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自衛隊駐屯地が公道に向けて設置している看板に関する質問主意書

会派 立憲民主党
議案提出者 屋良朝博
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

二〇二四年六月二日の琉球新報の報道によると、陸上自衛隊与那国駐屯地では、開設した二〇一六年より、法的な根拠もなく駐屯地の柵に公道に向けて「撮影禁止」の看板を設置し、市民の表現を制限する内容の文言を掲示していることが明らかとなった。また、二〇二四年五月二十日の沖縄タイムスの報道によると、陸上自衛隊宮古島駐屯地においても、「固くお断り」という、撮影禁止と同趣旨の掲示がなされている。

これらに関連して、以下質問する。

質問1

与那国駐屯地及び宮古島駐屯地の施設管理権として、施設内での撮影を管理することは法的に可能と考えるが、他方で、公道における市民の行動を制限する根拠とはならない。両駐屯地において、施設外の公道に向けて撮影禁止の看板を設置し、公道における市民の行動を制限する法的根拠について、条文を示した上で、本件がこれに該当する理由を詳細に示されたい。

回答(質問1 について)

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、与那国駐屯地及び宮古島駐屯地における外部からの撮影を禁ずる旨の掲示については、駐屯地警備等の観点から、自衛隊施設の撮影を控えていただくことを期待して行っているものである。

質問2

政府は、「衆議院議員矢山有作君提出自衛官によつて写真撮影を妨害された事件に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一〇二第四一号)において、「各部隊等が、駐屯地警備等の観点から、外部からの写真撮影を禁ずる旨の掲示を行い、また、これらの掲示がない場合において写真撮影を差し控えるよう申し出ることがあるが、これらは、いずれも当該駐屯地等の施設等の写真撮影を差し控えるよう期待して行われるものであり、強制的なものとは考えていない」との見解を示している。現在もその見解に変わりはなく、今般の与那国駐屯地及び宮古島駐屯地における撮影禁止の看板の記載事項も強制的なものではないという理解でよいか。

回答(質問2 及び質問3 について)

 お尋ねのとおりである。

質問3

政府は、前述の答弁書において「各部隊等に対して写真撮影を行わないよう強制することはできない旨適宜指導している」としている。現在もその指導が行われているという理解でよいか。

回答(質問2 及び質問3 について)

 お尋ねのとおりである。

質問4

撮影行為を控えてもらうよう市民にお願いするにあたり、看板の記載を「お願い」ではなく、市民の表現の制限を強いる「禁止」又は「固くお断り」としたことは、お願いすることとは異なると考える。前述の答弁書にあるように、写真撮影の禁止は強制的なものではなく、かつ、禁止を強制できない旨の指導が各部隊等に対して現在も行われているとするならば、「禁止」又は「固くお断り」の文言を選択した理由は何か明らかにされたい。

回答(質問4 について)

 与那国駐屯地及び宮古島駐屯地における外部からの撮影を禁ずる旨の掲示は、強制的なものとは考えておらず、御指摘の「「禁止」又は「固くお断り」の文言」については、駐屯地警備等の観点から、自衛隊施設の撮影を控えていただくことを期待する趣旨で使用しているものである。

質問5

与那国駐屯地及び宮古島駐屯地以外の自衛隊駐屯地では、公道に向けて撮影禁止の掲示をしていない事例もある。報道されている両駐屯地以外で、現在、公道に向けて撮影禁止の表示を掲げている自衛隊施設があるか、把握している範囲で明らかにされたい。

回答(質問5 について)

 お尋ねについては、調査に膨大な作業を要することから、網羅的にお答えすることは困難であるが、御指摘の「両駐屯地以外」にも複数の駐屯地において外部からの撮影を禁ずる旨の掲示を行っていることを確認している。

質問6

撮影禁止に関する実務について

1 市民に撮影禁止を求めない駐屯地がある一方で、与那国駐屯地及び宮古島駐屯地の周辺の市民には撮影禁止を求めているが、なぜ地域によって対応が異なるのか説明されたい。また、両駐屯地に看板を設置した理由、経緯及び設置者をそれぞれ明らかにされたい。

2 看板設置の決定は防衛省本省の指示か、現地施設管理者の判断か。

3 看板に記載された事項に従わず公道から駐屯地内を撮影する者への対応として、例えば、撮影した写真を見せるよう隊員が撮影者に要求する、撮影者がこれに応じないとき又は隊員が写真を閲覧しこれが世間に拡散されると安全保障上支障があると判断したときは写真を削除するよう要求する、撮影者が写真の削除要求に応じないときはカメラを没収する、といった措置をとることができるのか。あるいは、看板の記載事項に強制力はないため、撮影を控える旨のお願いしかできないのか。撮影時の個別の事情とは関わりなく一般論としてとり得る措置の内容を答えられたい。

4 与那国駐屯地が開設された二〇一六年に撮影禁止の看板の設置を認めた最終決裁権者は誰か。また、誰の判断により、現在に至るまで看板の設置が継続されてきたのか。

5 駐屯地司令や業務隊長は、どのような権限に基づき、撮影禁止の行動制限措置をとっているのか。階級上そのような権能はあるのか、説明されたい。

回答(質問6 の1及び2について)

 防衛省本省では、各部隊等に対して、御指摘の「看板設置」の指示を行ったことはなく、例えば、外部から自衛隊施設を撮影しようとする者がいるといった現地の状況を踏まえ、駐屯地警備等の観点から、自衛隊施設の管理者である駐屯地司令の判断により、看板を設置しているものである。

回答(質問6 の3について)

 一般論としては、駐屯地警備等の観点から、自衛隊施設を撮影しようとする者にこれを控えていただくよう任意の協力を求めることができるにとどまると考えている。

回答(質問6 の4について)

 御指摘の「撮影禁止の看板の設置」については、当時の与那国駐屯地司令の判断によるものであり、その後も、歴代の同司令の判断により、現在まで継続しているものである。

回答(質問6 の5について)

 御指摘の「撮影禁止の行動制限措置」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛隊法施行令(昭和二十九年政令第百七十九号)及び駐屯地司令及び駐屯地業務隊等に関する訓令(昭和三十四年陸上自衛隊訓令第四十四号)により、御指摘の「駐屯地司令」は、駐屯地の警備、管理等の職務を行い、「業務隊長」は、駐屯地等の土地、建物及びこれに附帯する諸施設の維持等の職務を行う駐屯地業務隊の隊務を統括することとされている。

質問7

二〇二四年六月二日の琉球新報の報道によると、このような看板の設置について駐屯地側は、自衛隊の活動の特殊性を理由にしているとされるが、敷地外からの撮影まで禁止しなければならないような自衛隊の活動の特殊性とは何か。また、撮影禁止の看板を設置しなければ、自衛隊の活動にどのような支障があるのか、具体的に示されたい。

回答(質問7 について)

 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つこと等を任務としているという点において他の組織と異なる。

 また、自衛隊施設が撮影されることにより、駐屯地警備等に支障が生じ得ると考えている。

質問8

与那国駐屯地及び宮古島駐屯地の撮影禁止の看板について、それぞれ作成・設置に係る費用、当該費用の予算費目及び設置枚数、現在に至るまでの看板の維持管理費を明らかにされたい。

回答(質問8 について)

 お尋ねの「作成・設置に係る費用、当該費用の予算費目」については、記録が残っておらず、お答えすることは困難である。

 また、お尋ねの「設置枚数」については、与那国駐屯地は十六枚、宮古島駐屯地は六枚であり、その維持管理に特段の費用は要していない。

質問9

二〇二四年五月二十日の沖縄タイムスの報道によれば、与那国駐屯地は取材に対し、「文言など改善すべき点は検討する」と回答したとされるが、現時点において、看板に記載された表現は不適切であり、改善の必要があると認識しているか。

回答(質問9 について)

 お尋ねについては、今後、御指摘の「改善の必要がある」か否かも含めて検討してまいりたい。