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高等教育の無償化に関する質問主意書

会派 日本共産党
議案提出者 宮本徹
公式リンク 第213回国会 / 質問 答弁

東京大学が授業料の値上げを検討していると報道されている。また、物価・賃金の上昇の中、私立大学でも授業料値上げが相次いでいる。これらを踏まえ、以下、質問する。

質問1

大学の授業料値上げが相次いでいる要因について、政府の分析を示されたい。

回答(質問1 について)

 大学における授業料の額の設定については、各大学の設置者において、様々な事情を考慮して判断されるものであることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、御指摘の「大学の授業料値上げ」の背景には、例えば、教育研究環境の充実のための人件費や設備整備に係る費用等の増加や、物価の高騰等があるものと考えられる。

質問2

国立大学が国民の学習権の保障と、教育の機会均等において果たしている役割について、政府の認識を示されたい。

回答(質問2 について)

 御指摘の「国民の学習権の保障」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国立大学については、全国的な高等教育の機会均等の確保について重要な役割を担っているものと認識している。

質問3

東京大学が授業料値上げに踏み切った場合の全国の国立大学に与える影響について、政府はどう考えるか。

回答(質問3 について)

 お尋ねについては、仮定の質問であり、また、各国立大学における授業料の額の設定については、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(平成十六年文部科学省令第十六号)の規定に基づき、設置者である各国立大学法人において様々な事情を考慮して判断されるものであることから、一概にお答えすることは困難である。

質問4

高等教育の修学支援新制度は若干の拡充が図られているが、制度を利用する者にとっても、制度が利用できない者にとっても、授業料値上げは新たに負担をもたらすものである。大学の授業料値上げが相次いでいる現状は、わが国が批准している国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」に背く状況ではないか。

回答(質問4 について)

 高等教育における、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第六号)第十三条2(C)に規定する無償教育の漸進的な導入(以下「漸進的無償化」という。)の具体的な方法については、加盟国がそれぞれ判断するものと認識しているところ、例えば、大学等における修学の支援に関する法律(令和元年法律第八号)に基づき、令和二年四月一日から、低所得者世帯の者に対し、大学等における授業料等減免を制度化するとともに、独立行政法人日本学生支援機構における給付型奨学金を大幅に拡充する措置を講ずる等、真に支援が必要な低所得者世帯の者に支援が行き渡るよう制度を整備したほか、「こども未来戦略」(令和五年十二月二十二日閣議決定)において、「授業料等減免及び給付型奨学金について、低所得世帯の高校生の大学進学率の向上を図るとともに、二千二十四年度から多子世帯や理工農系の学生等の中間層(世帯年収約六百万円)に拡大する。さらに、高等教育費により理想のこども数を持てない状況を払拭するため、二千二十五年度から、多子世帯の学生等については授業料等を無償とする措置等を講ずることとし、対象学生に係る学業の要件について必要な見直しを図ることを含め、早急に具体化する」とするなど、中長期的には、高等教育の漸進的無償化の趣旨に沿った取組が進んでいるものと認識しているところであり、引き続き、高等教育段階における教育費の負担軽減に取り組んでまいりたい。

質問5

授業料値上げの状況を踏まえ、政府は、高等教育の修学支援新制度の授業料等減免の上限額を引き上げる検討を早急にすべきではないか。

回答(質問5 について)

 「こども未来戦略」において、「奨学金制度の更なる充実や授業料負担の軽減など、高等教育費の負担軽減を中心に、ライフステージを通じた経済的支援の更なる強化や若い世代の所得向上に向けた取組について、適切な見直しを行う」としており、御指摘の「高等教育の修学支援新制度の授業料等減免の上限額を引き上げる」ことについては、この「見直し」の中で、その必要性を含めて検討してまいりたい。

質問6

名目賃金は上昇しているが、実質賃金は低下している現状を踏まえて、政府は修学支援新制度の対象となる所得基準を引き上げるべきではないか。また、全学生の無償化に向け、授業料等減免の対象を拡大すべきではないか。

回答(質問6 について)

 お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、政府としては「こども未来戦略」において、「授業料等減免及び給付型奨学金について、低所得世帯の高校生の大学進学率の向上を図るとともに、二千二十四年度から多子世帯や理工農系の学生等の中間層(世帯年収約六百万円)に拡大する。さらに、高等教育費により理想のこども数を持てない状況を払拭するため、二千二十五年度から、多子世帯の学生等については授業料等を無償とする措置等を講ずることとし、対象学生に係る学業の要件について必要な見直しを図ることを含め、早急に具体化する」及び「奨学金制度の更なる充実や授業料負担の軽減など、高等教育費の負担軽減を中心に、ライフステージを通じた経済的支援の更なる強化や若い世代の所得向上に向けた取組について、適切な見直しを行う」としており、引き続き、高等教育段階における教育費の負担軽減に取り組んでまいりたい。

質問7

授業料値上げそのものを抑制するためにも、物価・賃金の上昇を踏まえ、政府は国立大学、私立大学の助成のあり方について抜本的に拡充するべきではないか。

回答(質問7 について)

 御指摘の「助成のあり方について抜本的に拡充する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和六年度予算においては、国立大学法人運営費交付金として前年度と同額程度となる約一兆七百八十四億円を、私立大学等経常費補助金として前年度から約二億円の増となる約二千九百七十八億円を、それぞれ計上し、これらの確保に取り組んでいるところである。