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Jアラートの運用に関する質問主意書

会派 日本共産党
議案提出者 宮本徹
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

北朝鮮が、弾道ミサイル技術を利用した人工衛星の打ち上げや弾道ミサイル発射訓練を繰り返している。「弾道ミサイル」であれ「衛星」であれ、「弾道ミサイル技術を使った発射」は、累次の国際連合安全保障理事会決議で禁止されている。北朝鮮のこれらの行動は安保理決議に違反するものであり、断じて許されない。

政府は、こうした北朝鮮による弾道ミサイル等の発射に対し、Jアラート(全国瞬時警報システム)による避難呼びかけを行っている。この三年間では、二〇二二年に二回、二〇二三年に四回、二〇二四年はこれまで一回行われている。そのうち、二〇二三年五月三十一日以降の四回は、北朝鮮が人工衛星打ち上げと、事前に通告していたものである。

本年五月二十七日、北朝鮮が、二十二時四十三分頃に、北朝鮮トンチャリ地区から南方向に向けて人工衛星を打ち上げ、その数分後に空中爆発して失敗した。これに対して、Jアラートが二十二時四十六分に「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又は地下に避難して下さい」と発信された。Jアラートが解除されたのは空中爆発からかなり時間が経過した二十三時三分であった。

この経過を踏まえて、以下、質問する。

質問1

Jアラートが発出されると、テレビなどは一斉にJアラートの伝達に切り替わり、公共交通も一時ストップする。Jアラートの発出は、国民生活に大きな影響を与えているとの認識があるか。

回答(質問1 について)

 お尋ねについて、全国瞬時警報システム(以下「J−ALERT」という。)を使用した場合、鉄道等の公共交通機関において運転が停止されるなど、社会的に大きな影響があることは認識している。

質問2

仮に北朝鮮から弾道ミサイル技術を使用した何らかの発射があった場合、日米韓でリアルタイムの情報が共有されているとの理解で良いか。

本年五月二十七日の北朝鮮の人工衛星打ち上げについて、防衛省・内閣官房の発表では「発射から数分後に、黄海上空で消失」とある。報道では、「韓国軍によると、十時四十六分の日本の警報発出とほぼ同時に、北朝鮮側の海上で多数の破片が探知されていた。同じころ、ロケットとみられる物体が空中でオレンジ色の炎とともに爆発する映像を日本のテレビ局が流した」とある。Jアラート発出とほぼ同じ頃に、日本政府は、北朝鮮の人工衛星の打ち上げ失敗を把握していたのではないのか。

回答(質問2 について)

 前段のお尋ねについては、「日米韓でリアルタイムの情報が共有されている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、日米韓三か国は、令和五年十二月に「北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有メカニズム」の運用を開始し、常時継続的にミサイル警戒データを共有してきている。

 また、後段のお尋ねについては、我が国の情報収集能力等を明らかにするおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。

質問3

本年五月二十七日のJアラートについて、黄海上空で消失を確認しながら、十数分にわたり避難の呼びかけを続け、解除が二十三時三分にまで遅れたのはなぜか。国民生活に迷惑をかけたことへの反省はあるか。

回答(質問3 について)

 弾道ミサイルの可能性があるものが我が国に飛来する可能性がある場合、政府は、直ちにJ−ALERTを使用し、注意が必要な地域の国民に幅広く情報を伝達し、避難の呼び掛け等を行うこととしているところ、本年五月二十七日の事案については、弾道ミサイルの可能性があるものが我が国に飛来する可能性があったため、国民の安全の確保を最優先する観点から、J−ALERTを使用し、情報伝達を行ったものである。

 その後、弾道ミサイルの可能性があるものが我が国に飛来する可能性がないこと及び後続する他の弾道ミサイルの可能性があるものが飛来する可能性がないことを確認した後、同日二十三時三分に避難の呼び掛けを解除したものであり、国民の安全の確保というJ−ALERTの役割に鑑みれば、そのタイミングは適切であったと認識している。

質問4

人工衛星の打ち上げか、ミサイルかは、事前通告の有無や打ち上げる方角などで区別できるようになっていると指摘されている。なぜ、人工衛星の場合も、Jアラートの送信内容を「ミサイル発射」としているのか。

回答(質問4 について)

 J−ALERTは、弾道ミサイルの可能性があるものが我が国に飛来する可能性がある場合に、国民が避難するための時間を少しでも長く確保する観点から、注意が必要な地域の国民に対し、音声情報等により、迅速かつ簡潔に避難を呼び掛けるものである。

 また、人工衛星の打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射と弾道ミサイルの発射は、いずれも弾道ミサイル技術を使用している点に変わりはなく、発射後直ちに当該発射が両者のいずれであるかを評価することは困難である。

 こうした点を踏まえ、J−ALERTにおいては、発射されたものが弾道ミサイルであるか否かにかかわらず、端的に「ミサイル」と表現し情報伝達を行っている。

質問5

北朝鮮の人工衛星打ち上げについては、Jアラートを発出して避難を呼びかける一方で、韓国が同じ方角に人工衛星を打ち上げた時には、Jアラートを発出していない。韓国の衛星打ち上げには、避難が必要ないとする根拠は何か。北朝鮮の人工衛星の打ち上げと、韓国の人工衛星打ち上げは、日本国民にとってのリスクが異なると認識しているのか。異なると認識している場合は、どのように異なるか示されたい。リスクが異ならないと認識している場合は、Jアラートの発出について、北朝鮮と韓国の人工衛星の打ち上げで異なる対応をとる根拠を示されたい。

回答(質問5 について)

 御指摘の「日本国民にとってのリスク」の意味するところが必ずしも明らかではないが、北朝鮮による人工衛星の打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射は、北朝鮮による弾道ミサイル技術を使用したいかなる発射も禁止している、関連する国際連合安全保障理事会決議に違反するものである。また、北朝鮮による人工衛星の打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射は、その安全性の確認が困難であり、我が国の領土又は領海への落下等の不測の事態が発生する可能性が排除されないことを踏まえれば、J−ALERTにより対応する必要性については、こうした懸念が小さい御指摘の「韓国の人工衛星打ち上げ」とは異なると認識している。

質問6

北朝鮮が、時期、コース、落下域(日本から離れている)を事前に予告して行う人工衛星の打ち上げと、予告なしの弾道ミサイル発射は、日本国民にとってのリスクの大きさは同じと認識しているか。Jアラートの運用を根本的に見直すべきではないか。

回答(質問6 について)

 御指摘の「日本国民にとってのリスク」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「予告」の有無により、北朝鮮が発射する弾道ミサイルの可能性があるものによって国民の生命及び財産に被害が及ぶ蓋然性に大きな差が生じるものではないと考えている。いずれにせよ、政府としては、御指摘の「予告」の有無にかかわらず、引き続き国民に迅速かつ的確な情報伝達を行う必要があると考えており、御指摘のように「Jアラートの運用を根本的に見直す」ことは考えていない。

質問7

一般的に、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、日本に落下する可能性がある場合、自衛隊が弾道ミサイル防衛システムで迎撃するとされている。発射された弾道ミサイルは、自衛隊において、方角、角度、スピード等が把握される。弾道ミサイルを迎撃するか否かの自衛隊の判断と、弾道ミサイル情報の内閣官房への情報伝達は、どちらが早いか、それとも同時点か。弾道ミサイル情報の内閣官房への情報伝達の時点では、迎撃するか否かの判断がなされているという理解でよいか。

回答(質問7 について)

 お尋ねについては、北朝鮮による弾道ミサイルの可能性があるものの発射に係る事案における個別具体的な状況により異なることから、一概にお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、北朝鮮による弾道ミサイルの可能性があるものの発射に係る事案に際しては、防衛省から内閣官房に対し、所要の情報を入手次第、可能な限り速やかに伝達することとしている。

質問8

北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、Jアラートが発信されたケースにおいて、自衛隊は一度も迎撃していない。これを踏まえると、Jアラートが発信されたケースにおいて、日本政府は、Jアラートの発信の時点で、日本に落下する可能性がないことは当然に認識しているということか。

回答(質問8 について)

 お尋ねについては、我が国の情報収集能力等を明らかにするおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。なお、政府としては、弾道ミサイルの可能性があるものが我が国の領土又は領海に落下する可能性がある場合に加え、我が国の領土、領海等の上空を通過する可能性がある場合にも、当該弾道ミサイルの可能性があるものからの落下物による被害が生じる可能性が排除できないことから、J−ALERTを使用することとしている。

質問9

北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、太平洋に落下したケースにおいて、日本政府は「○○県上空を通過」という表現をとっている。「○○県上空」というが、大気圏外の宇宙空間ではないのか。また、大気圏外について「○○県上空」という表現そのものが、適切でないのではないか。

大気圏外の宇宙空間を飛行する弾道ミサイルが、仮に「○○県上空」を通過しているとして、「○○県」の住民には、どのようなリスクがあると考えているのか。

回答(質問9 について)

 お尋ねの「大気圏外の宇宙空間ではないのか」及び「リスク」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また、御指摘の「宇宙空間」の定義については、現行法令において規定されたものはないが、いずれにせよ、政府としては、弾道ミサイルの可能性があるものが我が国の領土、領海等の上空を通過する場合には、その軌道に大気圏外が含まれるか否かにかかわらず、当該軌道の直下及びその周辺の地域に落下物による被害が生じる可能性が排除できないことから、防衛省のホームページに掲載する「お知らせ」等において、国民への分かりやすい情報発信を図る観点から、御指摘の「○○県上空」等の表現を用いているものであり、こうした対応は適切であると考えている。

質問10

二〇二二年十月五日付の東京新聞TOKYO Webに、「八月に中国が台湾上空を通過する弾道ミサイルを発射した際、台湾国防部は主な飛行経路は大気圏外で地上の広い範囲に危険性はなかったなどとして警報を発令しなかった」との報道がある。記事中で識者は、「日本ではJアラートの対象地区が二転三転したりして不安を助長した。国は「ミサイルの最高高度は千キロに達し、大気圏外を通過。日本領土に危害を加える恐れはなく、ご安心ください」などと事実に基づく安心材料を国民に伝える努力をすることも必要ではないか。暴挙と言うことも重要だが、こういうときこそ冷静さを失ってはいけない」と指摘している。

報道にある台湾の例も参考にして、自衛隊が破壊措置をとらないと判断し、大気圏外を通過するものについて、Jアラートの運用を根本的に見直すべきではないか。

回答(質問10 について)

 弾道ミサイルの可能性があるものが我が国の領土、領海等の上空を通過する場合には、その軌道に大気圏外が含まれるか否かにかかわらず、当該軌道の直下及びその周辺の地域に落下物による被害が生じる可能性が排除できないことから、J−ALERTを使用する必要があり、その運用を見直すことは考えていない。