在日米軍基地から排出されたPCB含有機器の処理に関する再質問主意書
二〇二四年五月二十四日に提出した「在日米軍基地から排出されたPCB含有機器の処理に関する質問主意書」では、米軍基地に起因するPCB含有機器の処理について質問を行った。これに対し、二〇二四年六月四日に受領した同質問主意書に対する答弁書(内閣衆質二一三第一〇一号。以下「先の答弁書」という。)において、「建物ごと引き受けた」ことは、いわゆるPCB特措法第十七条で禁止されているPCB廃棄物の譲渡し及び譲受けには当たらないなどとして、PCB含有機器の処理を日本側が負担していることなどの答弁があった。先の答弁書を踏まえ、改めてPCB含有機器の処理に関し、以下の事項について答えられたい。
質問1
先の答弁書「一の1について」では、木原防衛大臣の二〇二四年五月十三日の決算行政監視委員会第二分科会での答弁における「状況の変化が生じた」と判断した時期及び根拠について、二〇〇四年十二月に中間貯蔵・環境安全事業株式会社(以下「JESCO」という。)においてPCBの処理が開始したこと等を踏まえた、としている。一方、同じ答弁中、木原大臣は「米国防省は、二〇〇二年に、在日米軍の施設・区域にある全てのPCB廃棄物については米国に搬出して処理、廃棄する方針を決定した」と承知していると述べるとともに、「返還前の在日米軍施設・区域における工事に伴い発生したPCB廃棄物について日本側が処理を行ったことが確認できる初めての事例」は「二〇一八年度の岩国飛行場及び佐世保海軍施設の提供施設整備事業」であったとしている。したがって、二〇〇二年には米国に搬出して処理、廃棄する方針であった在日米軍の施設・区域にあるPCB廃棄物の処理について、二〇一八年の時点では日本側が引き受けることになっていたことになる。それらを踏まえて、以下の問いに答えられたい。
ア 在日米軍の施設・区域にあるPCB廃棄物の処理を日本側が引き受けることになった時期及びそれらを合意した機関・協議等の名称
イ 在日米軍の施設・区域にあるPCB廃棄物の処理を日本側が引き受けた際、JESCOを所管する環境省も日本側としてそれらを合意した機関・協議等に参加していたのか。参加していた場合は当時の環境省の見解を、参加していない場合はその理由を示されたい。
回答(質問1 について)
在日米軍施設及び区域の返還前に同施設及び区域で確認した、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成十三年法律第六十五号。以下「特別措置法」という。)第二条第一項に規定するポリ塩化ビフェニル廃棄物(以下「PCB廃棄物」という。)の処理を最初に行ったのは、防衛省が把握している限りにおいては、平成三十年度の提供施設整備に係る事業である。これに係る米国政府との具体的な協議の詳細については、御指摘の「合意した機関・協議等」を含め、公にすることにより、同国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあること等からお答えすることは差し控えたいが、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第二十五条1の規定に基づき設置された合同委員会(以下「合同委員会」という。)等様々な場で、外務省、環境省、防衛省等関係省庁で連携しつつ、環境対策が実効的なものとなるよう取り組んでいるところである。
質問2
先の答弁書「一の2について」では、「米国政府との具体的な協議の詳細については、これを公にすると同国政府との信頼関係が損なわれるおそれがある」としている。日米間の合意の有無、合意した時期及び合意した機関・協議等の名称については、先の答弁書中の「具体的な協議の詳細」には当たらず、米国政府との信頼関係が損なわれるおそれはないものと考えるが、政府の見解を示されたい。
回答(質問2 について)
御指摘の「日米間の合意の有無、合意した時期及び合意した機関・協議等の名称」を含め、日米間の協議内容や合意事項に関する内容を日米両政府の同意なく公にすることは、日米両政府間の取決め又は国際慣行に反し、米国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあると認識している。
質問3
先の答弁書「二について」では、米側の「PCB廃棄物の目録の有無、現有総量」について「日本政府として現時点において把握していない」としている。その上で「合同委員会等様々な場で、外務省、環境省、防衛省等関係省庁で連携しつつ、環境対策が実効的なものとなるよう取り組んでいる」としているが、米側のPCB廃棄物の量や目録の有無を把握しないまま、環境対策に取り組んでも実効的なものにすることはできないのではないか。政府の見解を示されたい。
回答(質問3 について)
日本政府としては、御指摘の「米側のPCB廃棄物の量や目録の有無」に関する情報の把握を含め、米国政府との間で、合同委員会等様々な場で、外務省、環境省、防衛省等関係省庁で連携しつつ、環境対策が実効的なものとなるよう取り組んでいるところである。
質問4
先の答弁書「三の1について」では、「日米地位協定に基づく対応とは認識していない」として、二〇〇二年当時の米側によるPCB廃棄物の処理・廃棄方針は日米地位協定に基づくものではなかったとしている。一方、日本政府は、PCB廃棄物の処理費用については先の答弁書において、「日米間の協議の結果」、日米地位協定第二十四条2の規定に基づき日本政府が負担してきたと答弁している。このように、当初は日米地位協定に基づかない事項とされていたものが、「日米間の協議の結果」として、日米地位協定を適用として日本側が費用負担するようになったものは他にあるのか。ある場合はその内容を示されたい。また、この答弁の「日米間の協議」とは日米合同委員会を指すのかどうか、協議の場を明示されたい。
回答(質問4 について)
御指摘の「当初は日米地位協定に基づかない事項とされていたものが、「日米間の協議の結果」として、日米地位協定を適用として日本側が費用負担するようになったもの」の意味するところが必ずしも明らかではなく、「他にあるのか」とのお尋ねについてお答えすることは困難であるが、提供施設整備及び米軍再編に要した費用については、日米間の協議の結果日米地位協定第二十四条2の規定に基づき、日本政府が負担してきたところである。また、日米間の協議は、合同委員会を含め様々な場で実施しているところである。
質問5
先の答弁書「四の1について」において防衛省が把握していると答弁のあった施設について処理量、種類、年月日を明らかにされたい。
回答(質問5 について)
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、先の答弁書(令和六年六月四日内閣衆質二一三第一〇一号。以下「前回答弁書」という。)四の1についてで述べた返還地を含む在日米軍施設及び区域の名称別のPCB廃棄物の種類、量及び埋立処分等の最終処分が終了した年月日についてお示しすると、次のとおりである。
三沢飛行場 変圧器等 約七トン 令和二年二月十五日
三沢飛行場 変圧器 約二トン 令和四年二月二十三日
横田飛行場 変圧器等 約一トン 令和二年二月十五日
横田飛行場 変圧器 約二トン 令和五年五月二十八日
旧府中通信施設 安定器 約〇・〇二トン 令和五年十一月二十日
旧深谷通信所 変圧器 約四十トン 平成二十九年一月十日
旧深谷通信所 安定器等 約一トン 令和五年七月二十六日
根岸住宅地区 変圧器等 約二十二トン 令和五年三月十七日
根岸住宅地区 安定器等 約一トン 令和五年八月二十二日
旧上瀬谷通信施設 コンデンサー等 約一トン 令和元年十二月二十四日
旧上瀬谷通信施設 コンデンサー 約一トン 令和二年一月二十九日
旧上瀬谷通信施設 汚染物 約〇・〇一トン 令和二年三月一日
旧上瀬谷通信施設 安定器等 約一トン 令和五年十月三十一日
旧上瀬谷通信施設 塗膜くず 約〇・〇二トン 令和六年三月五日
富士営舎地区 変圧器 約三トン 令和六年二月二十八日
岩国飛行場 変圧器等 約六トン 平成三十年五月十七日
岩国飛行場 変圧器等 約二トン 令和三年十一月十八日
佐世保海軍施設 変圧器 約五トン 平成三十一年一月十五日
佐世保海軍施設 変圧器 約二トン 令和五年三月十七日
旧知覧通信所 変圧器 約七トン 平成二十六年九月十九日
キャンプ・シュワブ 安定器 約〇・一トン 令和五年十二月二十八日
旧恩納通信所 汚泥 約百四トン 平成二十六年三月二十五日
トリイ通信施設 安定器 約一トン 令和五年十二月二十八日
トリイ通信施設 フィルター 約〇・一トン 令和六年二月二十九日
旧嘉手納飛行場 汚泥 約二百十八トン 平成二十九年三月十五日
嘉手納飛行場 変圧器等 約八トン 令和二年二月十七日
嘉手納飛行場 変圧器等 約一トン 令和三年二月十八日
嘉手納飛行場 変圧器等 約三トン 令和四年十月二十七日
嘉手納飛行場 変圧器 約五トン 令和六年一月二十九日
旧キャンプ桑江 安定器 約〇・五トン 平成二十四年三月三十日
旧キャンプ瑞慶覧 安定器 約四トン 平成二十八年十月二十九日
旧キャンプ瑞慶覧 変圧器 約一トン 平成二十八年十一月二十八日
旧キャンプ瑞慶覧 変圧器等 約六トン 令和四年一月十一日
キャンプ瑞慶覧 安定器 約一トン 令和五年十一月二十四日
キャンプ瑞慶覧 変圧器等 約四トン 令和六年三月二日
普天間飛行場 安定器等 約〇・四トン 令和五年十二月二十八日
旧牧港補給地区 安定器 約〇・〇三トン 令和三年一月七日
牧港補給地区 ケーブル等 約二十一トン 令和二年一月十一日
質問6
先の答弁書「四の2について」を踏まえて、以下の問いに答えられたい。
ア 答弁については、いわゆる廃掃法に基づく廃棄物として引き取った「建物」にPCB含有機器を発見し、日本側がPCB特措法に基づき廃棄した、との解釈でよいのか、政府の見解を示されたい。また、先の答弁書「四の1について」で回答された案件のうち、廃掃法を適用して処理した案件を明らかにされたい。
イ 今後も廃掃法を適用した処理を続けるのか、政府の考え方を示されたい。
ウ 民間による廃掃法を適用した処理についても、PCB特措法に規定される譲渡し及び譲受けには該当せず、PCB廃棄物の処理が可能と考えるのか、政府の見解を示されたい。
回答(質問6 のアの前段について)
御指摘の「建物」については、「いわゆる廃掃法に基づく廃棄物として引き取った」ものではないが、在日米軍から引き渡された建物の解体に伴って生じたPCB廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃掃法」という。)及び特別措置法に基づき処理したところである。
回答(質問6 のアの後段及びイについて)
前回答弁書四の1についてで述べた、返還地を含む在日米軍施設及び区域で確認したPCB廃棄物については、廃掃法及び特別措置法に基づき適切に処理したところであり、引き続き、廃掃法及び特別措置法に従って適切に処理する考えである。
回答(質問6 のウについて)
御指摘の「民間による廃掃法を適用した処理」の意味するところが必ずしも明らかではないが、PCB廃棄物については、特別措置法第十七条の規定によりその譲渡し及び譲受けが禁止されており、PCB廃棄物は、特別措置法第三条第一項に基づき、特別措置法第二条第五項に規定する保管事業者の責務として、廃掃法及び特別措置法に基づき処理されることが求められる。
質問7
先の答弁書「四の4について」では、PCB特措法第十七条において「建物の引渡しに際し、御指摘の「PCB廃棄物の有無を確認」することとはされていない」としているが、日本側によるPCB廃棄物の処理が続いている現状を鑑みると、確認すべきだったのではないか。政府の見解を示されたい。
回答(質問7 について)
御指摘の「建物の引渡しに際し・・・「PCB廃棄物の有無を確認」」しなかったことは、前回答弁書四の4についてで述べたとおり、特別措置法上義務付けられておらず、また、建物の引渡しに際し、在日米軍及び防衛省の間においてPCB廃棄物の有無を確認することとはされていないことから、必ずしも確認すべきものとは考えていない。
質問8
先の答弁書「四の5について」に関連して、在日米軍保有のPCB廃棄物の総量、独自に処理するとしていた方法とその量を米側に問い合わせるべきではないか、政府の認識を伺いたい。
回答(質問8 について)
お尋ねの「在日米軍保有のPCB廃棄物の総量、独自に処理するとしていた方法とその量」については、日本政府として現時点において把握していないが、これらの情報の把握を含め、米国政府との間で、合同委員会等様々な場で、外務省、環境省、防衛省等関係省庁で連携しつつ、適切に処理されるよう働きかけるなど、環境対策が実効的なものとなるよう取り組んでいるところである。