定額減税の支払明細書への記載事項にかかる罰則に関する質問主意書
二〇二四年六月から所得税および住民税の定額減税が執行される。定額減税の実務は源泉徴収事業者が負うことになるが、システム改修を含めて事務作業と費用の負担が大きくのしかかっている。一回限りの定額減税のためにどうしてこれほどまでに面倒な作業をやらねばならないのか、と源泉徴収事業者の給与担当部門のスタッフから怨嗟の声があがっている。
今般の定額減税について、所得税法第二百三十一条の規定によれば、源泉徴収額に加えて定額減税額を記載せねばならないこととなっており、同法第二百三十一条に違反した者は、同法第二百四十二条の規定により一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処することとなっている。一方で、二〇二四年五月二十八日の参議院財政金融委員会での小池晃委員の質問に対して、星屋和彦国税庁次長は「お尋ねの罰則の適用につきましては、個別具体的な判断になるものと考えてございますが、例えば、六月の給与明細書の交付時には対応が間に合わず定額減税額の記載がなされなかったような場合につきましては、基本的に罰則が適用されることはないと考えてございます」と答弁した。そこで、以下、質問する。
質問1
同法第二百三十一条違反による同法第二百四十二条の罰則適用の免除の例示として「六月の給与明細書の交付時には対応が間に合わず定額減税額の記載がなされなかったような場合」があげられているが、対応が間に合わなかったことの立証責任は源泉徴収事業者が負うのか、それとも所轄の税務署が負うのか。
回答(質問1 について)
御指摘の「罰則適用の免除」及び「対応が間に合わなかったことの立証責任」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「同法第二百三十一条違反による同法第二百四十二条の罰則」に係る事案を含め、刑事手続においては、有罪であることにつき合理的な疑いをいれない程度の立証をすることについて、検察官がその責任を負うものとされている。
質問2
同法第二百三十一条違反による同法第二百四十二条の罰則適用の免除について、どのような証拠を提示すれば、対応が間に合わなかったことを立証したことになるのか、罰則適用免除の要件を明示されたい。
回答(質問2 について)
お尋ねの「罰則適用の免除」、「どのような証拠を提示」及び「罰則適用免除の要件」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「同法第二百三十一条違反による同法第二百四十二条の罰則」に係る事案を含め、刑事手続における証拠価値は、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三百十八条の規定により証拠の証明力が裁判官の自由な判断に委ねられていることから、個々の事案において個別具体的に判断される事柄である。
質問3
同法第二百三十一条違反による同法第二百四十二条の罰則適用の免除の例示として「六月の給与明細書の交付時には対応が間に合わず定額減税額の記載がなされなかったような場合」があげられているが、これ以外に免除されるケースはあるのか。
回答(質問3 について)
御指摘の「罰則適用の免除」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「同法第二百三十一条違反による同法第二百四十二条の罰則」に係る犯罪に関して処罰がなされないと考えられる場合として、例えば、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百四十二条第七号の「偽りの記載」をしたとはいえない場合が考えられるが、いずれにせよ、同号の罰則に係る犯罪に関して処罰がなされるかどうかについては、個別具体的な事情により、個別の事案ごとに判断されるべき事柄である。