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神宮外苑開発に懸念を示した国連文書に対する日本国の削除要請文書に東京都文書をそのまま流用した件に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 長妻昭
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

本年五月末、国連人権理事会の作業部会が作成・公表した神宮外苑開発について懸念を示した見解(当該文書のパラグラフ五十七)に対して、日本国政府は反論文書(当該文書のGのパラグラフ二十三〜二十八)を作成し、その見解の全文削除を求めた。日本国政府の反論文書は、国連が日本国政府の反論文として公表している。すべて英文で公開されている。

国連が公表した神宮外苑開発に懸念を示した見解(当該文書のパラグラフ五十七)は外務省の日本語訳によると「五十七 利害関係者から提起された環境問題に対処するための既存の政府メカニズムの有効性については、懸念が残る。作業部会は特に、大規模開発計画に関する環境影響評価プロセスにおいて、住民協議が不十分であるという報告に対して深刻な懸念を表明する。利害関係者から提起された事例の一つが、人権に悪影響を及ぼす可能性のある神宮外苑地区再開発プロジェクトである。作業部会は、意味のある協議、特に気候変動によって不釣り合いな影響を受ける可能性のあるリスク集団やマイノリティ集団との協議が、国連ビジネスと人権指導原則の下で求められていることを強調する。」とある。

また、それに対する日本国政府の削除要請を含む反論文書(当該文書のGのパラグラフ二十三〜二十八)は、外務省の日本語訳によると「パラ五十七では、「利害関係者から提起された環境問題に対処するための既存の政府メカニズムの有効性についても懸念が続いている。特に、作業部会は、特に大規模な開発計画に関する環境影響評価プロセスにおける不十分な住民協議に深刻な懸念を表明している。」としているが、これは、民間の事業者による都市開発が人権を侵害しているという事実が現実に生じていることを前提としている。そのように一方的に前提を置くことは、公平性や中立性の点から認められない。特に、民間の事業者から意見を聴くことなく報告を取りまとめることは、手続き上に誤りがある。また、このパラ五十八は「その一例が、人権への悪影響が懸念される神宮外苑地区市街地再開発プロジェクトである。」としているが、この開発を行っている民間事業者はICOMOSが二〇二三年九月に出したヘリテージ・アラートについて、ICOMOSの指摘に対してデータを示して丁寧に反証した上で、事実からかけ離れており、多くの方の誤解を生みかねないとの指摘もしている。こうした、意見を踏まえることなく報告を作ることには大きな問題がある。環境影響評価プロセスについては、国の法令や東京都の条例に則り民間の事業者の調べた影響の内容を公表し、一般の方々から意見を聴く仕組みとしている。このため、「不十分な住民協議」との指摘は誤りである。また、都市計画の法令に基づく手続きでは、民間の事業者からの企画提案を踏まえた計画について公告縦覧を行うとともに、住民に説明を行うことをルールとしている。ヘリテージ・アラートに対する民間事業者からの見解の中でも、法令等に基づく説明会を六回実施し、さらに追加で任意の説明会を三回実施しているとの事実が述べられている。こうしたことから、パラ五十七の全文の削除を強く求める。」とある。

そこでお尋ねする。

質問1

外務省の説明では、日本国政府の当該反論文書は、東京都が作成した文書(英文)を一字一句変えずに、そのまま日本国の反論文として国連に提出したとのことだった。改めてこれは事実か、内閣の見解を問う。

回答(質問1 から質問3 までについて)

 御指摘の「依頼」及び「経緯や理由」については、令和六年六月十二日の衆議院外務委員会において、上川外務大臣が「地方自治体を含みます当事者の意見、これを幅広く聴取して、公正な立場から取りまとめられることが望ましいと考えておりまして、ビジネスと人権作業部会の報告書や作業部会の今後の活動がより多様な意見を反映し、その内容を一層充実したものにするとの観点から、それらを取りまとめて提出したものでございます。」及び「この報告書は、一当事者である東京都の意見聴取を行わない状況の中で作成されているということでございまして、外務省としては、東京都の意見を作業部会に伝達することによりまして、ビジネスと人権作業部会の報告書、また作業部会の今後の活動がより多様な意見を反映し、その内容を一層充実したものにするとの観点から、それらを取りまとめて提出したものでございます。」と答弁しているとおりである。御指摘の「変更」については、同日の同委員会において、同大臣が「外務省が取りまとめるに当たりましては、関係府省庁及び地方自治体によるコメントでありますが、これを、政府文書としてふさわしいものになっているかという観点から、体裁や、また文書の書き方などについて、必要に応じて編集を行っております」と答弁しているとおりである。政府から提出した文書を作成する検討過程のこれ以上の詳細については、国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における検討又は協議に関する情報であって、これを公にすることにより、率直な意見の交換や意思決定の中立性が損なわれるおそれがあるため、お答えすることは差し控えたい。

質問2

東京都作成文書を変更したのであれば、どの文言を変更したのか、お示し願いたい。

回答(質問1 から質問3 までについて)

 御指摘の「依頼」及び「経緯や理由」については、令和六年六月十二日の衆議院外務委員会において、上川外務大臣が「地方自治体を含みます当事者の意見、これを幅広く聴取して、公正な立場から取りまとめられることが望ましいと考えておりまして、ビジネスと人権作業部会の報告書や作業部会の今後の活動がより多様な意見を反映し、その内容を一層充実したものにするとの観点から、それらを取りまとめて提出したものでございます。」及び「この報告書は、一当事者である東京都の意見聴取を行わない状況の中で作成されているということでございまして、外務省としては、東京都の意見を作業部会に伝達することによりまして、ビジネスと人権作業部会の報告書、また作業部会の今後の活動がより多様な意見を反映し、その内容を一層充実したものにするとの観点から、それらを取りまとめて提出したものでございます。」と答弁しているとおりである。御指摘の「変更」については、同日の同委員会において、同大臣が「外務省が取りまとめるに当たりましては、関係府省庁及び地方自治体によるコメントでありますが、これを、政府文書としてふさわしいものになっているかという観点から、体裁や、また文書の書き方などについて、必要に応じて編集を行っております」と答弁しているとおりである。政府から提出した文書を作成する検討過程のこれ以上の詳細については、国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における検討又は協議に関する情報であって、これを公にすることにより、率直な意見の交換や意思決定の中立性が損なわれるおそれがあるため、お答えすることは差し控えたい。

質問3

東京都に反論文を依頼したか否か。作成を依頼したとすれば、どなたが、どのような経緯や理由から依頼したのか、お示し願いたい。

回答(質問1 から質問3 までについて)

 御指摘の「依頼」及び「経緯や理由」については、令和六年六月十二日の衆議院外務委員会において、上川外務大臣が「地方自治体を含みます当事者の意見、これを幅広く聴取して、公正な立場から取りまとめられることが望ましいと考えておりまして、ビジネスと人権作業部会の報告書や作業部会の今後の活動がより多様な意見を反映し、その内容を一層充実したものにするとの観点から、それらを取りまとめて提出したものでございます。」及び「この報告書は、一当事者である東京都の意見聴取を行わない状況の中で作成されているということでございまして、外務省としては、東京都の意見を作業部会に伝達することによりまして、ビジネスと人権作業部会の報告書、また作業部会の今後の活動がより多様な意見を反映し、その内容を一層充実したものにするとの観点から、それらを取りまとめて提出したものでございます。」と答弁しているとおりである。御指摘の「変更」については、同日の同委員会において、同大臣が「外務省が取りまとめるに当たりましては、関係府省庁及び地方自治体によるコメントでありますが、これを、政府文書としてふさわしいものになっているかという観点から、体裁や、また文書の書き方などについて、必要に応じて編集を行っております」と答弁しているとおりである。政府から提出した文書を作成する検討過程のこれ以上の詳細については、国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における検討又は協議に関する情報であって、これを公にすることにより、率直な意見の交換や意思決定の中立性が損なわれるおそれがあるため、お答えすることは差し控えたい。

質問4

なぜ日本政府として全文削除を求めたか。その理由を具体的にお示し願いたい。

回答(質問4 及び質問6 について)

 日本政府が国際連合人権高等弁務官事務所に提出した本件に関する文書(以下「文書」という。)については、令和六年六月六日の参議院外交防衛委員会において、政府参考人が「神宮外苑部分についての意見は東京都が検討、作成いたしました。」と答弁しているとおりであるところ、外務省においては、お尋ねの「具体的にどこが事実とかけ離れているのか」といった詳細については確認していないものの、御指摘の「神宮外苑開発」に係る事業の認可を行った東京都が文書のパラグラフ二十三から二十八までのとおり考えていると認識したため、東京都の作成した御指摘の「全文削除を求め」る記載を含む文書を提出したものである。

質問5

令和六年六月六日参議院外交防衛委員会で、外務省政府参考人は、日本国が削除要求をした理由を問われて、「事実に反すると思われる内容が含まれていること」を挙げた。「事実に反すると思われる内容」とは具体的にどの部分なのか、お示し願いたい。

回答(質問5 について)

 「ビジネスと人権」作業部会の訪日報告書については、御指摘の「神宮外苑開発」に関する事項に限らず、ビジネスと人権に関して広く記載がされたものであるところ、令和六年六月六日の参議院外交防衛委員会における政府参考人の「報告書における懸念、指摘事項の中には、我が国の取組について事実に反すると思われる内容や一方的な主張が含まれることから、日本政府として、国内の多様な意見を伝達する観点から、国連人権高等弁務官事務所に文書を提出いたしました。」との答弁は、「神宮外苑開発」以外の事項に関する我が国の取組について事実に反すると思われる内容があることも文書を提出した理由であることを説明したものである。

質問6

日本国の反論文の中で、ユネスコの諮問機関イコモス(ICOMOS)の指摘に対して「事実からかけ離れている」との記述をしている。具体的にどこが事実とかけ離れているのか、具体的にお示し願いたい。

回答(質問4 及び質問6 について)

 日本政府が国際連合人権高等弁務官事務所に提出した本件に関する文書(以下「文書」という。)については、令和六年六月六日の参議院外交防衛委員会において、政府参考人が「神宮外苑部分についての意見は東京都が検討、作成いたしました。」と答弁しているとおりであるところ、外務省においては、お尋ねの「具体的にどこが事実とかけ離れているのか」といった詳細については確認していないものの、御指摘の「神宮外苑開発」に係る事業の認可を行った東京都が文書のパラグラフ二十三から二十八までのとおり考えていると認識したため、東京都の作成した御指摘の「全文削除を求め」る記載を含む文書を提出したものである。

質問7

過去、国連の指摘に対して、日本政府が反論文書を作成する際に一字一句、自治体の文書を採用したことはあるのか。

回答(質問7 について)

 御指摘の「国連の指摘」の具体的に意味するところが明らかではなく、「日本政府が・・・一字一句、自治体の文書を採用したことはあるのか」とのお尋ねについてお答えすることは困難である。

質問8

自治体の文書をコピーアンドペーストし、そのまま流用して、日本国政府の主張とすることはあまりに無責任と考えるが、見解をお示し願いたい。

回答(質問8 及び質問9 について)

 御指摘の「一方的に日本国政府の主張とする」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、文書の提出については、外務省において、一から三までについてで述べたところを踏まえて行ったものであり、「あまりに無責任」との御指摘は当たらないものと考えている。

質問9

特に東京都は開発を認めた立場であり、その主張を一方的に日本国政府の主張とすることについて適切と思われるのか。内閣の見解をお示し願いたい。

回答(質問8 及び質問9 について)

 御指摘の「一方的に日本国政府の主張とする」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、文書の提出については、外務省において、一から三までについてで述べたところを踏まえて行ったものであり、「あまりに無責任」との御指摘は当たらないものと考えている。