政府によるマイナ保険証推進と健康保険証廃止に関する質問主意書
岸田政権は、五月、六月、七月の三カ月間を「マイナ保険証利用促進集中取組月間」として取り組んでいる。マイナ保険証の利用者を増やした病院に最大二十万円、クリニックや薬局に最大十万円の一時金の支給も打ち出している。
こうした中、テレビ朝日の報道で、「処方せんと普通の保険証を出したら、処方せんは受け取ってくれたが、保険証は受け取ってくれなくて。薬局のスタッフから「普通の保険証の受付はできなくなりました」「マイナ保険証のみの受付になります。マイナンバーカードはお持ちですか」と。本当に苦しくて、薬が欲しかったので、しょうがなくマイナンバーカードを、そのときに初めて保険証と紐づけて、受け付けてもらいました。(マイナ保険証を)強制的に使わされた、紐づけさせられたというのが、ちょっと怒りを覚えています」との市民の声が報道された。
また、同じテレビ朝日の報道で「「次回からマイナカードじゃないと後回しになります」と言われた。自分が、一番、最初に来ても、そのあとにマイナカードを持っている人がどんどん来たら、自分は、段々、あとになる。ちょっとした嫌がらせをして(マイナ保険証を)作らせようとしているように感じました。行くのが嫌になっちゃいますけど、持病の特性上、その先生にはかかり続けないといけない」との市民の声も紹介されている。
医療機関・薬局が、マイナ保険証利用者を増やすために、このような言葉で、マイナ保険証でないと不利益が及ぶことを示唆し、患者に働きかけるのは、不適切である。
以上を踏まえて、質問する。
質問1
「普通の保険証の受付はできません」と医療機関や薬局が対応することは、違法ではないのか。政府は、そのような対応が許されないことを周知徹底すべきではないか。
回答(質問1 について)
御指摘の「医療機関や薬局」の「対応」は個別の事案に応じて様々であると考えられることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)第三条第一項又は保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十六号)第三条第一項に基づき、保険医療機関又は保険薬局(以下「保険医療機関等」という。)は、窓口において患者から療養の給付を受けることを求められた場合には、保険医療機関においては健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「法」という。)第三条第十三項に規定する電子資格確認(以下「電子資格確認」という。)又は患者の提出する被保険者証のいずれかによって、保険薬局においては法第六十三条第三項各号に掲げる病院若しくは診療所において健康保険の診療に従事している医師若しくは歯科医師が交付した処方箋、電子資格確認又は患者の提出する被保険者証のいずれかによって、それぞれ療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならないところ、保険医療機関等において、被保険者証による確認を拒否し電子資格確認を強制するようなことは、適切ではないと考えており、その旨を周知することについて検討してまいりたい。なお、デジタル庁のマイナンバー総合フリーダイヤルには、保険医療機関等の窓口において御指摘の「マイナ保険証」を利用させてもらえず、被保険者証の提示を求められた旨の相談も寄せられていることも踏まえ、電子資格確認を拒否し被保険者証による確認を強制するようなことも同様に適切ではないと考えており、併せてその旨を周知することについて検討してまいりたい。
質問2
合理的理由もなく、診察順序を受付順から入れ替えて、マイナ保険証利用者を優先にし、健康保険証利用者を後回しにするというやり方は、一般的に適切と言えるか。
回答(質問2 について)
御指摘の「合理的理由もなく」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、御指摘の「やり方」は様々であると考えられることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。なお、御指摘の「マイナ保険証利用者」については、保険医療機関等において、窓口での資格の確認等の受付事務を円滑に行うことができるため、御指摘の「健康保険証利用者」より後に受付を行った場合でも、早期に受付事務が完了した場合には、待合室の混雑の解消等のために、診察の順序を先行させることなどは想定される。
質問3
紹介した報道のような医療機関・薬局の対応の背景には、厚生労働省が、マイナ保険証の利用者を増やした病院等に一時金を支給することや、マイナ保険証の利用を増やすために窓口での声かけを徹底するため「トークスクリプト」という台本を配付していることがあるのではないか。事実であれば、即刻の見直しを求めるが、いかがか。
回答(質問3 について)
御指摘の「報道のような医療機関・薬局の対応」の詳細を承知していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。いずれにせよ、御指摘の「一時金を支給すること」や「「トークスクリプト」・・・を配付していること」は、「マイナ保険証」の利用を促進するために行っているものであり、「マイナ保険証」の利用を強制するようなものではないため、これらの見直しが必要であるとは考えていない。
質問4
マイナンバーカードの取得は任意であり、マイナンバーカードを保険証として利用するか否かも任意である。政府は、マイナンバーカードの取得を強制されている、あるいは、マイナ保険証の利用を強制されていると感じられるような窓口での働きかけが行われないような手立てを取るべきではないか。
回答(質問4 について)
保険医療機関等において、御指摘のように「マイナンバーカードの取得を強制」するようなことや「マイナ保険証の利用を強制」するようなことは、適切ではないと考えており、一についてで述べたとおり、周知することについて検討してまいりたい。
質問5
厚生労働省は?の公式アカウントで、工事現場に掲げるような黄色と黒色のストライプをつけて、「ご注意ください!本年十二月二日から現行の健康保険証は発行されなくなります」「マイナ保険証を基本とする仕組みに移行します。ぜひお早めに、簡単・便利なマイナンバーカードの保険証利用を始めてみてください」等と発信している。同様のチラシも、作成・配布されている。
「ご注意ください!」とあるが、そもそも何故に注意が必要なのか、意味不明である。厚生労働省の方針では、マイナ保険証がない方には、現在の健康保険証と同じ役割を果たす、資格確認書が発行されることが決まっている。「注意」しなくとも、マイナ保険証を持っていない方には自動的に資格確認書が届くので、十二月二日を境にした、不利益は生じないはずである。
1 厚生労働省が「ご注意ください!」とエクスクラメーションまでつけて、何のために注意を呼びかけているのか、その理由を明らかにされたい。
2 マイナ保険証がない方には、現在の健康保険証と同じ役割を果たす資格確認書が発行されることが決まっているが、これに触れていない理由を明らかにされたい。
3 このような厚生労働省の?の発信内容では、マイナ保険証がない方には、資格確認書が発行されることを記載していないために、不安が広がるだけではないか。資格確認証が発行されることを記さずに、健康保険証の廃止を宣伝するのは、やめるべきと考えるが、いかがか。
回答(質問5 の1について)
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、被保険者証については、令和六年十二月二日以降、新規に発行されなくなり、同日時点で有効な被保険者証についても、最大一年間の有効期限が切れると、患者は受診の際に被保険者証を利用することができなくなることから、当該期限について注意を呼び掛けるとともに、より多くの国民に御指摘の「マイナ保険証」を早期に利用していただくことを呼び掛けたものである。
回答(質問5 の2及び3について)
一般に、周知・広報においては、周知・広報に利用する媒体の性質や目的、利用される場面、分量の制約等に応じて、その内容を作成しているものであるところ、御指摘の「Xの公式アカウント」での発信や「チラシ」の配布は、五の1についてで述べたとおり、より多くの国民に「マイナ保険証」を早期に利用していただくことを主な目的として行ったものである。そのため、これらには、資格確認書について記載しなかったものであり、御指摘の「資格確認証が発行されることを記さずに、健康保険証の廃止を宣伝する」ことが不適切であるとは考えていない。なお、資格確認書については、御指摘の「Xの公式アカウント」での発信の際も、「マイナンバーカードを紛失・更新中の方やお手元にカードがない方などは、ご本人の被保険者資格の情報などを記載した「資格確認書」が無償交付される予定です」と記載した厚生労働省のウェブサイトへのリンクを併せて紹介するとともに、別途、同省において、令和六年十二月二日以降、「マイナ保険証」を保有していない方には、発行済みの被保険者証の有効期限が切れる前に、申請によらず「資格確認書」が交付されることを記載した医療保険者等向けのリーフレットを作成し、医療保険者等に対して、当該リーフレットを用いて加入者に対して周知広報を行うよう呼び掛けを行っており、必要な周知を行っているところである。