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往診距離規制緩和等に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 緑川貴士
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

少子高齢化や人口減少が進む我が国において在宅医療の強化が一層重要となる中、政府は令和五年十二月二十八日、在宅医療における往診、訪問診療(以下、往診等)での距離要件に関する通知「疑義解釈資料の送付について(その六十三)」を発出し、医療機関の所在地と患家の所在地との距離が半径十六キロメートルを超えている(圏外)場合で、患者から依頼を受けた当該医療機関の医師の往診等について、当該患者が圏内で受診又は相談等を行っている医療機関や医師が不在な場合や、いても対応できなかったり、連絡がつかない場合等は「絶対的な理由がある場合」として報酬の算定が認められることとなった。

質問1

往診では、例えば、急な発熱や呼吸状態の悪化等の患者の急変や、がん患者の看取り等、緊急の対応が求められるが、圏内の医療機関で対応できないという確認を取る際、圏内に複数の医療機関が存在している場合もあり、確認に時間を要する。患者への対応が遅れてしまう可能性があることから、より迅速に確認を取れる仕組みを考える必要があるのではないか。政府見解を求める。

回答(質問1 について)

 御指摘の「医療機関で対応できないという確認」については、「疑義解釈資料の送付について(その六十三)」(令和五年十二月二十八日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡)において、「半径十六キロメートル以内にある、普段、受診や相談等をしている保険医療機関等に確認を行」うこととしているが、同事務連絡においては、「連絡がつかなかった場合」には、御指摘の「医療機関で対応できないという確認」を行ったものとする扱いとしていることから、当該「確認」に過度に御指摘のように「時間を要する」とは考えておらず、したがって、御指摘のように「より迅速に確認を取れる仕組みを考える必要がある」とは考えていない。

質問2

政府は、往診等を距離で規制する理由について「患者の急変時に緊急に往診するなど適切な医療を提供するには、医療機関と患者の家の距離が近いことが望ましい」と説明するが、「半径十六キロメートル」という数字の根拠は何か。

例えば、信号機の多い都市部に対し、比較的少ない過疎地域では一定時間に移動できる距離(時間距離)は都市部より長く、物理的距離による一律な規制には疑問がある。加えて、圏内に医療機関や医師が不在であったり、存在していても往診対応ができないケースは過疎地では特に多く、このような「絶対的な理由がある場合」を確認する煩雑な作業が発生しやすい。

地理や交通事情等が考慮されないのは非合理的であり、少なくとも物理的距離で規制するのであれば、過疎地域と都市部とを区別し、過疎地域での規制距離を長くする等、見直す必要があるのではないか。政府見解、対応を問う。

回答(質問2 の前段について)

 お尋ねの「数字の根拠」については、効率的な医療提供の観点、緊急時の対応、地域における他の施設との連携などによる適切な医療の提供等の観点から、保険医療機関の所在地と患家の所在地との間の距離を十六キロメートル以内としているところである。

回答(質問2 の後段について)

 御指摘の「地理や交通事情等」は、御指摘の「過疎地域」でも「都市部」でも様々であることから、御指摘のように「過疎地域と都市部とを区別し、過疎地域での規制距離を長くする等、見直す」ことは困難であると考えている。

質問3

往診を担う医療機関の負担は大きく、往診を「ボランティアのようなものだ」と話す医師もいる。特に過疎地域では、医師の高齢化や人手不足等により圏内の診療所が閉鎖になったり、圏外の医療機関でも往診対応が困難になっている所が増えている。不測時に患者の命を救う基盤を維持するために、高騰する医療資器材費、医師・看護師等の人件費等を含む支出を支える必要があり、往診の診療報酬の引上げが不可欠であると考える。政府の真摯な対応を求め、認識を問う。

回答(質問3 について)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、診療報酬改定に当たっては、医療経済実態調査により医業経営の実態を把握し、物価及び賃金の動向など医療を取り巻く諸状況を総合的に勘案するとともに、中央社会保険医療協議会の審議を踏まえ、人件費を始め必要な経費が確保されるよう努めているところ、令和六年度診療報酬改定において、御指摘の「往診の診療報酬の引上げ」については、地域における二十四時間の在宅医療の提供体制の構築を推進する観点から、診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号)別表第一区分番号C000の注9に規定する「在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院が、当該保険医療機関と連携する他の保険医療機関(在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院以外の保険医療機関に限る。)によって計画的な医学管理の下に主治医として定期的に訪問診療を行っている患者に対して、往診を行った場合」を評価する「往診時医療情報連携加算」を新設したところであり、また、御指摘の「高騰する医療資器材費、医師・看護師等の人件費等」への対応については、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた対応として、医療機関において、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の賃金の改善を実施している場合を評価する「外来・在宅ベースアップ評価料(?)」等を新設する等、物価及び賃金の動向、医療機関等の収支や経営状況等を踏まえ改定を行ったところであり、引き続き、適切に対応してまいりたい。

質問4

「令和六年度診療報酬改定」において往診に関する評価が見直され、普段から訪問診療を行っている患者等以外の患者に対する緊急往診の診療報酬の大幅な引下げが行われた。かかりつけ医の機能強化や、在宅医療の質の向上をはかるための見直しである反面、かかりつけ医が常時訪問診療を行いながら急な往診にも対応することは非常に困難であり、従来これを補完する形で対応してきた往診専門機関では、同改定の下げ幅では事業を継続できないと判断して撤退した所もある。在宅医療の質の向上をはかるというが、在宅医療提供がかえって困難になる地域が増える懸念があり、逆行するものではないか。政府見解を問う。

回答(質問4 について)

 令和六年度診療報酬改定においては、御指摘の「往診に関する評価」については、患者の状態に応じた適切な往診の実施を推進するとともに、質の高い在宅医療提供体制の構築を推進するために、三についてでお示しした「往診時医療情報連携加算」によっても評価する等の対応を含め、行ったものであり、御指摘のように「在宅医療提供がかえって困難になる地域が増える懸念があり、逆行する」ものとは考えておらず、引き続き、当該体制の構築を推進してまいりたい。

質問5

在宅歯科医療においては、様々な病気の予防、全身の健康につながる口腔ケアが重要であり、歯科衛生士は高齢者施設や災害現場等でも活躍の場が広がっているが、全国歯科衛生士教育協議会によれば、令和四年度の歯科衛生士の求人倍率は二十三倍以上で、人材確保が急務となっている。待遇改善をはかる等の離職防止策に加え、歯科衛生士の資格を持つ人で実際に働いている人の割合は半分に満たず、離職者の復職支援が課題となっている。政府対応を伺う。

回答(質問5 について)

 歯科衛生士に係る御指摘の「離職防止策」及び「離職者の復職支援」については、厚生労働省において、「歯科衛生士の人材確保実証事業実施要綱」(平成二十九年四月二十八日付け医政発〇四二八第十六号(令和六年六月十九日最終改正)厚生労働省医政局長通知)に基づく「歯科衛生士復職支援・離職防止等研修指導者養成研修事業」により、「地域で中核を担う研修指導者や臨床実地指導者等の人材を育成するため、研修会やワークショップを全国四地区程度で実施する」とともに、「雇用主として求人を行う歯科医療機関の就業に係る知識・意識を高めることを目的として、歯科医療機関の管理者や復職相談等を受ける者に指導を行う人材を育成するための研修を実施する」こととし、また、同要綱に基づく「歯科衛生士技術修練部門運営事業」により、「歯科衛生士が復職する際の技術修練及び新人歯科衛生士が技術修練を行う教育機関(歯科衛生士学校養成所等)に対して技術修練部門の運営に係る費用を支援する」こと等としており、さらに、令和六年度診療報酬改定において、歯科衛生士等も含む医療従事者の人材確保や賃上げに向けた対応を行うこととし、歯科医療機関において、勤務する歯科衛生士等の賃金の改善を実施している場合の評価の新設等を行ったところであり、引き続き、適切に対応してまいりたい。