ライドシェアについての規制改革推進会議の議論に関する質問主意書
規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキング・グループ(以下「ワーキング・グループ」という。)におけるタクシー事業者以外の者が行うライドシェア事業に係る法制度に関する議論の行われ方については拙速であるとの指摘がある。
ワーキング・グループでは、令和五年十二月十二日「「移動難民」問題について」を公表し、ライドシェア業の定義の例を示し、令和六年五月十五日「ライドシェアの法律制度に係る論点についての意見」を公表している。
これらを踏まえ、以下質問する。
質問1
ワーキング・グループの構成員のうち、専門委員に関しては、規制改革推進会議令(平成二十八年政令第三百三号)第二条第二項において、「専門委員は、当該専門の事項に関し学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」こととされている。岸田内閣総理大臣は、ワーキング・グループの専門委員がライドシェアに関してどのような学識経験があるとして任命したのか。
回答(質問1 について)
規制改革推進会議の専門委員については、規制改革推進会議令(平成二十八年政令第三百三号)第二条第二項の規定に基づき、同会議において調査すべき専門の事項に関し学識経験を有する者から内閣総理大臣が任命しており、同会議の下に設置されたワーキング・グループに属すべき専門委員については、規制改革推進会議運営規則(平成二十八年九月十二日規制改革推進会議議長制定)第六条第二項の規定に基づき、同会議の議長が指名している。
その上で、個別の人事に関する検討の過程については、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
質問2
ワーキング・グループでは「全国各地域での移動の足不足を速やかに解消するため」にライドシェアに係る法制度に関する議論が行われている。しかし、移動の足不足の解消に向けては、ライドシェアの導入より前に、タクシーに関する規制緩和を行い、不足地域を解消すること、また、乗車率の向上等により、一人当たりの賃金を上昇させることが重要である。タクシー運転手の年間所得額は、全産業平均と比較して低い自動車運送事業の中でもとりわけ低迷しており、タクシー運転手の賃金水準の向上こそ喫緊の課題ではないかと考える。
加えて、移動の足不足の解消については、公共交通全体の見直しによって実現されるべきであり、現に、世界全体、とりわけ欧州では、脱炭素の切り札として公共交通が見直されている。ワーキング・グループでは、これらの点を踏まえた議論はなされているのか。
回答(質問2 について)
お尋ねの「これらの点を踏まえた議論」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
質問3
ライドシェアを導入している諸外国では、地方の農村部におけるライドシェアの普及に課題があるとの報道もなされている。旅客需要が低い地域では、ガソリン代や車両維持費を賄えないほどの僅かな収入しか得られない。ワーキング・グループでは「全国各地域での移動の足不足を速やかに解消するため」にライドシェアに係る法制度に関する議論をしており、全国各地域には、過疎地域も含まれると解される。諸外国の事例を踏まえ、過疎地域においても移動の足不足が解消されるようにするために、ワーキング・グループでは、どのような議論がなされているのか。
回答(質問3 について)
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、「規制改革推進に関する中間答申」(令和五年十二月二十六日規制改革推進会議決定。以下「中間答申」という。)において、「道路運送法第七十八条第二号による自家用有償旅客運送」について、例えば、「地域公共交通会議における協議を迅速化及び円滑化するため、地域の移動ニーズに対応した交通サービスに関する議論を始めてから、相当の期間を要してもなお結論への道筋に至らない場合には、首長の責任により判断できるようにすることで、道路運送法第七十九条の四第五号にいう「協議が調つ」たものと取り扱い得る旨を、「地域公共交通会議に関する国土交通省としての考え方について」(平成十八年九月十五日国自旅第百六十一号。以下「地域公共交通会議に係る通知」という。)に追記、及び、これらを標準とする地域公共交通会議に係る通知におけるモデル要綱を見直すなど、所要の措置を講ずる。「相当の期間」については、二か月程度を念頭に、年度内に地域公共交通会議に関する実態調査を行い、具体的な期間を決定する」とされており、これを踏まえ、地域産業活性化ワーキング・グループ(以下「ワーキング・グループ」という。)において、更なる詳細について、議論が行われている。
質問4
ライドシェアを導入している諸外国には、ライドシェアについて経費を差し引くと、最低賃金に達しない国もあり、低賃金を理由に自殺したドライバーも多いとの報道もなされている。我が国においては、自由に働きたいという考えを利用して非正規雇用を増やした結果、ワーキングプアを増やすことに繋がってしまったと考える。ライドシェアの導入によって、安く人を働かせる政策は進めるべきではないと考えるが、ワーキング・グループでは、ライドシェアドライバーの適正な処遇の確保について、どのような認識の下、どのような議論がなされているのか。
回答(質問4 及び質問8 について)
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、中間答申において、例えば、「ドライバーとライドシェア事業者との契約関係について、ドライバーの相当数は諸外国と同様に、副業・兼業としての就労が予想され、また、そうしなければ、必要なドライバー数を確保できない可能性が高いことを踏まえ、雇用に限らず、業務委託を含め、個人が「好きな時に好きなだけ」働ける制度設計とすること。また、その際、いわゆる「ワーキングプア」を生むのではないかとの懸念に十分に配慮すること」とされており、これを踏まえ、ワーキング・グループにおいて議論が行われている。
質問5
諸外国のようなライドシェアを我が国で導入した場合、ライドシェアドライバーの時給及び年間所得額はどの程度であると見込んでいるのか。
回答(質問5 について)
お尋ねは、仮定の質問であり、また、各国の状況は様々であることから、一概にお答えすることは困難である。
質問6
令和八年にも実装が見込まれる自動運転タクシーによって、タクシー業は労働集約型産業から資本集約型産業に転換するとの指摘がなされている。そのような中で、ライドシェアを導入したとしても、近い将来、供給過多に陥り、ライドシェアドライバーが仕事を失うことになるのではないか。ワーキング・グループでは、自動運転タクシーの実装を含む旅客輸送の長期的な展望を踏まえ、どのような議論がなされているのか。
回答(質問6 について)
御指摘の「自動運転タクシーの実装を含む旅客輸送の長期的な展望」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。
質問7
プラットフォーム事業者においては、手数料を自由に設定できる。諸外国では、ダイナミックプライシングを導入しているが、アルゴリズムを公表せずに自由に運賃を変動させている。ニューヨークでは、集中豪雨で地下鉄が運休する中、運賃が普段の十倍に設定されたとの報道もある。降雨時など、需要が高い時には、富裕層しか利用できないような制度は導入すべきでないと考える。運賃設定に関する諸外国の事例を踏まえ、ワーキング・グループでは、どのような議論がなされているのか。
回答(質問7 について)
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、中間答申において、「自由度の高い料金規制」に関し、「必要に応じて現行ハイヤーに対する料金規制の緩和を行い、ライドシェアとハイヤーとのイコールフッティングを確保すること」とされており、これを踏まえ、ワーキング・グループにおいて議論が行われている。
質問8
プラットフォーム事業者による手数料の一方的な引上げによって、安定した収入が確保できず、諸外国では抗議ストライキも起きている。欧州においては、ライドシェアドライバーに労働者性があると認識され、業務委託契約ではなく、雇用契約を結ぶことを法定化しているとされる。令和六年五月十五日「ライドシェアの法律制度に係る論点についての意見」では、「雇用契約のみならず業務委託契約による就労形態も認める」とされているが、諸外国の動向を踏まえ、ワーキング・グループでは、ライドシェアドライバーの働き方について、どのように考えているのか。
回答(質問4 及び質問8 について)
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、中間答申において、例えば、「ドライバーとライドシェア事業者との契約関係について、ドライバーの相当数は諸外国と同様に、副業・兼業としての就労が予想され、また、そうしなければ、必要なドライバー数を確保できない可能性が高いことを踏まえ、雇用に限らず、業務委託を含め、個人が「好きな時に好きなだけ」働ける制度設計とすること。また、その際、いわゆる「ワーキングプア」を生むのではないかとの懸念に十分に配慮すること」とされており、これを踏まえ、ワーキング・グループにおいて議論が行われている。