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太陽光発電所建設に係る景観に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 馬場雄基
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

太陽光発電は脱炭素社会実現に向けた重要な要素であり、発電コストのさらなる低下のために、多くの事業者の参入が求められているが、一方で、大規模太陽光発電所(いわゆる「メガソーラー」。)の建設による自然環境破壊や、土砂災害の発生などの問題も発生している。先般も、福島県福島市にある百名山の一つ吾妻山に建設中の大規模太陽光発電所による景観破壊が、新聞紙上で大きく報道されたところである。このケースでは、環境アセスメントにおいて、経済産業省が「景観への影響は、実行可能な範囲内で低減が図られていると考えられる」と評価し、その後の県による林地開発許可手続においては、景観は許可要件に含まれなかった。その結果、現時点ではJR福島駅新幹線ホームから地肌がむき出しになった造成地があらわになっている状況をはっきりと視認できる状態になっている。吾妻山の大規模太陽光発電所建設の経緯について、環境省、経済産業省、林野庁から受けた説明を総合すると、大規模太陽光発電所建設における環境アセスメントに景観の要素は入っているものの、実態としては、残置森林の割合が基準を満し、稜線に影響を与えなければ現行法上は特に問題なく、それ以上の規制は、景観法に基づいて、地方自治体の条例や計画を定めるしかない、とのことである。そこで、以下、質問する。

質問1

「景観」という用語は、景観法をはじめ、法令上も多数用いられているが、「景観」の法律上の定義は何か。

回答(質問1 について)

 お尋ねの「景観」の定義については、我が国の現行の法令において規定しているものはないが、一般に、景色や眺めをいうものと承知している。

 なお、法令においては、様々な語を組み合わせて条文とすることにより、規範としての一定の意味内容を表しているところ、そこで用いられる個々の語については、お尋ねの「景観」のように、その意味が日本語として一般に理解されるものである限り、その一つ一つについて定義をして用いているものではない。

質問2

山林における大規模太陽光発電所建設に際して、現行の関係法令によって、自然景観を守ることができると考えるか。政府の所見を問う。

回答(質問2 について)

 お尋ねの「自然景観を守る」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、現行の関係法令の下で、次のように、お尋ねの「山林における大規模太陽光発電所」の「建設に際して」景観に著しい影響を及ぼすことがないよう適切に配慮されることが確保されると考えている。

 例えば、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)においては、同法第五条第一項に規定する地域森林計画の対象となっている同法第二条第三項に規定する民有林において、事業者が同法第十条の二第一項に規定する開発行為に該当するお尋ねの「大規模太陽光発電所」の「建設」を行おうとするときは、当該事業者は、同項の規定に基づき、都道府県知事の許可を受けなければならないこととされている。都道府県知事は、当該許可の申請があった場合において、同条第二項第三号の「森林の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがある」場合に該当すると認めるときは、当該許可をしてはならないこととされており、同号の解釈については、「開発行為の許可基準等の運用について」(令和四年十一月十五日付け四林整治第千百八十八号林野庁長官通知)において、「景観の維持に著しい支障を及ぼすことのないように適切な配慮がなされており、(中略)適切な措置が講ぜられることが明らかであること」等と示している。また、都道府県知事は、同法第十条の三の規定に基づき、森林の有する公益的機能を維持するために必要があると認めるときは、同法第十条の二第一項の規定に違反する等した当該事業者に対し、当該建設の中止を命じ、又は期間を定めて復旧に必要な行為をすべき旨を命ずることができる。

 自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)においては、例えば、御指摘の「山林」が同法第二条第二号に規定する国立公園として指定された地域に含まれる場合に、同法第二十条第三項に規定する特別地域内において、事業者が同項第一号に掲げる行為に該当するお尋ねの「大規模太陽光発電所」の「建設」を行おうとするときは、当該事業者は、同項の規定に基づき、環境大臣の許可を受けなければ、当該建設をしてはならないこととされている。また、同法第三十三条第一項に規定する普通地域内において、事業者が同項第一号に掲げる行為に該当するお尋ねの「大規模太陽光発電所」の「建設」を行おうとするときは、当該事業者は、同項の規定に基づき、当該建設の内容等について、同大臣に対し届け出なければならず、同大臣は、同条第二項の規定に基づき、風景を保護するために必要があると認めるときは、当該事業者に対して、その風景を保護するために必要な限度において、当該建設を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置を執るべき旨を命ずることができる。

 環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)においては、事業者が同法第二条第二項第一号ホに掲げる事業に該当するお尋ねの「大規模太陽光発電所」の「建設」の事業を行おうとするときは、当該事業者は同法第十二条第一項の規定に基づき、環境影響評価(同法第二条第一項に規定する環境影響評価をいう。以下同じ。)を行わなければならないこととされている。当該事業者が環境影響評価を実施するに当たっては、同法第二条第一項の規定に基づき、事業の実施が環境に及ぼす影響について環境の構成要素に係る項目ごとに調査、予測及び評価を行うとともに、事業に係る環境の保全のための措置を検討しなければならないところ、「環境影響評価法の規定による主務大臣が定めるべき指針等に関する基本的事項」(平成九年環境庁告示第八十七号)別表において、当該項目の一つとして景観が記載されており、事業の実施により景観に影響を及ぼす場合には、当該事業者において、景観に係る環境影響評価を行うことが想定されている。また、当該事業者は、同法第十四条第一項の規定に基づき、当該環境影響評価の結果に係る事項を記載した同項に規定する環境影響評価準備書を作成しなければならず、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第四十六条の十一の規定に基づき、当該環境影響評価準備書を経済産業大臣に届け出なければならないこととされている。同大臣は、同法第四十六条の十四第二項の規定に基づき、環境大臣の意見を聴いた上で、同条第一項の規定に基づき、関係都道府県知事等の意見を勘案し、景観を含む環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため必要があると認めるときは、当該事業者に対し、当該環境影響評価について必要な勧告をすることができる。

 景観法(平成十六年法律第百十号)においては、同法第八条第二項第一号に規定する景観計画区域内において、事業者が同法第十六条第一項第二号に掲げる行為に該当するお尋ねの「大規模太陽光発電所」の「建設」を行おうとするときは、当該事業者は、同項の規定に基づき、当該建設の内容等について、同法第七条第一項に規定する景観行政団体の長に届け出なければならないこととされている。当該景観行政団体の長は、同法第十六条第三項の規定に基づき、当該建設が当該景観行政団体が同法第八条第一項の規定に基づき定めた景観計画に定められた同条第二項第二号の行為の制限に適合しないと認めるときは、当該事業者に対し、当該建設に関し、必要な措置を取ることを勧告することができる。また、当該建設が同法第十七条第一項に規定する特定届出対象行為に該当する場合には、当該景観行政団体の長は、同項の規定に基づき、良好な景観の形成のために必要があると認めるときは、当該事業者に対し、当該景観計画に定められた同法第八条第四項第二号イの形態意匠の制限に適合させるため必要な限度において、当該建設に関し、必要な措置をとることを命ずることができる。