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学校のプールに関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 井坂信彦
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

スポーツ庁の体育・スポーツ施設現況調査報告によると、令和三年当時で、小学校の屋外プール設置率は八十七%、中学校は六十五%となっている。平成三十年は小学校が九十四%、中学校が七十三%であったことから、急激に減っていることが分かる。

学校プールが普及したのは、昭和三十六年に制定されたスポーツ振興法で国がプールの建築費に補助金を出したことがきっかけと言われている。その頃に建築されたプールが、築六十年前後となり改築を迫られている。大規模改修や改築費用は、一〜二億円とも言われており、各自治体は費用と効果を検討する中で、残念ながら廃止を選択してしまっていることが推測される。

またNHKの試算では、プールのランニングコストは水の入替え、薬剤、消耗費などで一校あたりワンシーズン、二百三十四万円と言われている。教職員にとっては、安全対策や水泳技術の指導だけでなく、水質検査や水質調整の実施、清掃、暑さ対策、児童生徒の着替えに関わるプライバシーへの配慮など、費用に現れない負担も大きい。

こうした状況の中、都市部の学校では、学校プールを屋内プールに改築し、授業で使用しない時期・時間帯は市民プールとして住民に開放する取組が進んでいる。また、自校にプールを持たない学校は、民間のスポーツジムなどのプールに出向いて授業を行う取組も増えている。屋内プールであれば天候に左右されることもなく計画的な時間割配分ができ、また教員以外の専門的な指導員による指導なども実施されている。

一方、地方では、近隣数校のうち一校だけプールを残して、複数の学校がそのプールを使用するという事例が発生している。自治体としての効率は良いが、移動時間がとられ授業時間が削られてしまったり、移動のバスの費用や交通状況による制約など、現場では難しい運営が行われている。

プールの設置や水泳の授業の在り方については、一義的には学校設置者である自治体の判断である。しかし、財政力や地域の状況によって、地域間格差が広がり過ぎてしまうと、義務教育としての統一性に問題が出てしまう。政府として、地域による教育格差が発生しないように、時代に合った学校プールの在り方や水泳教育の在り方を検討する必要があると考え、以下、見解を伺う。

質問1

学校プールを改築して市民プールとしても使用する場合、利用効率が上がるだけでなく、自治体全体として福祉の向上とコスト削減が図られる。自治体は教育委員会だけでなく、文化振興や地域振興といった部署と横串を通した施策展開を行っている。政府はこうした取組を教育・スポーツ分野だけでなく、福祉・健康・地域振興といった観点からも支援するべきと考える。今後、どのような支援を進めていくか、見解を伺う。

回答(質問1 及び質問2 について)

 スポーツ庁では、学校のスポーツ施設の老朽化への対応や地域において誰もが気軽にスポーツに親しむことができる場の形成といった観点も踏まえ、御指摘の「学校プールを改築して市民プールとしても使用する」こと並びに「学校のプールを廃止して他校のプールや民間のプールを使用する」こと及びこれに係る費用に関することも含めて、学校のスポーツ施設の在り方やその有効活用に関する調査を実施しているところであり、当該調査の結果を踏まえ、学校のプールの老朽化への対応について、各地方公共団体において地域の実情を踏まえた対応が可能となるよう、必要な検討を行ってまいりたい。

質問2

学校のプールを廃止して他校のプールや民間のプールを使用する場合、改築費が不要となる。民間プールの場合は委託費がかかるが、維持費・修繕費がかからない。国から自治体へ改築や修繕の補助金を出さなくなる分、委託費や移動に関わる費用について、政府が一部負担しても良いと考えるが、見解を伺う。

回答(質問1 及び質問2 について)

 スポーツ庁では、学校のスポーツ施設の老朽化への対応や地域において誰もが気軽にスポーツに親しむことができる場の形成といった観点も踏まえ、御指摘の「学校プールを改築して市民プールとしても使用する」こと並びに「学校のプールを廃止して他校のプールや民間のプールを使用する」こと及びこれに係る費用に関することも含めて、学校のスポーツ施設の在り方やその有効活用に関する調査を実施しているところであり、当該調査の結果を踏まえ、学校のプールの老朽化への対応について、各地方公共団体において地域の実情を踏まえた対応が可能となるよう、必要な検討を行ってまいりたい。

質問3

都市部では屋内プールに改築したり、民間のスポーツジムのプールを利用したりする取組が進む一方、地方では数校に一校のプールだけ改修して残し、複数校で共用する取組が進んでいる。こうした学校プールの地域間格差について、政府の見解を伺う。

回答(質問3 について)

 お尋ねの「学校プールの地域間格差」の意味するところが必ずしも明らかではないが、学校におけるプールの在り方については、各地方公共団体において、地域の実情に応じた検討が進められているものと承知している。

質問4

スポーツ庁は、官民連携による学校体育施設の有効活用等について、指定管理者の活用や民間プールの活用を、参考事例を示して推奨している。政府は、学校のプールの在り方について、参考事例を示すだけでなく、改築費・維持費や、時代状況等を踏まえて、国として今後の方向性と、自治体が取り組むメニューを示す必要があると考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問4 について)

 「改築費・維持費」「を示す必要がある」とのお尋ねについては、学校のプールの規模等は、学校ごとに異なることから、一律にお示しすることは困難である。

 「時代状況等を踏まえて、国として今後の方向性と、自治体が取り組むメニューを示す必要がある」とのお尋ねについては、その趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。

質問5

現状で、多くの公立中学校の水泳部は、夏の一時期しかプールが使えないため、大会に出場するために所属するだけの部活動になっている。部員の生徒は、実際にはスイミングクラブに通っていて学校で指導を受けていないことが多い。この問題は、部活動の地域移行で解決していくのかもしれないが、こうした現状も鑑みると、学校での水泳指導は競泳の観点よりも、水難対策の観点を強めるべきと考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問5 について)

 お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、例えば、小学校の体育科及び中学校の保健体育科においては、学習指導要領に基づき、体の調子を確かめてから泳ぐことや、プールなどの水泳場での注意事項を守って泳ぐことなどといった水泳の事故防止に関する事柄について必ず取り上げることとしているとともに、スポーツ庁においては、毎年度、各都道府県教育委員会等に対して通知を発出し、学校における水泳の事故防止のための指導を促しているところである。

質問6

大手おもちゃ会社の調査結果では、二十歳以上の日本人の六人に一人が泳げないということが分かった。周囲を海に囲まれ、河川の勾配もきつい我が国の国土では、水難事故が発生しやすい。そういった意味でも学校における水泳の指導は非常に重要で、特に水難対策には着衣泳を実施する必要がある。しかし着衣泳を実施するとなると、指導者の質の向上や、プールの水質が悪化してしまうことへの対策が必要になる。着衣泳を実施する負担を自治体に負わせるのではなく、政府が積極的に支援して着衣泳を促す必要があると考えるが、政府の見解を伺う。

回答(質問6 について)

 御指摘の「支援」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、スポーツ庁においては、着衣のまま水に落ちた場合の対処の仕方について、具体的な指導法や留意点等を示した指導の手引きを作成し、各都道府県教育委員会等に周知するなどの取組を行っているところであり、同手引きにおいて「指導上の留意点」として「プール水を汚さないため、着衣等は十分に洗濯したものや清潔なものを各自に用意させます。なお、プール使用の最終日や水の入れ替え直前などに着衣での水泳指導を実施するのも一つの方法です。」としているところである。