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有機フッ素化合物(PFAS)規制の遅れに関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 長妻昭
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

一万種類以上あるといわれる有機フッ素化合物(PFAS)のうち、日本では、二〇一〇年にPFOSが、二〇二一年にPFOAが、二〇二四年にPFHxSが、法律で、製造・輸入が禁止された。しかし、在庫の使用は禁止されていない。

環境省の見解(PFOS、PFOAに関するQ&A集 二〇二三年七月時点)としては、「PFOS、PFOAは、人においてはコレステロール値の上昇、発がん、免疫系等との関連が報告されています」とある。

二〇二三年十二月、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が定める、PFOSとPFOAに関する発がん区分が格上げされた。PFOAがグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に格上げとなり、PFOSもグループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に格上げとなった。

先進国ではPFASの規制強化の取組が進められているが、日本は後れを取っている。内閣は、国民の健康を守るという意識が希薄であるといわざるをえない。そこで以下、内閣にお尋ねする。

質問1

PFASは人体にどのような悪影響を及ぼすのか。現在、得られている知見を、PFOS、PFOA、PFHxSごとに、それぞれ、お示し願いたい。また、PFASを規制している先進国はどのような健康への悪影響を懸念しているのか、把握するところを、具体的にいくつかの国の事例をお示し願いたい。

回答(質問1 について)

 前段のお尋ねについては、ペルフルオロ(オクタン−一−スルホン酸)(以下「PFOS」という。)及びペルフルオロオクタン酸(以下「PFOA」という。)については、例えば、「PFOS、PFOAに関するQ&A集(二〇二三年七月時点)」(PFASに対する総合戦略検討専門家会議監修)において、「動物実験では、肝臓の機能や仔動物の体重減少等に影響を及ぼすことが指摘されています。また、人においてはコレステロール値の上昇、発がん、免疫系等との関連が報告されています。しかし、どの程度の量が身体に入ると影響が出るのかについてはいまだ確定的な知見はありません。」とされており、ペルフルオロ(ヘキサン−一−スルホン酸)(以下「PFHxS」という。)については、人体にどのような悪影響を及ぼすのか、現時点において必ずしも明らかではないと認識している。

 後段のお尋ねについては、御指摘の「PFASを規制している先進国」の意味するところが必ずしも明らかではないが、他国が「どのような健康への悪影響を懸念しているのか」については把握していない。

質問2

PFOSとPFOAのヒトの血中濃度の遵守すべき上限基準をつくるべきと考えるが、その予定はあるのか。

回答(質問2 について)

 政府として、現時点において、PFOS及びPFOAの血中濃度と健康影響との関係を評価するための科学的知見は十分でなく、また、国内でPFOS及びPFOAに関連した健康影響が生じているとの情報はないものと承知しており、お尋ねの「PFOSとPFOAのヒトの血中濃度」に係る「上限基準をつくる」予定はないが、最新の科学的知見の収集等に努めているところである。

質問3

国内でPFOSとPFOAの暫定目標値を超えた検出がなされた地域は全国で何か所あるのか。そのうち、東京都内の場所の地名と取られた対策について把握するところをお示し願いたい。

回答(質問3 について)

 お尋ねの「暫定目標値を超えた検出がなされた地域」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、環境省が令和六年三月に公表した「令和四年度公共用水域及び地下水のPFOS及びPFOA調査結果一覧」及び「令和五年度版化学物質と環境」において、「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の施行等について(通知)」(令和二年五月二十八日付け環水大水発第二〇〇五二八一号・環水大土発第二〇〇五二八二号環境省水・大気環境局長通知)において設定したPFOS及びPFOAに係る「指針値(暫定)」(以下「指針値(暫定)」という。)を超過した地点は、十六都府県における百十一地点である。そのうち、東京都内においては、文京区、大田区、世田谷区、渋谷区、練馬区、立川市、武蔵野市、府中市、調布市、日野市、国分寺市、国立市、狛江市、武蔵村山市及び西東京市において指針値(暫定)を超過しており、「PFOS及びPFOAに関する対応の手引き」(令和二年六月環境省水・大気環境局水環境課及び土壌環境課地下水・地盤環境室並びに厚生労働省医薬・生活衛生局水道課水道水質管理室作成)に基づき、関係地方公共団体において、指針値(暫定)を超過した水が飲用に供されないよう指針値(暫定)を超過した水が検出された井戸の所有者等に対し必要に応じて指導、助言等を行うなどの対応をしているところであると承知している。

質問4

PFOSとPFOAのヒトの耐容一日摂取量(TDI=環境汚染物質等の非意図的に混入する物質について人が生涯にわたって毎日摂取し続けたとしても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量)は、EU、米国、オーストラリアはじめ多くの先進国で定められている。日本では未だ定められていない。内閣府の食品安全委員会で議論されパブコメに付されていると聞いているが、年内には定めていただけるのかお教え願いたい。また、日本が後れをとっている理由をお示し願いたい。内閣は、後れていることに反省をしていただきたいと考えるがいかがか。また、なぜ、PFHxSに関してはヒトの耐容一日摂取量を定めることを見送るのか、お示し願いたい。

回答(質問4 について)

 PFOS及びPFOAの耐容一日摂取量については、食品安全委員会に設置した「有機フッ素化合物(PFAS)ワーキンググループ」(以下「ワーキンググループ」という。)が「(案)評価書 有機フッ素化合物(PFAS)」(以下「評価書案」という。)において案を示し、評価書案について令和六年二月七日から同年三月七日までパブリックコメントを実施し、現在、ワーキンググループにおいて評価書案の修正を検討しているところであり、現時点においてPFOS及びPFOAの耐容一日摂取量の設定の具体的な時期をお答えすることは困難である。

 御指摘の「日本が後れをとっている」及び「後れている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、PFOS及びPFOAの耐容一日摂取量については、先に述べたとおり、検討を進めているところである。

 また、PFHxSの耐容一日摂取量については、評価書案において「評価を行う十分な知見は得られていないことから、現時点では指標値の算出は困難であると判断した」と記載されているところであり、今後、同委員会において最終的な結論を得ることとしている。

質問5

現在、PFOSとPFOAの暫定目標値は公共用水域(河川、湖沼、港湾、沿岸海域、その他)、地下水、水道水に限られている。なぜ、飲料水、工場の排水、土壌には暫定目標値すらないのか。この暫定目標値を法律で取り締まることのできる、正式な目標値や環境基準値にする予定はあるのか。何時迄に定めるのか、お示し願いたい。先進国から相当後れをとっているが、内閣は国民の健康を守る気概があるのか、お尋ねする。

回答(質問5 について)

 御指摘の「法律で取り締まることのできる、正式な目標値や環境基準値」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「飲料水、工場の排水、土壌」中のPFOS及びPFOAへの対応については、PFOS及びPFOAの存在状況等について知見が十分ではないことから、関係府省庁が連携して、更なる科学的知見の集積を図るための必要な検討を行う考えであり、また、御指摘の「公共用水域(河川、湖沼、港湾、沿岸海域、その他)、地下水、水道水」中のPFOS及びPFOAの暫定目標値及び指針値(暫定)の取扱いについては、ワーキンググループにおける食品安全基本法(平成十五年法律第四十八号)第十一条第一項に規定する食品健康影響評価に関する調査審議や国内外の科学的知見、PFOS及びPFOAに関する諸外国の規制状況等を注視するとともに、専門家の意見も踏まえつつ検討している。

 御指摘の「先進国から相当後れをとっている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、これらの取組を通じて国民の健康の保護に努めてまいりたい。

質問6

現在実施されている子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)は、化学物質等の影響について、十万人の子どもを生まれる前から十八歳まで追跡調査するものである。そこにはPFOS、PFOA、PFHxSの影響調査も含まれているのか。また、東京都民は対象から除外されているが、それはなぜか。ぜひ、東京都民を含めていただきたいと考えるがいかがか。東京都民の調査をしないということであればその合理的な理由をお示し願いたい。

回答(質問6 について)

 御指摘の「子どもの健康と環境に関する全国調査」(以下「エコチル調査」という。)では、収集した生体試料について、PFOS、PFOA及びPFHxSについても化学分析を行い、子供の健康影響の指標との関連について研究を行っている。

 エコチル調査の参加者については、東京都を含む全国の大学等を対象とした公募により全国十五箇所のユニットセンター(「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)基本計画」(平成二十二年三月三十日環境省策定、令和五年三月三十日改定)のユニットセンターをいう。以下同じ。)を選定した上で、各ユニットセンターが公募時に設定した調査地区において参加者を募集し、追跡調査を行っているところ、当該公募において、東京都を調査地区とするユニットセンターは選定されず、結果として東京都における募集が行われなかったものであり、また、追跡調査であることから、参加者の追加も予定していない。