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新型コロナ・パンデミック対策の検証に関する質問主意書

会派 日本共産党
議案提出者 宮本徹
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

二〇二〇年一月からの新型コロナ・パンデミックへの取組を踏まえて、現在、「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の改定作業がすすめられている。

新型コロナウイルス感染症対策分科会会長をつとめた尾身茂氏は、著書「一一〇〇日間の葛藤」において、「次のパンデミックにより上手に対応するためには、今回の新型コロナ・パンデミックで政治家、自治体の長、行政官、保健所・医療関係者、専門家などがそれぞれいかなる判断で何を行い、どんな発言をしたのか等につき、公開されている資料等を基に、当事者はもとより第三者も入った客観的検証が求められる」と述べている。

現在、政府が進める「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の改定に向けた、「新型インフルエンザ等対策推進会議」での議論は、「感染症危機対応で把握された課題を踏まえ、次の感染症危機でより万全な対応を行うことを目指して対策の充実等を図るために行うもの」で、尾身氏の指摘しているような内容での「客観的検証」までは行われていない。

以上を踏まえ、質問する。

質問1

新型コロナ・パンデミック対策について、「今回の新型コロナ・パンデミックで政治家、自治体の長、行政官、保健所・医療関係者、専門家などがそれぞれいかなる判断で何を行い、どんな発言をしたのか等につき、公開されている資料等を基に、当事者はもとより第三者も入った客観的検証」を、政府の責任で行うべきではないか。

回答(質問1 について)

 御指摘の「当事者はもとより第三者も入った客観的検証」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、政府においては、令和元年十二月末以降の新型コロナウイルス感染症への対応(以下「新型コロナ対応」という。)に関する資料等について、地方公共団体、医療関係団体、感染症に係る危機管理の専門家等を構成員又は委員とし、令和四年に開催した新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)及び令和五年九月から開催している新型インフルエンザ等対策推進会議(以下「推進会議」という。)に提出し、両会議において、当該資料も踏まえつつ、経済団体等からのヒアリング等を含めて、新型コロナ対応における課題の整理等について議論が行われており、政府として、当該議論も踏まえながら、必要な法整備を行うとともに、「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(平成二十五年六月七日閣議決定(最終改定 平成二十九年九月十二日))の改定に向けた作業を進めているところである。

質問2

尾身茂氏は同著書の中で、「専門家と協議せず政府が同時に打ち出した」ものの例として、「全国臨時一斉休校」「アベノマスク」を挙げている。また「専門家が提案したが、政府が採用しなかった」ものの例として、「GOTOトラベル事業の開始時期」を挙げている。さらに、専門家が「提言したが実行が遅れた」例として、「GOTOトラベルの一時停止」「五輪無観客開催」を挙げている。

「全国臨時一斉休校」「アベノマスク」「GOTOトラベル」「五輪」について、政府による「当事者はもとより第三者も入った客観的検証」が必要ではないか。

回答(質問2 について)

 御指摘の「当事者はもとより第三者も入った客観的検証」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、政府においては、御指摘の「例」も含めた資料についても、有識者会議及び推進会議に提出し、一についてでお答えしたとおり、両会議において、新型コロナ対応における課題の整理等について議論が行われているところである。

質問3

尾身茂氏は同著書の中で、「「無症状の人でも感染させる」「呼気でも感染する可能性がある」。政府はこうした不都合な事実をそれに対する対策がない中で公表することには、国民に不要な不安を与えかねないという理由で示す傾向があった」と述べている。

エアロゾル感染は、新型コロナウイルス感染症の主要な感染経路である。感染経路を共通認識にすることは、感染対策の基本であり、こうした「不都合な事実」こそ、いち早く国民的に共有すべきであったのではないか。尾身茂氏が、指摘したこの点について、「当事者はもとより第三者も入った客観的検証」が必要ではないか。

回答(質問3 について)

 御指摘の「当事者はもとより第三者も入った客観的検証」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の点も含め、一についてでお答えしたとおり、有識者会議及び推進会議において、新型コロナ対応における課題の整理等について議論が行われているところである。

質問4

尾身茂氏は同著書の中で、「次のパンデミックに備えて、政府と専門家助言組織の在るべき姿についての議論が求められる」と述べた上で、政府と専門家助言組織の在るべき姿のポイントとして、「専門家が述べる医学的・技術的見地からの意見や提案を聞いた上で、政府は社会経済の状況や国民感情、財政事情なども総合的に勘案して最終的な判断を下す」「政府決定が科学的助言と相反する場合には、政府はその理由を公式に説明したり、その根拠を正確に提示したりする」「未知の感染症の対策についての科学的根拠は常に存在するわけではない。従って専門家は、情報や根拠が限られている場合でも一定の見解を提示する」と、三点を示している。

パンデミックにおける、政府と専門家助言組織の関係の在るべき姿について、政府はどのような議論をしているのか。また、政府と専門家助言組織の関係の在るべき姿について、尾身茂氏が著書で指摘している三つのポイントと同様の見解を持っているか、伺う。

回答(質問4 について)

 前段のお尋ねについて、御指摘の「政府と専門家助言組織の関係の在るべき姿」に関しては、令和四年六月十五日に有識者会議が取りまとめた「新型コロナウイルス感染症へのこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に向けた中長期的な課題について」において、「専門家の役割は科学的助言にあり、判断は政治と行政が行うことが適切である」と指摘されたほか、令和五年十二月十九日に推進会議から政府に提出された「新型インフルエンザ等対策政府行動計画の改定に向けた意見」においても、「科学的知識については、感染症危機が本質的に不確実性をはらんでいる「作動中の科学」であり、エビデンスのレベルにも濃淡があるものである。エビデンスが不十分な場合等であっても対応を行う必要があることなどについて、国民に対して十分に伝え切れていないことが、対策への理解や行動変容が十分なされなかったことにつながった」と指摘されており、政府としては、こうした指摘等を踏まえ、引き続き、推進会議の議論等を通じて、委員等の意見を伺いながら、「政府と専門家助言組織」の適切な役割分担も含め、新型インフルエンザ等対策政府行動計画の改定に向けた作業を進めているところである。後段のお尋ねについては、個人の著作における個別の記述に係るお尋ねについて、政府としてお答えすることは差し控えたい。