使用した上で適切に処理して排水する取組等の環境を重視した対策を指すものであると認識している。
「TSMCは半導体の製造過程において、競合他社と比べて水・電気の消費量が少ないのか」とのお尋ねについては、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号)第十一条第三項に基づく認定に当たり、事業者に対して「水・電気の消費量」に関する事項の記載を求めていないことから、政府としては、これらの消費量の具体的な数値を把握しておらず、お答えすることは困難である。
お尋ねの「遵守すべき法令」については、下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)、地方公共団体の環境関連の条例等を指しているものと認識しており、また、お尋ねの「同基準以上の取組」については、半導体の工場の排水に含まれる一部の物質に関し、これらの法令で定められている物質毎の基準値よりも厳しい基準値を自主的に設けた上で、管理する取組を指しているものと認識している。
質問3
二〇二三半経第〇〇三号−一によると、「環境対策については、法規制対象の項目については、法規制と同等以上の基準を設けて排水を監視するとともに、法規制対象外の項目についても、サンプリングによる自主管理などを行い、操業に伴う大気や河川への影響を最小限に抑える取組を行っていく」とあるが、規制対象となる法及びその項目とは何か。また、同社のいう法規制と同等以上の基準及び、排水の監視、サンプリングとは具体的に何を指すのか、政府の把握するところを答えられたい。
回答(質問3 について)
お尋ねの「規制対象となる法及びその項目」については、下水道法、地方公共団体の環境関連の条例等において排水に係る基準値が定められている物質を指しているものと認識している。JASMにおいて、当該物質の一部については、二についてで述べたとおり、これらの法令で定められている物質毎の基準値よりも厳しい基準値を自主的に設けた上で管理を行っており、また、これらの法令で排水に係る基準値が定められていない物質についても、自主的に標本調査の対象として管理を行っており、これらの取組が、お尋ねの「同社のいう法規制と同等以上の基準及び、排水の監視、サンプリング」に当たるものと認識している。