全国中学校体育大会の規模縮小に関する質問主意書
令和六年六月八日、日本中学校体育連盟(中体連)は全国中学校体育大会(全中)の規模を、令和九年度から縮小することを明らかにした。夏季と冬季の十九競技のうち、水泳、ハンドボール、体操、新体操、ソフトボール男子、相撲、スキー、スケート、アイスホッケーの九競技が開催されなくなるという。
理由としては、少子化で部活動の設置率が低い競技が生じていること、夏季競技では暑熱対策が不可欠であること、大会運営に関わる教員の負担が大きいことなどが挙げられている。
しかし、令和四年十二月、学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドラインでは、少子化の中でも生徒がスポーツに継続して親しむことができる機会を確保することを目指し、大会参加資格を地域クラブ活動の会員等にも広げ、できるだけ教師が引率しない体制を整備し、運営に係る適正な人員を確保するよう求めている。これに対し、中体連は令和五年度から地域クラブの大会への参加を承認したとある。
つまり地域クラブの参加と協力を促すことで、大会運営や引率における教員の負担を軽減する方向性が示されているのである。
一方で中体連は、原則として部活動設置率が二十%未満の競技を縮減させるということである。設置率の問題でいえば、例えば水泳については設置率が低いのは当然である。学校プールが減少しているだけでなく、水を張る経費がかかり、屋外プールの場合は冬期の活動ができないなどの課題がある。こうしたことから、現在でも大会に登録する形式だけの部活動を設置して、実際にはクラブチームで練習しているという実態がある。顧問の教員は大会登録と引率だけという学校が多い。こうした実態を直視せず放置しておきながら、部活動設置率の高低で存廃を論じることは問題がある。今回の地域移行により、水泳はクラブチーム主導というようやく現実的な形になろうとしている段階で、全国大会を廃止するというのは、選手に対しあまりにも無責任であると考える。
今まさに部活動の地域移行が議論され、実際にクラブチームでの大会参加が進められている中、生徒たちの目標となる全国大会を廃止するというのは、スポーツを推進する政府の方針と反すると考えるので、以下、見解を伺う。
質問1
少なくとも、部活動の地域移行を進めて、地域クラブでの参加が増えるかどうか状況を確認してから大会の廃止・縮小を議論すべきと考えるが、政府の見解を伺う。
回答(質問1 及び質問5 について)
令和四年十二月にスポーツ庁及び文化庁において策定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(以下「総合的なガイドライン」という。)において、「全国大会をはじめとする大会等の在り方」として、「大会等の主催者は、・・・生徒にとってふさわしい全国大会の在り方や、適切な大会等の運営体制等に見直す」ことや、「全国大会の開催回数について、・・・種目・部門・分野ごとに適正な回数に精選する」こと等を示しており、公益財団法人日本中学校体育連盟(以下「中体連」という。)においては、総合的なガイドライン等を踏まえ、関係する競技団体と協議を重ね、一部の競技について当該競技団体が主催する大会に一元化していくことなどにより、全国中学校体育大会(以下「全中大会」という。)を、心身の負担が過重とならないなど生徒にとってふさわしいものとすべく見直しを図っているものと認識しており、文部科学省としては、中体連において引き続き適切に対応していただきたいと考えている。
質問2
大会運営の負担が厳しいというのであれば、大会の参加費の見直し、施設使用料の減免拡大、参加する地域クラブから運営の協力を得るなど、財政面・運営面の改善を行うべきと考える。政府は中体連に対して適切なアドバイスや支援を行っているか。
回答(質問2 について)
文部科学省では、これまでも、中体連に対して、総合的なガイドラインについて累次にわたり説明を行い、その中で、全中大会への出場を希望する御指摘の「地域クラブ」の実施主体に対し、出場要件として大会運営に審判員等として参画することを求める場合の対応などについて、示してきたところである。
質問3
教員が大会に引率をしなくて良いという方向性が出ている。教員の日程的な負担の軽減だけでなく、自治体としては出張旅費の負担も軽減できる。その分の費用を各スポーツの連盟・クラブチーム・選手個人に振り向け、大会の支援をするよう自治体に指導してはどうか。
回答(質問3 について)
御指摘の「出張旅費」については、教員以外の者が全中大会に出場する際の引率を行う場合であっても、地方公共団体の判断により支給しているものと承知しており、御指摘の「自治体としては出張旅費の負担も軽減できる」ことを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。
質問4
部活動設置率ではなく、実際の競技人口で大会の是非を論じるべきと考える。地域クラブによる大会参加を認めた現在、政府は部活動だけでなく地域クラブも含めた競技人口について改めて調査すべきと考えるが、政府の見解を伺う。
回答(質問4 について)
御指摘の「実際の競技人口」の指すところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「部活動設置率」は、中体連が実施した調査等を踏まえたものであり、全中大会を生徒にとってふさわしいものとすべく見直しを図る上でどのようなデータを活用するかは、主催者である中体連において適切に判断すべきものと認識しており、文部科学省としては、お尋ねのように「部活動だけでなく地域クラブも含めた競技人口について改めて調査すべき」とは考えていない。
質問5
そもそも大会の廃止・縮小ありきの議論になっている可能性があり、政府の方針として生徒がスポーツに継続して親しむことができる機会を確保する必要があると考える。政府は部活動の地域移行を進めつつ大会を廃止・縮小するという立場なのか、政府の見解を伺う。
回答(質問1 及び質問5 について)
令和四年十二月にスポーツ庁及び文化庁において策定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(以下「総合的なガイドライン」という。)において、「全国大会をはじめとする大会等の在り方」として、「大会等の主催者は、・・・生徒にとってふさわしい全国大会の在り方や、適切な大会等の運営体制等に見直す」ことや、「全国大会の開催回数について、・・・種目・部門・分野ごとに適正な回数に精選する」こと等を示しており、公益財団法人日本中学校体育連盟(以下「中体連」という。)においては、総合的なガイドライン等を踏まえ、関係する競技団体と協議を重ね、一部の競技について当該競技団体が主催する大会に一元化していくことなどにより、全国中学校体育大会(以下「全中大会」という。)を、心身の負担が過重とならないなど生徒にとってふさわしいものとすべく見直しを図っているものと認識しており、文部科学省としては、中体連において引き続き適切に対応していただきたいと考えている。