「出来高払制賃金」扱いすることによる残業代不払いに関する質問主意書
二〇二四年五月十五日、「株式会社サカイ引越センター」(以下、「サカイ」)の元社員三人が未払いの残業代などを求めた裁判で、東京高等裁判所は「会社は残業代の支払いを怠った」などとして一審に続き、合わせて千五百万円余りの支払いを命じる判決を言い渡した。
裁判における主な争点の一つは、「サカイ」が、業績給A(売上給)、業績給A(件数給)、業績給B、愛車手当、無事故手当の名目で支払っている賃金が、労働基準法施行規則第十九条第一項第六号の「出来高払制その他の請負制によって定められた賃金」(以下、「出来高払制賃金」)に該当するか、否かであった。
東京高裁判決は、「出来高払制その他の請負制」とは、「労働者の賃金が労働給付の成果に一定比率を乗じてその額が定まる賃金制度をいうものと解するのが相当であり、「出来高払制賃金」とは、そのような仕組みの下で労働者に支払われるべき賃金のことをいうと解するのが相当である」とし、「サカイ」が「出来高払制賃金」と主張した「業績給A(売上給)、業績給A(件数給)、業績給B、愛車手当、無事故手当」について、「出来高払制賃金」に該当するとは認めなかった。
「出来高払制賃金」は、通常の月給制とは残業代の計算方法が異なり、同じ労働時間数、同じ賃金額でも、月給制(割増率一・二五、基礎賃金につき所定労働時間で除する)より出来高払制(割増率〇・二五、基礎賃金につき総労働時間で除する)の方が残業代が低くなる仕組みとなっている。「サカイ」はこの仕組みを利用して、五つの手当について本来は「出来高払制賃金」に当たらないのに出来高払制と称して残業代を低く計算していた。
東京高裁が、会社側が「出来高払制賃金」と称しても労基法に沿って正当な残業代を払う必要があると判断したことは、見せかけの「出来高給(歩合給)」に歯止めをかける重要な判断である。
そこで以下、質問する。
質問1
実際は「出来高払制賃金」に該当しないにもかかわらず、事業者側が、「出来高払制賃金」扱いをして、残業代を低く計算している事案について、政府は把握し指導しているか。
回答(質問1 から質問3 までについて)
御指摘の「実際は「出来高払制賃金」に該当しないにもかかわらず、事業者側が、「出来高払制賃金」扱いをして、残業代を低く計算している事案」については、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十七条に規定する割増賃金の不払として同条に違反することになると考えられるところ、当該事案を区分して集計していないが、「令和四年労働基準監督年報(第七十五回)」の「定期監督等実施状況・法違反状況(令和四年)」によれば、令和四年の全国の労働基準監督署における「定期監督等」で同条の違反が認められた件数は、二万五百五十四件である。
また、御指摘の「行政上の措置」の具体的に意味するところが明らかではないが、労働基準監督署においては、御指摘のような事案を把握した場合も含め、事業場に対して監督指導を実施し、同条の違反が認められた場合には、使用者に対して、適切に賃金を支払うよう、その是正の指導等を行うこととしており、これらについては適切に行われていることから、御指摘のように「実態について調査」「すべき」とは考えていないが、いずれにせよ、引き続き、監督指導を徹底してまいりたい。
質問2
引越業界、運送業界等においては、「出来高払制賃金」に該当しないにもかかわらず、事業者側が、「出来高払制賃金」扱いをして、残業代を低く計算していることが広く行われているとの指摘がある。政府は、こうした実態について調査、把握すべきではないか。
回答(質問1 から質問3 までについて)
御指摘の「実際は「出来高払制賃金」に該当しないにもかかわらず、事業者側が、「出来高払制賃金」扱いをして、残業代を低く計算している事案」については、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十七条に規定する割増賃金の不払として同条に違反することになると考えられるところ、当該事案を区分して集計していないが、「令和四年労働基準監督年報(第七十五回)」の「定期監督等実施状況・法違反状況(令和四年)」によれば、令和四年の全国の労働基準監督署における「定期監督等」で同条の違反が認められた件数は、二万五百五十四件である。
また、御指摘の「行政上の措置」の具体的に意味するところが明らかではないが、労働基準監督署においては、御指摘のような事案を把握した場合も含め、事業場に対して監督指導を実施し、同条の違反が認められた場合には、使用者に対して、適切に賃金を支払うよう、その是正の指導等を行うこととしており、これらについては適切に行われていることから、御指摘のように「実態について調査」「すべき」とは考えていないが、いずれにせよ、引き続き、監督指導を徹底してまいりたい。
質問3
「出来高払制賃金」に該当しないにもかかわらず、事業者側が、「出来高払制賃金」扱いをして、残業代を低く計算することを防止するための行政上の措置について、政府は早急に検討すべきではないか。
回答(質問1 から質問3 までについて)
御指摘の「実際は「出来高払制賃金」に該当しないにもかかわらず、事業者側が、「出来高払制賃金」扱いをして、残業代を低く計算している事案」については、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十七条に規定する割増賃金の不払として同条に違反することになると考えられるところ、当該事案を区分して集計していないが、「令和四年労働基準監督年報(第七十五回)」の「定期監督等実施状況・法違反状況(令和四年)」によれば、令和四年の全国の労働基準監督署における「定期監督等」で同条の違反が認められた件数は、二万五百五十四件である。
また、御指摘の「行政上の措置」の具体的に意味するところが明らかではないが、労働基準監督署においては、御指摘のような事案を把握した場合も含め、事業場に対して監督指導を実施し、同条の違反が認められた場合には、使用者に対して、適切に賃金を支払うよう、その是正の指導等を行うこととしており、これらについては適切に行われていることから、御指摘のように「実態について調査」「すべき」とは考えていないが、いずれにせよ、引き続き、監督指導を徹底してまいりたい。